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「クマの目撃情報が挨拶がわり」異例の被害相次ぐ秋田で…近隣住民が明かす“切実な悩み”「悪いイメージを払拭して」

  • 2025.11.26
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出典元:photoAC(画像はイメージです)

秋田県でクマ被害が深刻化しています。相次ぐ目撃情報と人身被害の影響で、住民の生活に大きな変化が起きており、SNSでは「コロナ禍のように外に人がいない」という声も上がっています。

今回は、秋田県のクマ被害の現状と、実際に秋田市に住む方への取材内容を詳しく紹介します。

秋田県のクマ被害、過去最多のペースで推移

秋田県では今年、ツキノワグマによる被害が深刻化しています。秋田県の公式Webサイトによると、今年はクマの出没が例年と比較して非常に多くなっており、人家周辺であっても音を出して鉢合わせを回避するなどの基本的な対策が必要な状況です。

環境省が11月18日に発表した速報値によると、2025年4月から10月までの秋田県内の人身被害は56人に達し、うち3人が死亡しています。

こうした状況を受け、秋田県の鈴木健太知事は10月28日、防衛省に自衛隊派遣を要望しました。猟友会や警察だけでは対応が限界に達しているためです。

秋田県では、クマの目撃情報や人身被害情報をリアルタイムで確認できる「クマダス」というシステムを運用しています。県内全域のツキノワグマ等の出没情報を地図で表示し、注意喚起および情報共有を行っています。秋田県公式LINEからも「クマダス」の情報を取得でき、地域別に通知が届く仕組みになっているため、多くの住民がタイムリーな情報を把握できる環境が整えられています。

秋田市在住の方に聞いた、クマ被害による生活の変化

相次ぐクマ被害により、秋田県の住民生活にはどのような変化があるのでしょうか。秋田市在住・公務員の30代女性に話を伺いました。

「クマの目撃情報は朝と夕方が多いと言われているので、ちょうど犬の散歩の時間帯がそれにあたります。犬にはかわいそうですが、自然の多い広い公園や森林と隣接している公園への散歩は避けるようになりました

近所では家の周辺を「クマ鈴」を付けて散歩する方の姿をよく見かけるといいます。近所の小学校でも、一時期、親が子どもを車で送迎するように学校から案内があったそうです。

「家の近くでクマの目撃情報があったときは、家族に最寄り駅まで送迎をしてもらうなどしていました」

一方で、車社会でもあるため、ショッピングモールや駅前に人の姿が見えないといったことは特にないといいます。

「飲み会を自粛するようなこともあまり聞きません。とはいえ、直近で目撃情報があった場所には近づかないようにしています」

コロナ禍との決定的な違い

「コロナ禍と比較して真逆だと思うのが、自然・公園などを避けるようになったことです」

秋田には自然を活かした観光地も多く、観光業への影響は大きいと女性は指摘します。

「例えば、秋田の観光名所である『千秋公園』がクマの目撃により一時閉鎖されていました。公園内には史料館がリニューアルオープンしたばかりでしたが、休館となってしまったんです。クマ情報と休館・規模縮小情報も、観光客の足が遠のく理由になっていると思います

地域での情報共有が日常に

職場や近所では、クマの目撃情報が挨拶がわりになっているといいます。

「目撃情報があった地域に住んでいる人を心配して声をかけたり、クマが家の近所に出た日は職場の人が気を遣って家の前まで送ってくれたりすることがありました」

県内のクマの目撃情報等は、秋田県が運営する「クマダス」に情報が集約されているほか、秋田県の公式LINEでは地域別に通知が届くようにする仕組みもあるため、多くの人がタイムリーな情報を把握できていると語ります。

「挨拶がわりにクマの目撃情報の共有はしています。ただ、クマ情報はそれぞれ個人でもタイムリーな情報を掴んでいるので『どこにいるか心配!』みたいな声はほぼありません」

抱えている不安と願い

人身被害のニュースを聞くとやはり怖い気持ちにはなるものの、クマの目撃は今年に限らず今までもあったことなので、近所にクマがいることについてはそこまで驚いていないそうです。

「ただ、今までいなかった市街地でも目撃されているため、今年は異常事態だという共通認識はあります。クマ鈴やクマスプレー、最新のクマ情報に留意して行動するといった、今できることをそれぞれがして生活している状況です」

冬を過ぎても「クマニュース」のために人が秋田に遊びに来たり帰ってきたりする人が減るのではないかという不安があると、女性は語りました。

観光やクマ対策に関係する人たちがそれぞれ頑張っている姿も見ています。悪いイメージを払拭して、早く安心して暮らせる、遊びに来られるようになればいいなと思っています

行政の対策と住民一人ひとりの行動も重要に

秋田県では、2025年も例年にない規模でクマ被害が発生し、住民の生活に大きな影響を与えています。

犬の散歩ルートの変更や、学校への車送迎、自然豊かな公園の利用自粛など、日常生活のさまざまな場面で注意が必要になっています。特にコロナ禍とは逆に「自然・公園を避ける」という行動変容が起きており、観光業への影響も懸念されています。

一方で、「クマダス」などの情報システムを活用し、地域で情報を共有しながら、クマ鈴やクマスプレーなど「今できること」を実践して生活を続ける住民の姿があります。秋田県も防衛省に自衛隊派遣を要望するなど、対応を強化しています。

「早く安心して暮らせる、遊びに来られるようになればいい」という住民の願いが実現するためには、行政の対策と住民一人ひとりの注意・行動の両方が重要になってくるでしょう。


参考:
ツキノワグマ情報(美の国あきたネット)
ツキノワグマ等情報マップシステム【クマダス】
クマに関する各種情報・取組(環境省)


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