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【田園日記~農と人の物語~ Vol.24】具がたっぷりで滋味豊かな汁物「めった汁」

  • 2025.11.18

農にまつわるリアルを伝えるドキュメンタリー連載。情熱をもって地元で「農」を盛り上げる「人」にスポットを当て、いま起こっているコトをお届けします。今回紹介するのは、石川県小松市の冬の風物詩「めった汁」。能登半島地震の被災地での炊き出しで提供し、たいへん好評でした。その味を次代につなごうと奮闘する女性たちの物語です。




めったに食べられないから「めった汁」

めった汁は、寒い季節によく食べられる石川県の郷土料理です。

ダイコンやニンジン、レンコン、サトイモ、サツマイモほかキノコ類や豚肉など、たくさんの具材を入れることから「めったに食べられないごちそう」という意味で、こう呼ばれるようになったと一説では伝わります。

JA小松市の女性部加工部会は、地域の伝統的な農産物加工品作りの技を守り、次世代に伝えることをテーマにして活動。令和六年は能登半島地震の被災者支援のため、被災地や二次避難所を訪問し、郷土料理の弁当やめった汁を作って提供しました。



「寒さが厳しい時期だったので、温かいめった汁は喜ばれました。『早く家に戻って、こんな料理を作りたいわ』と故郷を思い出して涙ぐまれる年配の女性もいました。今もたいへんな生活を余儀なくされている被災者を思うと、涙が出てきます」

そう振り返るのは、JA小松市女性部部長の中田由利香さん(67)。

めった汁の魅力は、体の芯から温まる滋味豊かなやさしい味わい。大きな鍋にたくさんの野菜を入れて作ることで、複雑なうまみが出ておいしくなると中田さんは話します。

被災者と話すことも支援だと気づかされて

女性部では令和六年二月、二次避難所となった小松市の旅館で炊き出しをしました。
三十五人ほどが避難していましたが、用意した百人分のめった汁は、被災者のほかボランティアの人たちにも大好評。

あっという間に大鍋が空っぽになったそうです。

また、五月には電気や水道が復旧した七尾市の避難所にも炊き出しに向かいました。
しかし、まだガスが使えず、卓上型の電磁調理器での調理に苦戦。

ほぼ調理済みのめった汁を持っていったものの、仕上げに加えた野菜がなかなか煮えず、予定以上の時間がかかってしまったそうです。

「被災地では予想外のことも起こります。状況をよく調べてから、行かなければならないことを学びました。それに、被災者の話し相手になることも、たいせつな支援になることを知りました」



今後の活動では、レシピ本では伝えきれない、農産物加工品や郷土料理の細かなポイントやコツを、年配者から教わって若い人たちに伝えていきたいと語る中田さん。

JA小松市女性部が運営する、親子で食と農について学べる「わくわくキッズ農園」などを通じ、郷土料理のおいしさを次世代につないでいきます。



「めった汁」の材料と作り方はこちら



材料(20皿分)
豚肉…200g
ダイコン…1/2本
ニンジン・ゴボウ…各2本
レンコン・サツマイモ…各300g
サトイモ…500g
シイタケ…6枚
シメジ・エノキタケ…各1株
ハクサイ…1/4個
長ネギ…4~5本
こんにゃく・油揚げ…各1枚
みそ…250g
白だし…適量

作り方
1. 具材を食べやすい大きさに切る。ゴボウ、レンコンは水にさらす。フライパンで豚肉をかるく焼いておく。



2. こんにゃくは握り拳でよくたたき、スプーンでちぎると味がしみやすい。



3. 大鍋に3Lの水とダイコン、ニンジン、ゴボウ、レンコンを入れて火にかける。火が通ったらサトイモ、こんにゃく、油揚げ、ハクサイの白い軸の部分を加える。



4. 3が煮えたらサツマイモ、キノコ類、ハクサイの緑色の部分、長ネギ、1の豚肉を入れる。最後に白だしを加え、みそを溶く。



※当記事は、JAグループの月刊誌『家の光』2025年1月号に掲載されたものです。

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