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新築を建てるも「外から中が丸見え…」工事予算をお大幅にケチった30代女性の末路【一級建築士は見た】

  • 2025.12.15
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出典元:photoAC(画像はイメージです)

「昼間は最高なんです。庭と繋がるような開放感があって。でも、日が落ちるのが早い冬になると、この大きな窓が『恐怖のスクリーン』に変わるなんて…」

そう語るのは、郊外に平屋を建てたKさん(30代女性)。

Kさんの自慢は、LDKの壁一面に設けた幅5メートルの「大開口の窓」。

モデルハウスで見た、外と中が一体化するデザインに憧れて採用しました。

しかし、建築費が膨らんだため、最後の最後で「カーテン工事」の予算を大幅にカット。「とりあえず外から見えなければいいや」と、薄手のカーテンを吊るして入居しました。

それが、冬の夜に「落とし穴」となりました。

17時、家の中が“ステージ”になる

冬至が近い12月、17時には外は真っ暗になります。

Kさんがリビングの照明をつけると、物理法則により「中からは外が見えず、外からは中が丸見え」の状態になります。

「ある夜、庭でガサッと音がして。怖くて窓を見ても、自分の姿がガラスに映るだけで外が見えないんです。逆に外からは、私たちがご飯を食べている様子が、ライトアップされたステージみたいにくっきり見える。薄手のカーテンだと、シルエットどころか服の色まで透けていて……」

プライバシーの不安に加え、薄いカーテンは「寒さ」も防げませんでした。

巨大なガラス面から伝わる冷気が、カーテンの裾から部屋中に広がり、暖房をつけても足元が冷え切ってしまうのです。

一級建築士が教える“窓のコスト”の正体

Kさんの失敗は、「窓を大きくすること」にはお金をかけましたが、「窓を覆うもの」にお金をかけなかった点にあります。

建築士の視点では、大開口窓を採用する場合、以下のセット予算が必須です。

1、電動シャッター
夜間のプライバシー確保と、防犯、そして断熱性の向上のために、シャッターは必須です。手動だと冬の寒い夜に窓を開けて閉めるのが苦痛になり、使わなくなります。

2、断熱カーテン・ハニカムシェード
窓は壁に穴が開いているのと同じです。空気の層を作る厚手のドレープカーテンや、断熱性の高いスクリーンがないと、熱の流出は防げません。

「開ける」ことより「閉じる」こと

Kさんは結局、電動スクリーンを後付け工事することになりましたが、配線等が必要なため新築時に設置するより割高になってしまいました。

「大きな窓は、夜になればただの『黒い壁』か『覗き穴』にしかなりません。昼間の明るさだけでなく、夜の暗さと寒さをどう凌ぐかまで考えるべきでした」

大開口の窓は魅力的ですが、それは「高性能なカバー(雨戸やカーテン)」があって初めて成立する贅沢です。

窓の値段を見るときは、必ず「カーテン代」もセットで計算する。それを怠ると、寒さと視線に震える冬を過ごすことになりかねません。


ライター:yukiasobi(一級建築士・建築基準適合判定資格者)
地方自治体で住宅政策・都市計画・建築確認審査など10年以上の実務経験を持つ。現在は住宅・不動産分野に特化したライターとして活動し、空間設計や住宅性能、都市開発に関する知見をもとに、高い専門性と信頼性を兼ね備えた記事を多数執筆している。