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「シンデレラがやりたい」子どもの字で届いた手紙に“違和感”…保育士が見抜いた、“思わぬ真相”

  • 2025.12.20
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出典元:photoAC(画像はイメージです)

こんにちは、保育士歴13年のめじです。

発表会や運動会などの行事になると、子ども以上に保護者がワクワクする場面があります。

しかし、その思いが強すぎて、子どもの気持ちより“親の理想”が前に出てしまう瞬間に出会うこともあります。

今日は、4歳児クラスを担任していたときに実際にあった、子どもの意思と保護者の思いがすれ違いかけた出来事を紹介します。

子どもたちが自分で選んだ「シンデレラ」の配役

当時勤務していた園では、年中組は劇をするのが恒例になっていました。

その年の発表会は「シンデレラ」。

保育者が役のイメージを見せ、子どもたち自身に「やりたい役」を選んでもらう形をとりました。

「王子やりたい!」「ぼくねずみ!」「ガラスの靴渡す人がいい!」

個別で話を聞き、子どもたちが自分の意思で選んでいく中、ある女の子が嬉しそうに言いました。

「わたし、継母がやりたい!」

その意外な選択に驚きましたが、本人はとても得意げ。

「フン!てするとこやりたいの!」と目を輝かせて話してくれ、役が決まると友だちにも嬉しそうに報告していました。

翌日届いたのは、子どもの字で書かれた手紙

次の日、連絡帳に小さな手紙が挟まれていました。

開くと、子どもの字でこう書かれていたのです。

「シンデレラがしたいです」

あれほど継母に意欲を見せていた彼女とは正反対の内容に、胸に小さな違和感が走りました。

本人に聞いても言葉を濁すため、夕方に保護者へ連絡すると、

「本当は言えなかっただけで、シンデレラをやりたいみたいです」

との返答。しかし話していてもどこか違和感が残り、子どもの様子や何となく元気のない手紙の文字からも、子ども自身の言葉ではないように感じました。

本当の気持ちを聞くと出てきたのは…

次の日、活動の合間にゆっくり話す時間をとりました。

「継母とシンデレラ、どっちが本当にやりたいと思ってる?」

彼女は少し考え、そして小さな声でこう言いました。

「ほんとは…継母がやりたい」

その瞬間、胸がふっと軽くなりました。

おそらく家で「シンデレラのほうがいいよ」などと言われ、心が揺れてしまったのでしょう。

子どもは保護者の思いを敏感に感じ取るものです。

私はその気持ちをそのまま丁寧に保護者へお伝えしました。「シンデレラになってほしかった」というお気持ちも受け止めつつ、本人の「継母をやりたい」という強い意欲をお話ししました。

すぐにご納得いただくのは難しいご様子でしたが、その後も練習中の活き活きとした様子をこまめに共有し、見守っていただくことになりました。

本番で輝いた“継母”の姿に、保護者の表情が変わった

迎えた発表会本番。

大きな声でセリフを言ったり、念願の意地悪な表現も活き活きと演じ、彼女は堂々と継母をやりきりました。

終わった後の満面の笑みに、

「役を変えずに本当に良かった」と心から思いました。

発表会後、保護者の方からも

「堂々と演じていてとても面白かったです!ありがとうございました」と声をかけていただき、その表情はとても柔らかく満足そうなものでした。

子どもの気持ちを守るのが、保育者の大切な役割

保育をしていく中で、保護者の思いに寄り添うことは大切です。

しかし、保育の中心は子どもたち。

子どもの意思を丁寧にすくい上げることは、保育者の大切な使命だと改めて実感しました。

子どもは、まだ自分の気持ちをうまく言語化できず、時に大人に合わせたり流されたりしてしまいます。

だからこそ、私たちがそっと代弁し、守ってあげる必要があります。

あの時、彼女が自分で選んだ役を堂々と演じきった姿は、今でも忘れられません。

子どもが自分で決めたことを応援できる大人でありたい──そう強く思った出来事でした。

そして同時に、「子どもの気持ちを尊重する姿勢が、成長の大きな力になる」ということも改めて教えてもらった気がします。



ライター:めじ

幼稚園、保育園と保育経験を重ね、今年で13年目に突入しました。保育の仕事の中で感じた思いや子どもたちとのやりとり、育児と仕事の両立の事など経験をもとに言葉にしています。


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