1. トップ
  2. 亡くなった親のスマホ解約に行ったら「本人の意思を確認できないと」と拒否され…どうしたらいいの!?弁護士が「親の死後の解約問題」を解説

亡くなった親のスマホ解約に行ったら「本人の意思を確認できないと」と拒否され…どうしたらいいの!?弁護士が「親の死後の解約問題」を解説

  • 2025.11.29
undefined
出典:PhotoAC ※画像はイメージです

大切な家族を亡くした後、遺族にはさまざまな手続きが待っています。中でも最近特に問題になっているのが、スマホや各種サービスの解約です。デジタル化が進んだ現代では、故人が契約していたサービスも多岐にわたり、その一つひとつに対応しなければなりません。

SNS上でしばしば「父が亡くなったあと、携帯電話の解約をしようとしたらゴネられて時間がかかった」「母の死後、サブスクを解約しようとしたら『本人じゃないとできない』と言われた」といった声が上がり、話題になります。

親の死後、スマホやカード、サブスクなどの解約をスムーズに行うにはどのような準備が必要なのでしょうか?気になる疑問について、弁護士に詳しく話を伺いました。

故人の契約解約で知っておきたい法律の基本ルールと実践のポイント

今回は、NTS総合弁護士法人札幌事務所の寺林智栄弁護士に詳しくお話を伺いました。

まず何から始めたらいい?

---親が亡くなったあと、スマホやサブスクなど各種契約の解約をする際に、最初にやるべきこと、最低限そろえておくべきものは何でしょうか?

寺林弁護士:

まず、死亡が確認できる書類を揃えましょう。

携帯会社・クレジットカード・サブスクなど、ほぼすべての窓口で共通して求められます。最低限用意するものは以下です。

  • 死亡届の届出後に取得できる「死亡の記載がある戸籍(除籍)謄本」または「死亡の記載がある戸籍の附票」
  • 相続人であることがわかる戸籍謄本(いわゆる相続関係を示す戸籍)
  • 申請者(子など)の本人確認書類(運転免許証・マイナンバーカードなど)

次に家族の中で窓口に行く代表者を決めましょう。契約者本人が亡くなった以上、誰が手続きをするのかを明確にしないと、書類の名義がチグハグになり手続きが途中で止まってしまいます。

スマホ解約、クレカ停止などは「相続人の一人」が手続きできます。 銀行や保険は「相続人全員の情報」が必要な場面があります。

さらに契約内容の洗い出しが必要です。スマホやWi-Fiの契約は、

1、ID・パスワード管理(紙やメール)
2、口座引き落とし明細
3、自宅の書類のファイル

などから把握するのが実務上の近道です。

スマホの解約では、以下の点も確認しましょう。

  • 端末を持参する必要があるか
  • SIMカードの返却義務があるか
  • 乗り換え手続き(MNP)が必要か(家族分含む)

最後に、契約を止める優先順位を決めます。

特にスマホは最優先です。「スマホが止まらない限りサブスクや決済が走り続ける」「本人のワンタイムパスワードが受け取れなくなる」「悪用リスクがある」が主な理由です。

スマホの次に、

  • クレジットカード
  • サブスク
  • ネット回線
  • NHK
  • 電気・ガス・水道(名義変更 or 廃止)

などを着手すると、ムダな往復が少なくなるでしょう。

死亡届があるのに解約ができないと言われた場合は…

---SNSでは、死亡の事実が記載された戸籍(除籍)謄本を持参したのに「本人の解約の意思確認が取れないので解約できない」と言われた、という投稿もありました。このような場合は、どうすれば良いのでしょうか?また、企業側のこのような要求は法的に問題ないのでしょうか?

