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新築を購入も「まさか3階建てが…」1年後、40代夫婦を襲った“大誤算”【一級建築士は見た】

  • 2025.11.18
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出典元:photoAC(画像はイメージです)

「日当たりのいい家にしたい」――それは、誰もが家づくりで思うことです。

Aさん(40代・夫婦+子ども1人)もその一人でした。静かな住宅街に土地を購入し、念願の注文住宅を建てました。

不動産会社からは「住宅ばかりの落ち着いたエリアです」と説明を受け、周囲には2階建ての家が並んでいました。設計では“南向きの2階リビング”を採用。大きな窓から陽光が差し込み、開放感にあふれた明るい空間が完成しました。

「冬でも昼間は照明がいらないほど明るくて、家族で過ごす時間が本当に気持ちよかったです」

しかし入居から1年後、Aさんの家の南側の土地に「建築計画のお知らせ」の看板が立ちました。

そこには、“木造3階建て”の文字。

「まさか、このエリアで3階建てが建つなんて思いもしませんでした」

隣に3階建てが建った日「リビングが一瞬で暗くなりました」

やがて工事が始まり、足場が組まれると、その高さにAさんは言葉を失いました。
「骨組みができた段階で、リビングの窓に日が入らなくなりました」

完成後、Aさんのリビングは一日中ほぼ日陰。以前のような明るさはなくなり、昼でも照明をつけて過ごすようになりました。

さらに、3階の窓がリビングの真正面にあり、視線が気になるように。
「カーテンを開けると、向こうの部屋の様子が見える距離です。気まずくて昼間も閉めっぱなし。風通しも悪くなって、以前の快適さがまるで嘘みたいです」

せっかく“日当たりを重視して選んだ間取り”が、いまでは閉塞感のある空間になってしまいました。

「住居系の地域だから安心」――その思い込みが落とし穴に

Aさんの家の用途地域は、第一種中高層住居専用地域。

名前からして“中高層=高い建物が制限される地域”のように聞こえますが、実際には3階建ての住宅も建てることができます。

「住宅地だから2階建てまでしか建たない」と思い込む人は多いですが、それは誤解です。

「周りが全部2階建てだったので、3階が建つなんて想像もしませんでした。営業の人にも“落ち着いた住宅街です”としか言われなかったので…」

見落とされがちな盲点

第一種中高層住居専用地域は、戸建て住宅が中心のエリアですが、同時に3階建て住宅や中小規模の共同住宅(アパート)も建築可能な地域です。

問題は、こうした地域特性を十分に理解しないまま土地を購入してしまうこと。

また、不動産会社の説明も「住宅エリアだから安心」といった一般的な表現にとどまり、実際に将来どんな建物が建つ可能性があるかまでは説明が不十分な場合もあるため、買主自身での確認が重要です。

「日当たり良好」と言われても、それは“今の状態”での話。

隣の土地も法令の範囲内であれば、何を建てるかは施主の自由です。

日当たりを守るためにできる“予防策”

Aさんのような後悔を防ぐためには、土地を買う前に周辺の「将来」を想定する視点が欠かせません。

一級建築士が勧める具体的なチェックポイントは次のとおりです。

  1. 用途地域を確認する
    → 低層系の住居専用地域以外では、3階建てを建てることができる。
  2. 市役所で「建築計画概要書」を閲覧する
    → 近隣に新築予定があるかどうかを事前に把握できる。

「隣が今どうか」ではなく、「将来どうなるか」を想定することが、長く暮らせる家をつくるための第一歩です。

周囲の環境が変わっても快適に暮らせるか

Aさんは今も、昼間でもカーテンを閉めたまま暮らしています。

「リビングが暗くなるだけで、こんなに気分が変わるとは思いませんでした。日当たりのよさって、“今の環境”だけじゃなく、“これからの変化”も見ないといけないんですね」

住宅は建てた瞬間がゴールではなく、“周囲の環境が変わっても快適に暮らせるか”が本当の価値です。

第一種中高層住居専用地域という“住宅エリア”の響きに安心しきらず、法規や周辺環境、近隣の計画までをトータルで確認する――

それが、後悔しない家づくりへの確かな備えなのです。


ライター:yukiasobi(一級建築士・建築基準適合判定資格者) 地方自治体で住宅政策・都市計画・建築確認審査など10年以上の実務経験を持つ。現在は住宅・不動産分野に特化したライターとして活動し、空間設計や住宅性能、都市開発に関する知見をもとに、高い専門性と信頼性を兼ね備えた記事を多数執筆している。


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