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「屋上でBBQ」夢見て建てたのに…。冬の“放置”が招いた「天井から茶色い水」の悲劇。

  • 2025.12.8
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出典元:photoAC(画像はイメージです)

「『週末は屋上でビールを片手にBBQ』。そんな優雅な生活を夢見ていました。でも、実際に住んでみると、冬の屋上なんて寒すぎて誰も上がりません。まさかその“放置”が、あんな大惨事を招くなんて……」

そう語るのは、都内近郊の3階建て狭小住宅に住むJさん(30代男性・夫婦+子供1人)。

Jさんは、庭が取れない代わりに、屋上全体を「テラス」にした家を建てました。

夏場は子供用プールを出したり、友人を呼んだりと大活躍でしたが、季節が巡り冬になると、屋上への足はパタリと止まりました。

吹きさらしの屋上は、洗濯物を干すのも辛いほどの極寒。

Jさんは「春になるまで使わないし、放っておけばいいか」と、屋上の存在を記憶から消去していました。

しかし、ある雪の日。その油断が、家の寿命を縮める「大誤算」を引き起こします。

寝室の天井から“茶色い水”が…

珍しく10cmほど積雪があった翌週のことでした。

3階の寝室で寝ていたJさんは、顔に冷たい雫が落ちてきて目を覚ましました。

「雨漏りか?」と天井を見上げると、クロスに大きな茶色いシミが広がり、ポタポタと水が垂れてきていたのです。

慌てて屋上へ駆け上がったJさんは、そこで信じられない光景を目にします。

「屋上が、巨大なプールになっていたんです。雪解け水が足首の深さまで溜まっていて、排水口が見当たらない。水は濁って汚いし、どうしていいか分かりませんでした」

原因は、秋の間に溜まった「落ち葉」と、今回の「雪」でした。

掃除をサボっていたため、排水溝(ドレン)が枯れ葉で詰まりかけていたところに、雪が降り積もりました。その後、日中の日差しで溶けた雪が、夜間の冷え込みで排水口付近で凍結。

完全に出口を失った雪解け水が、防水層の許容範囲を超えて溜まり続け、ついに室内に溢れ出したのです。

一級建築士が指摘する“屋上の脆弱性”

Jさんのような「屋上テラスからの雨漏り」は、実は木造住宅の雨漏り原因の上位を占めます。

建築士の視点で見ると、屋上には致命的な弱点があります。

それは、「屋根がない」ということです。

当たり前のことですが、通常の三角屋根なら、雪や雨は自然に流れ落ちていきます。しかし、フラットなテラスは、排水溝が詰まった瞬間、そこが「ダム」に変わります。

特にJさんのようなケースでは、以下の2点が命取りとなりました。

  1. 防水層は「水槽」ではない
    住宅のバルコニー防水は、水が流れることを前提に作られています。プールのように長時間水を溜め続けると、微細なひび割れや、壁との継ぎ目から水が浸入するリスクが格段に上がります。
  2. 冬のメンテナンス不足
    「寒いから」と屋上に上がらなくなる冬こそ、落ち葉詰まりや凍結のリスクが高まる時期です。この時期の放置は自殺行為です。

高い授業料を払うはめに…

Jさんはその後、数十万円をかけて防水工事と天井の張り替えを行いました。

「高い授業料でした。今は、雪が降るたびに、凍える手でスコップを持って屋上の雪かきをしています。優雅なBBQどころか、ただの雪かき場です」

屋上テラスは、「もう一つのリビング」であると同時に、「最も手のかかる巨大な雨受け」でもあります。

これから屋上のある家を検討している方は、自問自答してください。

「真冬の雪の日でも、外に出て排水溝の掃除ができますか?」

もし答えがNOなら、屋上はやめて普通の屋根にするべきです。

その判断が、家の寿命とあなたの資産を守る末路を分けるのです。


ライター:yukiasobi(一級建築士・建築基準適合判定資格者) 地方自治体で住宅政策・都市計画・建築確認審査など10年以上の実務経験を持つ。現在は住宅・不動産分野に特化したライターとして活動し、空間設計や住宅性能、都市開発に関する知見をもとに、高い専門性と信頼性を兼ね備えた記事を多数執筆している。