寺林弁護士:

実務上、契約は当事者の死亡により終了することが多く、電気通信契約やサブスク契約、クレジット契約もこの考え方に沿っています。

したがって、「本人の意思確認が必要」「本人じゃないと解約できない」という要求は、死亡時点では法的に成立しないといえます。本人はすでに意思を示すことができないため、相続人(家族)が契約を処理する権限を持つのが法律のルールです。

企業が「本人の意思確認」を求める背景は以下の2つです。

1、本人の無断解約を防ぐための形式的な運用をしている
生前では当然必要ですが、死亡後も同じ手順や形式で対応してしまう窓口が多い、という実務上の問題が起きています。

2、誰が相続人か分からないとトラブルになるため
窓口担当者は「この来店者が本当に相続人かどうか」を判断できません。しかし本来は、死亡の記載がある戸籍(除籍)謄本や相続人であることがわかる戸籍があれば、それで法的には十分です。

つまり、本人の意思確認は本来必要ないのに、相続人確認のプロセスと混同しているといえます。

生前に家族間で整理しておこう

---将来のトラブルを防ぐために、生前に家族で話しておくべきことや、日頃から整理しておくべきことを教えてください。

寺林弁護士:

本人死亡後に必ず直面するのが、スマホのロックが解けないという問題です。アクセスできないと以下の問題が生じます。

  • サブスク契約が分からない
  • 重要メールが確認できない
  • 金融機関の通知が受け取れない
  • ワンタイムパスワードが使えず解約が滞る

そのため、以下の情報を家族で予め共有しておくと良いでしょう。

  • スマホのロック解除コードの保管場所
  • Apple ID/Googleアカウントのログイン情報の保管場所
  • パスワード管理アプリを使っている場合は、その「マスターパス」の扱い

家族に直接教えにくければ「紙に書いて封筒に入れて保管」が現実的で一番安全です。

また、親世代ではありがちなのが、以下の点です。

  • 子のスマホを「親名義」で契約していた
  • Wi-Fiが誰の名義か不明
  • 何年も前の契約がそのまま放置

これが死後にトラブルを引き起こします。

そのため、以下の点を生前に家族で話し合っておくと良いでしょう。

  • 誰のスマホが誰名義になっているか
  • 料金をどの口座から払っているか
  • 家族で名義を整理する必要があるか

名義整理をしておくだけで、死後の解約は段違いにラクになります。

エンディングノートを作成し、その中で名義や利用料の引き落とし口座などを記録しておくのも有効です。

---何年も前に契約したこと自体を忘れてしまっている場合もありそうです。いざというときのために整理しておくことが重要ですね。

解約前に確認したい:公式サイトに手続き方法が載っているかも

多くの企業では、契約者死亡時の手続きについて、必要書類や手順を公式サイトのFAQやサポートページに掲載しています。例えばauの公式サイトでは、「契約者が亡くなった場合の手続きについて知りたい」というページで、必要な書類や来店の流れが詳しく説明されています。

事前に公式サイトで以下の点を確認しておくと、手続きがスムーズになります。

  • どこで手続きができるか(店舗のみか、郵送も可能か)
  • 必要な書類は何か
  • 予約が必要か
  • 持っていくべきものはあるか

特に大手キャリア以外のMVNOやサブスクサービスの場合、企業によって対応が異なるため、事前確認は必須です。「店舗に行ったのに必要書類が足りず手続きできなかった」という無駄足を避けるためにも、まずは公式サイトをチェックしてから動くのがおすすめです。

参考:契約者が亡くなった場合の手続きについて知りたい(au)

知っていれば慌てない、デジタル時代の"もしも"への備え

もし「本人確認ができない」と言われた場合は、窓口の担当者がフローを把握できていない可能性もあります。落ち着いて「死亡の記載がある戸籍謄本と相続人であることを証明する書類を持参している」ということなどを伝え、法的には相続人に解約の権限があることを説明しましょう。

それでも解決しない場合は、消費者庁への相談も選択肢の一つです。

さらに、生前からの備えも大切です。スマホのロック解除方法や契約内容、名義の整理といった情報を家族で共有しておくことで、いざというときの負担を大きく減らすことができます。

デジタル化が進んだ今だからこそ、家族で「もしも」のときの話をしておくことが、お互いを守ることにつながるのではないでしょうか。

undefined

【エピソード募集】日常のちょっとした体験、TRILLでシェアしませんか?【2分で完了・匿名OK】