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新築を購入した40代夫婦「丸聞こえで…」入居初夜、「2階まで光が届く家」を襲った“大誤算”【一級建築士は見た】

  • 2025.12.6
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出典元:photoAC(画像はイメージです)

「天井が高くて明るい家に憧れていました」

Aさん(40代・夫婦+子ども2人)は、注文住宅で1階リビングに大きな吹き抜けを設けました。

モデルハウスのような開放感に憧れ、「2階まで光が届く家」にしたかったといいます。

しかし、入居して最初の夜。

「リビングでテレビをつけていたら、子どもに2階の寝室から“うるさくて眠れない”って言われました。音がここまで響くなんて、想像していませんでした」

「声もテレビも、全部聞こえる」

Aさんが暮らす家は、吹き抜けを中心にした約20帖のLDK。

2階の寝室や子ども部屋と空間が吹き抜けでつながっているように設計されていました。

「リビングで子どもが遊ぶ声や、キッチンの音、テレビの音まで、全部寝室に聞こえます。夜は小声で話さないと、2階に丸聞こえで…」

2階にいても、まるでリビングの隣にいるような音の伝わり方。

Aさんは、静けさのない家にだんだん疲れを感じるようになったといいます。

暮らしてわかった“音の構造”

吹き抜けは、上下階の空間が仕切られていないため、音の反射や減衰が起こりにくい構造です。

通常、天井や壁が音を反射・吸収して音量を抑える役割を果たしますが、吹き抜けではその壁や天井が少なく、音がそのまま上階へ抜けていきます。

さらに、夜間は外部の音が少ないため、より生活音が響きやすくなります。

テレビや食器の音、エアコンの稼働音など、昼間は気にならない小さな音が夜には強調されて聞こえるのです。

Aさんも「昼間は全然気にならないのに、夜になると音が部屋中にこもる感じがする」と話します。

開放感の代償として、“静けさ”と“快適さ”が失われていきました。

 吹き抜けの盲点

一級建築士の視点から見ると、吹き抜けには「デザイン性」と「性能」の両立が求められます。

吹き抜けは視覚的に広く見せられる反面、音・温度・光の制御が難しい空間です。特に木造住宅では天井裏に吸音層を設けないため、音が梁や床を伝って広がってしまいます。

設計段階で“開放感”を優先すると、こうした構造的な課題が見落とされがちです。

「開放感のある家」は、裏を返せば「プライバシーのない家」にもなりかねません。

“静かな家”にするには

吹き抜けを採用する場合でも、次のような工夫で音の伝わりを軽減できます。

  • 防音性の高い建材の使用
    壁に防音性能の高い素材を選ぶことで、音の反射や透過を抑えられます。
  • 間取りの工夫
    吹き抜けをリビング全体でなく“一部分”にとどめ、寝室から距離を取ることで音の直通を防ぎます。また、2階にホールを設けず、建具で仕切ることで防音性が高まります。
  • テレビ・オーディオの配置
    吹き抜け方向にスピーカーを向けないようにし、音の反射を最小限にします。
    壁面収納の内部にスピーカーを組み込むなどの工夫も有効です。

これらの対策を設計段階で組み込むことで、デザインと快適性の両立が可能になります。

 “開放感”と“静けさ”のバランスを考える

吹き抜けは、家の印象を大きく変える魅力的なデザインです。

しかしその裏で、音・温度・プライバシーといった生活性能のバランスを欠くと、「見た目は理想、住み心地は現実」といったギャップに悩むことになります。

一級建築士として言えるのは、“開放感のある家=音が響く家”であることを前提に設計すること。

その上で、素材や間取りで工夫することが、後悔しない家づくりにつながります。

Aさんの経験は、吹き抜けという人気デザインの裏にある「暮らしの盲点」を教えてくれます。

美しい空間をつくることよりも、心地よく暮らせる静けさをどう守るか――

その一歩が、理想の住まいへの近道です。


ライター:yukiasobi(一級建築士・建築基準適合判定資格者) 地方自治体で住宅政策・都市計画・建築確認審査など10年以上の実務経験を持つ。現在は住宅・不動産分野に特化したライターとして活動し、空間設計や住宅性能、都市開発に関する知見をもとに、高い専門性と信頼性を兼ね備えた記事を多数執筆している。