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「帰り際、布団はたたまないで」元ホテルマンが明かす、日本人がやりがちな“親切”が逆にNGなワケ

  • 2025.11.17
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出典:photoAC(写真はイメージです)

「お気持ちは本当にありがたいのですが、布団やタオルは畳まないでほしいんです」

ホテルをチェックアウトする際、使った布団やタオルをきちんと畳んでおく。「立つ鳥跡を濁さず」という、日本人らしい美しいマナーのように思えます。

ところが、元ホテルマンのAさんは「お気持ちはありがたい」と前置きしながらも、こう打ち明けてくれました。それが逆に現場の手間を増やしてしまうことがある、と。

一体どういうことなのでしょうか。大手ホテルチェーンで4年間勤務した(2025年10月時点)Aさんに、その意外な実態を伺いました。

丁寧な人ほどやってしまう「布団たたみ」

親切心でやってくれているが、実はやめてほしい宿泊客の行動はなんでしょうか。

Aさんは少し言いにくそうに口を開きます。

「チェックアウトの際に、布団や使用済みのタオルをきれいに畳んで置いてくださるお客様が、たまにいらっしゃいます。ですが、実は『畳まないでほしい』のが本音なんです」

畳んだ方が部屋がすっきりして、清掃スタッフも楽なのでは?そう考える方も多いのではないでしょうか。

しかし、現実はその逆でした。

なぜ?理由は「忘れ物チェック」

一見、丁寧に見える行為が、なぜ逆に手間になってしまうのでしょうか。

「清掃スタッフは『お客様の忘れ物がないか』をチェックするために、結局、畳まれた布団やタオルを全部めくって確認する必要があるからです」

ホテルの清掃スタッフは、お客様が快適に過ごせるよう清掃するだけでなく、「忘れ物」がないかを徹底的に確認する重要な役割も担っています。

もし布団がきれいに畳まれていると、シーツの下や布団の間に、指輪や携帯電話といった小さな忘れ物が挟まっていないか、確認のために一度すべて広げ直さなくてはならないのです。

「そのまま置いてくださる方が助かります」

 つまり、親切心が、かえって二度手間を生んでしまっているということでしょうか。Aさんは続けます。

「はい。お客様の親切心が、清掃の手間を増やしてしまうことになるので、使ったものは、もうそのまま置いておいてくださる方が助かります」

見た目がきれいに整っていると、逆に「忘れ物の見落とし」という重大なミスにつながるリスクが高まる。そのため、余計に念入りなチェックが必要になるのです。

では、タオルやリネン類を分別しておくのはどうでしょうか。 この問いにも、Aさんは申し訳なさそうに答えてくれました。

「それも、お気持ちとしては大変ありがたいです。ただ、最終的には専門の業者が分別せずに一緒に回収していくため、『そこまでしていただかなくても大丈夫ですよ』というのが正直なところです」

本当の「配慮」とは

「ホテルをきれいに使おう」

その「良かれ」と思っての行動が、意図せず現場の手間を増やしている。これは、どちらが悪いという話ではありません。

Aさんの言葉は、「立つ鳥跡を濁さず」の精神が悪いのではなく、本当の「配慮」とは、相手が今なにを求めているかを想像することなのかもしれない、と気づかせてくれます。 

使った布団やタオルは、あえてそのままに。それもまた、ホテルスタッフへの立派な「配慮」なのです。


取材協力:元ホテルマンAさん
20代後半の男性。大手ホテルチェーン従業員として4年間のキャリアを経て、現在は旅行業界で勤務している。


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