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新築購入も「乾かないし、家が雑巾臭い…」冬場に30代主婦を襲った大誤算【一級建築士は見た】

  • 2025.12.20
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出典元:photoAC(画像はイメージです)

「『リビングで洗濯物を干せば加湿器代わりになりますよ』。その言葉を信じて、部屋干し専用スペースを作らなかったんです。でも、冬の洗濯物が、あんなに乾かないなんて……」

そう嘆くのは、3歳と1歳の子どもを育てるMさん(30代主婦)。

Mさんの家は、最新の「高気密・高断熱住宅」です。 熱を逃がさない「魔法瓶」のような構造は、冬でも暖かく快適ですが、それは逆に言えば、湿気も「ジップロック」のように完全に閉じ込めてしまうということ。

自然に空気が入れ替わる従来の家とは違い、水分の逃げ場が全くないこの家で、Mさんは家事動線を優先して「リビング干し」を選択しました。

夏場はすぐに乾いて快適でしたが、窓を閉め切る冬になり、厚手のパーカーやジーンズが増えると、その「密閉された空間」で状況は一変します。

乾かない洗濯物、漂う“生活臭”

「朝干しても、夜になっても乾いていないんです。特にフードの部分とか、脇の下とか。そうこうしているうちに、次の日の洗濯物が出てきて……」

いつしかリビングの窓際は、常に湿った洗濯物がぶら下がっている状態になりました。

そして、恐れていた「ニオイ」が発生します。

暖房の効いた暖かい部屋で、長時間濡れたままの衣類。それは雑菌にとって最高の繁殖環境です。

「友人が遊びに来たとき、玄関を開けた瞬間に『あ、なんか懐かしい匂い(生乾き臭)』って言われて。新築の木の香りなんて消え失せて、家全体が湿った雑巾みたいな臭いになっていたんです」

加湿のつもりが“結露の元”に

さらにMさんを苦しめたのが、過剰な湿気です。

「加湿になる」というメリットは、度が過ぎれば害になります。

大量の洗濯物から出た数リットル分の水分は、冷たい窓ガラスに吸い寄せられ、滝のような結露を引き起こしました。

「カーテンの下の方がカビて黒ずんでしまって。新築半年でカーテンを買い換える羽目になりました」

一級建築士が見る“現代の洗濯事情”

Mさんの失敗は、高気密住宅における「水分の逃げ場」を計算していなかったことです。昔の隙間だらけの家とは違い、今の家は湿気がこもります。

冬場に室内干しをするなら、以下のいずれかが必須でした。

1、独立したランドリールーム
リビングとは扉で仕切り、除湿機やサーキュレーターを稼働させる専用の部屋。

2、ガス衣類乾燥機(乾太くん)
「干す」という行為自体をなくす最強の時短家電。

3、浴室乾燥機の活用
電気代はかかりますが、換気扇のある密閉空間で乾かす。

リビングは“くつろぐ場所”である

「ケチらずに乾燥機を買えばよかったです。リビングは家族がくつろぐ場所であって、洗濯物を展示する場所じゃなかった」

Mさんは現在、高額な除湿機をリビングに置いてフル稼働させていますが、その音と風が気になり、くつろぎ度は半減しています。

これから間取りを考える方は、「真冬の分厚い洗濯物を、どこで、何時間で乾かすか?」を具体的にイメージしてください。「リビング干しでなんとかなる」という甘い考えは、家の空気と美観を損なう大誤算となりかねないでしょう。


ライター:yukiasobi(一級建築士・建築基準適合判定資格者)
地方自治体で住宅政策・都市計画・建築確認審査など10年以上の実務経験を持つ。現在は住宅・不動産分野に特化したライターとして活動し、空間設計や住宅性能、都市開発に関する知見をもとに、高い専門性と信頼性を兼ね備えた記事を多数執筆している。


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