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忘年会で「領収書は“前カブ”で」店員が『前株』と記載ミス…弁護士が警告「別法人扱いになりかねない」

  • 2025.11.26
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出典元;photoAC(画像はイメージです)

11月後半から12月にかけての忘年会シーズン。領収書の処理が増える時期だからこそ、「宛名」の記載には注意が必要です。

SNS上ではしばしば「『前カブで領収書をください』と頼んだら、『株式会社○○』ではなく『前株○○』と書かれていた」「『宛名は上様でお願いします』と言ったら『上様様』と書かれた」という体験談が見られます。

はたして、領収書の宛名を間違えた場合、どんな問題が起こるのでしょうか? 気になる疑問について、弁護士に詳しく話を伺いました。

そもそも「前株」「後株」とは? 間違えるとどうなる?

「前株」とは、会社名の前に「株式会社」が付く形式のこと。例えば「株式会社〇〇」という表記です。反対に「〇〇株式会社」のように後ろに付く場合は「後株」と呼びます。

実は「株式会社〇〇」と「〇〇株式会社」は、法律上は別の法人として扱われます。つまり、前株と後株を間違えて記載すると、まったく別の会社の領収書になってしまう可能性があるのです。

店舗等で勤務していて領収書を書く際に「前株○○でお願いします」と言われたら、「株式会社○○」と書くのが良いでしょう。

領収書の宛名、間違えたらどうなる? 弁護士が詳しく解説

今回は、NTS総合弁護士法人札幌事務所の寺林智栄弁護士に詳しくお話を伺いました。

間違えられた領収書…後から修正してもらえる?

---店員が領収書の宛名を間違えて書いていたことに後から気がついた場合、修正してもらえるのでしょうか?

寺林弁護士:

原則として、領収書は「証拠書類」なので訂正は慎重に扱われます。 宛名が誤っていると、経理処理や税務調査で「取引先と一致しない」と指摘される可能性があります。訂正方法は2つあります。

1つ目は、訂正印を押して修正する方法です。店舗側が誤記部分を二重線で消し、正しい宛名を記載し、発行者の訂正印を押します。ただし、税務署によっては「訂正領収書は望ましくない」とされる場合もあります。

2つ目は、再発行を依頼する方法です。誤った領収書を返却し、正しい宛名で新しい領収書を発行してもらいます。実務上はこの方法が最も確実で、税務上も安心です。

そもそも宛名が間違っていたらどんな問題が?

---領収書の宛名が間違っていた場合、経費や仕入税額控除で問題が発生しますか?

寺林弁護士:

経費計上については、宛名が誤っていても、取引の実態が明らかであれば経費として認められる可能性が高いです。領収書の日付・金額・発行者が正しく、実際の取引が証明できる場合は問題ないでしょう。

一方、仕入税額控除(消費税の控除)については注意が必要です。消費税法上、仕入税額控除を受けるためには「適格請求書(インボイス)」や領収書に正しい宛名(課税事業者名)が記載されていることが望ましいとされています。宛名が誤っていると、形式的には不備とされる可能性があります。特に「株式会社」の位置(前株・後株)を間違えると、別法人扱いになりかねないため注意が必要です。

客から「宛名を自分で書きたい」と言われたら応じても良いの?

---店員の立場からの質問です。「宛名は空欄にしてください」「宛名は自分で書かせてください」と言ってくるお客さんがいますが、許可してよいのでしょうか?

寺林弁護士:

領収書は発行者が責任を持って作成する証拠書類です。宛名を空欄にしたり、受領者に自由に書かせることは、発行者の責任を放棄する行為になります。

また、宛名が空欄や受領者記入だと、税務調査で「真正な領収書ではない」と判断される可能性があります。さらに、宛名を空欄にすると、第三者に転用されるなど不正経費計上に悪用されるリスクもあります。

店員は、こうした申し出を受けた場合、以下のルールで対応すべきでしょう。

まず、宛名は必ず発行者側で記載すること。「上様」や「ご希望の会社名・氏名」を店員が記入するのが原則です。空欄や受領者記入は不可で、店側が責任を持って記載しなければ、領収書の証拠能力が損なわれます。

どうしても顧客が自分で書きたい場合は、店側が一度正式に記載した上で、訂正印を押して修正するなど「発行者の責任が残る形」で対応する必要があります。

「宛名は空欄ではお渡しできません。ご希望の宛名をお伺いして、こちらで記載いたします」「領収書は発行者が責任を持って記載する必要がありますので、お客様に直接書いていただくことはできません」などと、毅然とした態度をとることが求められます。

---客側としても、宛名は自分で書き入れてはいけないということを知っておくべきですね。

知っておきたい領収書の基本

領収書は重要な証憑資料です。宛名が間違っていると、経費として認められないリスクや税務調査で指摘される可能性があります。

一方で、「前株」「後株」という言葉自体が、領収書を書く機会のない人には馴染みがないのも事実。SNSでの反応を見ても、「高校生のバイト時代に初めて知った」「お客さんに教えてもらった」という声もあり、誰もが最初から知っているわけではありません。

領収書を依頼する側としては、相手に伝わらない可能性を考えて、名刺を見せたり、メモに書いて渡したりする配慮があると親切かもしれません。受け取る側の店員さんも、分からない言葉があれば遠慮なく確認することが大切です。

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