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「新築なのに、家の中で雨が降ってきた」天窓を設置した30代女性の“大誤算”【一級建築士は見た】

  • 2025.12.23
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出典:PhotoAC ※画像はイメージです

「『北側の部屋でも、天窓があれば明るいですよ』。その提案は魅力的でした。でも、まさか冬の朝、家の中で傘が必要になるとは……」

そう語るのは、都内の住宅密集地に家を建てたKさん(30代男性)。

Kさんの家の北側の子ども部屋は、隣家が近接しており日当たりが悪いため、屋根に「天窓(トップライト)」を設置しました。

入居当初は、空が見える開放感と、降り注ぐ自然光に大満足していました。しかし、初めての冬を迎えたある朝、Kさんの妻の悲鳴が家中に響き渡りました。

天井から降り注ぐ“ポタポタ”の正体

「急いで子ども部屋に行くと、床がビショビショだったんです。雨漏りか!? と思って上を見上げると、ガラスにびっしりとついた水滴が、まるで雨のようにポタポタと落ちてきていました」

原因は、雨漏りではなく「激しい結露」でした。

あたためられた空気は上昇する性質があります。暖房の効いた部屋の湿った空気が、一番高い場所にある天窓に向かって昇っていきます。

しかし、屋根にある天窓のガラスは、外気でキンキンに冷やされています。そこに暖かい空気が触れた瞬間、大量の結露が発生し、重力に従って室内へ降り注いだのです。

「床には水たまり。その日から、天窓の下にバケツを置くのが冬の日課になりました」

一級建築士が見る“天窓のリスク”

天窓は、壁の窓に比べて3倍の採光効果があると言われます。しかし、同時に「熱の出入り」も最大級で、これが弱点となります。

Kさんの失敗は、天窓の「断熱性能」を軽視した点にありました。

1、ガラスの性能不足
通常の一枚ガラス程度では、冬の屋根の寒さには勝てません。トリプルガラスや、樹脂サッシなどのハイスペックな天窓を選ぶべきでした。

2、空気の滞留
天窓部分はどうしても空気が淀みやすくなります。シーリングファンなどで常に風を当てて空気を循環させないと、湿気が溜まって結露のリスクが高まります。

明るさと引き換えにする覚悟

Kさんは現在、長い棒を使って毎日結露を拭き取っていますが、高所作業のため危険も伴います。

「明るさは手に入りましたが、毎朝の『雨』との戦いは想定外でした。正直、普通の窓で我慢すればよかったと後悔しています」

天窓は魅力的な設備ですが、メンテナンスと温熱環境においては「家の弱点」になり得る諸刃の剣です。

採用を検討している方は、「真冬の結露対策はどうなっていますか?」とメーカーや工務店に確認し、万全の対策を講じること。それが、家の中での“雨”を防ぐための鉄則なのです。


ライター:yukiasobi(一級建築士・建築基準適合判定資格者)
地方自治体で住宅政策・都市計画・建築確認審査など10年以上の実務経験を持つ。現在は住宅・不動産分野に特化したライターとして活動し、空間設計や住宅性能、都市開発に関する知見をもとに、高い専門性と信頼性を兼ね備えた記事を多数執筆している。


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