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11/21公開「果てしなきスカーレット」細田守監督にインタビュー

  • 2025.11.28

ハムレットに着想を得たストーリー。「どう生きるべきかを、ともに考えたい」

「サマーウォーズ」「おおかみこどもの雨と雪」「バケモノの子」「竜とそばかすの姫」などの数々の大ヒットアニメーション映画を手がけている細田守監督。最新作「果てしなきスカーレット」は、国王の父を殺された王女・スカーレットが、「死者の国」で目覚め、復讐の旅の途中で現代から迷い込んだ青年・聖と出会い、変化していく―“生きるとは何か”を問いかける物語です。「竜とそばかすの姫」から4年、待望の新作を公開する細田守監督に、作品に込めた思いをうかがいました。

出典:シティリビングWeb

「竜とそばかすの姫」(2021年)公開時のキャンペーンから4年ぶりの来阪となった細田監督

復讐を描こうと思ったきっかけは?

きっかけは4年半ほど前にさかのぼります。コロナが落ち着いたと思ったら、世界情勢がどんどん不安定になっていって。報復の連鎖のような出来事が続き、地獄みたいな光景が毎日のようにニュースで流れていました。日常だと思っていたものがこんなにあっけなく崩れるのか、と実感しましたし、“平和って本当に脆い存在なんだな”と感じたんです。

そんな中で、若い人たちも出口の見えない不安を抱えているんじゃないかと思うようになりました。そこで頭に浮かんだのが、復讐劇の原点ともいえる“ハムレット”。青年が“どう生きるべきか”に悩む物語で、今の時代とも重なる部分があると感じました。

作品づくりを通して、世の中の空気に少しでも寄り添えたら…そんな思いから、この映画が生まれました。

出典:シティリビングWeb

スカーレット役として芦田愛菜さんの起用が意外だったという声も

今回、初めてプレスコの収録方法を取り入れて、声を先に録ってから映像を作りました。芦田愛菜さんって、“優等生でかわいらしい”というイメージを持たれていると思うんですが、そのイメージと、復讐を胸に生きるスカーレットという役のギャップが、とても魅力的に映ったんです。

もともとは普通の王女だった彼女が、残酷な運命に翻弄されて変わっていく。その変化を芦田さんは本当に丁寧に演じてくださって、収録するたびに圧倒されました。魂を込めて役に向き合ってくださっているのが、ひしひしと伝わりましたね。

また、舞台でシェイクスピア作品に出演された経験のある俳優さんも多く参加してくださっていて、アニメーション映画でありながら、舞台を観ているような奥行きのある仕上がりになったと感じています。

出典:シティリビングWeb

地獄なのに遺跡があったり、マーケットがあったり…独特の“死後の世界”の映像表現はどのようにして生まれたんですか?

作品の重要な要素である“地獄”をどう描くか考えていたときに、絵画史の研究者の方にお話をうかがったんです。“日本の地獄絵図って、実は地獄そのものではなく、現世の苦しみを象徴的に描いているんですよ”と。

その話が腑に落ちて、地獄ってどこか遠い世界のことじゃなくて、現実の中にある苦しみそのものなんだな、と。それを意識したことで、「死者の国」の世界観に大きなヒントが生まれました。さらに、ヨルダンやイスラエルなど、宗教や文明の発祥地へロケハンにも行きました。そこで感じた“人類の営みの積み重ね”や“祈りの痕跡”が、独特な「死者の国」の風景につながっています。

スカーレットのモデルとなった人物はいますか?

いろんな人物を参考にしましたが、そのひとりがイギリスのエリザベス1世です。シェイクスピアが“ハムレット”を書いた同時代に国を治めていたと言われていますが、結婚せず、国のために生き抜いた強く賢い女性でした。

女王という肩書きの華やかさの裏には、ものすごく重い責任もありますよね。スカーレットもまた、復讐と責任の狭間で苦しみながら、“どう生きるか”を選ぼうとする女性として描きました。単なる復讐劇ではなく、“自分の人生をどう選び取るか”というテーマも、この作品の核になっています。不安の多い時代ですが、そんな中でも観てくださった方が少しでも“未来を考えるきっかけ”を持ってくれたらうれしいですね。

登場人物の未来、「死者の国」の成り立ち、まだ見ぬ場所についてなど、鑑賞後に“考察したくなる余白”を残した広がりのあるストーリーも、この作品の魅力。ぜひ劇場でその世界を体感してください。

2025年11/21(金)公開「果てしなきスカーレット」

監督・脚本・原作:細田守

キャスト/芦田愛菜 岡田将生 / 役所広司 ほか

配給:東宝

©2025 スタジオ地図

https://scarlet-movie.jp/

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