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「10年前は“当たり前”」だったのに…。元教師が小学校で「名称は避けるように」と言われた、『クリスマス会』の今

  • 2025.12.23
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

こんにちは。元小学校教員ライターの、みずいろ文具です。
2学期の終わりが近づくと、教室にはどこかそわそわした空気が流れます。

冬休みを前に、子どもたちは浮き足立ち、大人はというと…やることが山ほど。

そんな中で毎年悩ましいのが、いわゆる「クリスマス会」の扱いです。

10年前は“当たり前”だった「クリスマス会」

少し前までは、12月に「クリスマス会」を開くクラスは珍しくありませんでした。
ツリーを描いた飾り、サンタの工作、レクに歌やダンス。

子どもたちは大喜びで、「先生、サンタ来る?」なんて無邪気に聞いてくる。

どの学級でも、“学期末のお楽しみ”として、かなり定番でした。

「クリスマス会」という名前を避けるようになった理由

ところが、学級に外国籍の児童がいることが当たり前になり、また宗教や家庭の方針が多様になった今、教育現場では「クリスマス会」という名称が以前ほど気軽に使えなくなってきているようです。

「クリスマス」という言葉そのものに抵抗を感じるご家庭もありますし、保護者の方から事前に相談が入るケースもあります。

私が2年前まで勤務していた学校では、近年の多様性への配慮から「クリスマス会」の名称は避けるようにという方針が取られることになりました。他の学校でも同様の動きがあるようですが、私の周りでは、こんな名前で会を開くケースが増えていました。

そのため最近は、こんな名前で会を開いています。

  • 「2学期おつかれさま会」
  • 「2学期がんばったね会」
  • 「冬のお楽しみ会」

    などです。

飾りは“クリスマスっぽい”が残ることも

ただ、名前を変えたからといって、教室の雰囲気が一気に無機質になるわけではありません。

雪だるま、星、ツリーやサンタの飾り…

子どもたちも悪気があるわけではないので、さすがにこのあたりは目をつぶるようにしています。


「クリスマス要素を完全にゼロにする」よりも、“行事の趣旨を『学期のねぎらい』に置きつつ、できる範囲で配慮する”

現場はその落としどころを探している感覚です。

子どもたちにとっては「みんなで楽しむ日」で、そこに特別な意味づけをしていないことも多いです。

だからこそ大人側が少し整えて、どの子も安心して参加できる形にしていくのが大切だと感じていました。

地味に大変なのは、冬休み直前の準備

この会の大変さは、なんといっても12月に行われる点です。

冬休み直前は、

  • 成績処理
  • 参観懇談
  • 体調不良の欠席対応
  • 学級通信や配付物、テスト返却
  • 大掃除

これらがすべて降りかかってきます。
「師走」というその名の通り、担任は大忙しです。

そこに「お楽しみ会の準備」が入ってくる。
レクの内容を考えて、必要物品をそろえて、当日の流れを作って、司会や役割も決めて。

もちろん子どもたち主体で進めますが、そのための時間を確保したり、内容に目を通してサポートしたりするのは担任の役目。

子どもたちが盛り上がるほど、先生の裏方仕事は増えていきます。

正直、「もう今年は忙しいしやらなくてもいいんじゃ……」と頭をよぎる年もありました。

それでも、やってよかったと思う瞬間

でも、いざ当日。

ふと見ると、普段は表情が固い子も大笑いしている。
友達関係が難しかった子が、同じ班で協力している。

教室にあふれる心から楽しそうな子どもたちの笑顔や、「最高だった!」と口々に話す子どもたち。

それを見て、思うんです。
(忙しい中でも、やってよかったな)って。


忙しい中、完ぺきではなくても、「このクラスで2学期を走り切ったね」と、みんなで区切りをつけられる時間があるだけで、子どもたちの心はふっと軽くなる気がします。

令和の“クリスマス会”は、名前より「安心して笑えること」

名称を変えるのは、時代の変化というより、教室が“いろいろな子の居場所”になってきた証拠なのかもしれません。

大人が少しだけ想像力を働かせることで、参加しづらい子を減らせる。

誰かの「楽しい」が、誰かの「しんどい」にならないようにできる。

そんな配慮を重ねながら、それでも最後は、子どもたちの笑顔に救われる。

それが、令和の学期末イベントのリアルだなあと、今でも思い出します。



ライター:みずいろ文具

関東の公立小学校で15年間、子どもたちと向き合ってきました。教室での日々を通して感じた喜びや戸惑い、子どもたちから教わったことを、今は言葉にしています。教育現場のリアルや、子どもたちの小さな成長の瞬間を、やさしい視点でお届けします。


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