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NHK『べらぼう』主人公“蔦重”4年前に阿部寛が演じていた…!最終回直前“大河キャスト”と他作品の比較

  • 2025.12.11

いよいよ2025年12月14日に最終回を迎えるNHK大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』。本作は、横浜流星が主人公の“蔦重”こと蔦屋重三郎を快演し、“江戸の出版王”となっていく姿が描かれてきた。12月7日に放送された第47話の最後には、これまで蔦重との間にいろいろなことがあった松平定信が、視聴者の心を鷲づかみにするような描写があり、定信役の井上祐貴に大きな注目が集まった。

※以下、本文には放送内容が含まれます。

大河ドラマをはじめ歴史を映し出す作品には、当然のことだが、同じ歴史上の人物が登場することが多々ある。作品ごとに、その各人物をさまざまな俳優たちが演じているが、それぞれ演じ方や、時には設定が違っていることもあって面白い。『べらぼう』の蔦屋重三郎は、2021年に公開された映画『HOKUSAI』では阿部寛が演じていた。松平定信については、2024年に放送されたドラマ『大奥』では、Snow Manの宮舘涼太が演じていたことが記憶に新しい。

『べらぼう』の最終回を前に、本作に登場したキャラクターが、他作品ではどのようなキャストによって演じられ、どんなふうに描かれていたのか比較してみたい。

葛飾北斎の才能を引き出す蔦屋重三郎を阿部寛が演じた『HOKUSAI』

柳楽優弥と田中泯がW主演を務め、葛飾北斎の青年期と老年期を演じた映画『HOKUSAI』。腕はいいものの、なかなか芽が出ず、食べることもままならない生活を送っていた若き北斎を見出した蔦屋重三郎。歌麿や写楽など、江戸を熱狂させる絵師を次々と育て、輩出した当代きっての“名プロデューサー”である重三郎は、北斎から唯一無二の絵を引き出していく。

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横浜流星 (C)SANKEI

阿部が演じる重三郎は、“粋”という言葉がぴったりくるようなキャラクターで、周囲の人々から信頼され、羨望の眼差しで崇められる人物。自信に満ちあふれ、北斎ら絵師たちの心をつかむことにも長けている。阿部は、そんな重三郎を大物俳優の風格で表現していた。横浜が演じた“蔦重”よりも、年齢がやや上の設定という印象なので、重厚感のあるキャラクターだと感じた。

松平定信の“初恋”を深掘りした『大奥』

井上が扮した『べらぼう』の松平定信は、“寛政の改革”を行う老中首座。質素倹約を徹底し、町人文化にも厳しく、洒落本などの出版統制を強化したため、蔦重の出版活動にも大きな影響を及ぼした。定信は蔦重にとって憎々しい存在だったが、より良い世の中にするために手を組むこととなり、第47話のラストでは、“オタク気質”という、定信の愛らしい一面が描かれた。

井上の演技は視聴者から絶賛され、SNSには「歴史好きでも敬遠しがちな定信を井上祐貴さんが魅力的に演じていて興味が湧いた」「喜怒哀楽の表現が印象的」「代表作になったのでは」といったコメントが並んだ。

一方、宮舘が定信を演じた2024年版の『大奥』では、十代将軍・徳川家治(亀梨和也)の正室・五十宮倫子(小芝風花)に、定信が想いを寄せている様子が綴られた。定信にとって倫子は初恋の相手で、彼はいとこである家治に嫉妬心を燃やす。本作は、愛憎劇がメインとなっていたので、『べらぼう』で取り上げられた定信の描写とは大きく異なっているのが興味深い。SNSにも「熱く切ない定信を演じた宮舘さんが良かった」「哀しさが印象に残り、余韻がすごかった」といった感想が見られた。また、宮舘は定信として殺陣を披露するシーンもあり、「圧巻の殺陣に見入った」という声も上がっていた。

変幻自在にキャラクターを演じ分ける安田顕

『べらぼう』と『大奥』で、もう1つ面白いと思ったのは、前者では平賀源内を演じていた安田顕が、後者では田沼意次に扮していたことだ。源内も意次も、『べらぼう』において重要なキャラクターとして描かれ、蔦重に大きな影響を及ぼした人物。『べらぼう』では、渡辺謙が意次を演じた。

『大奥』での意次は、『べらぼう』とはイメージが異なり、権力欲の塊といった印象だった。将軍・家治の幕政を操ろうと画策し、大奥総取締の松島の局(栗山千明)と結託。世継ぎ争いや、大奥内の権力を掌握しようとしていた意次。そんな意次の嫌らしさを見事に体現していた安田だったが、『べらぼう』では蔦重をはじめ、多くの人たちから愛される源内を好演し、人気を博した。

一橋治済を怪演した生田斗真と仲間由紀恵

ほかにも、『べらぼう』で染谷将太が熱演した喜多川歌麿を、『HOKUSAI』では玉木宏が色気たっぷりに演じていたり、後に『南総里見八犬伝』で有名になる曲亭馬琴(『べらぼう』での役名は滝沢瑣吉/演:津田健次郎)を、映画『八犬伝』では役所広司が演じているなど、作品ごとにキャストを比較すると面白い。

最後に、『べらぼう』で生田斗真が怪演して、大きな話題を呼んだ一橋治済を、2023年のNHKドラマ10枠で放送された、男女逆転設定の『大奥』season2では、仲間由紀恵が演じていたことを記しておきたい。冷酷で、強く権力を欲し、“大奥の怪物”とも呼ばれた治済を、生田に負けず劣らず恐ろしい雰囲気で表現した仲間の演技も必見だ。


ライター:清水久美子(Kumiko Shimizu)
海外ドラマ・映画・音楽について取材・執筆。日本のドラマ・韓国ドラマも守備範囲。朝ドラは長年見続けています。声優をリスペクトしており、吹替やアニメ作品もできる限りチェック。特撮出身俳優のその後を見守り、松坂桃李さんはデビュー時に取材して以来、応援し続けています。
X(旧Twitter):@KumikoShimizuWP