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新築を購入も「目の前の道路が公園化」注意しても逆ギレ、警察も動けず…30代女性を襲った“大誤算”【一級建築士は見た】

  • 2025.11.14
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出典元:photoAC(画像はイメージです)

Eさん(30代・女性・夫婦)は、念願のマイホームを購入しました。

チラシには「閑静な住宅街」「子育て世帯に人気」と書かれており、周囲には同年代の家族が多く、安心して暮らせそうな雰囲気だったといいます。

「車通りも少なく、静かな環境。ここなら子どもをのびのび育てられると思いました」

ところが、入居してしばらく経ったある日、Eさんの想像とはまったく違う現実が待っていました。

「まさか“家の前”が遊び場になるなんて」

毎日のように、隣の家の子どもたちが家の前の道路でボール遊びや自転車の練習をし、奇声や笑い声が夕方まで続くようになったのです。

最初は「元気でいいな」と思っていたEさんも、休日にゆっくり過ごしたい時間まで外が騒がしく、次第にストレスを感じるようになりました。

「道路で遊ぶのは危ない」と伝えたら、逆ギレされた

ある日、Eさんは車を出そうとして、子どもが道路の真ん中で遊んでいるのに気づきました。

「車を動かすから危ないよ」と声をかけたところ、近くにいた母親から思いもよらない言葉が返ってきました。

「ここはみんなの道路でしょ? 子どもが少し遊ぶくらいで、何が悪いの?」

その瞬間、Eさんは言葉を失いました。

その後も、子どもたちは道路で遊び続け、親同士が立ち話をする姿が日常に。

夕方になるとキャッチボールの音、夜は親の談笑。

「うちの前の道路が公園みたいになってしまった」とEさんは振り返ります。

警察も動けない、“グレーゾーン”の現実

Eさんはついに我慢の限界を迎え、警察に相談しました。

しかし、返ってきたのは期待外れの答えでした。

「危険な行為でなければ、警察としても指導は難しいですね」

つまり、道路での立ち話や子どもの一時的な遊びは法律上の違反ではないため、取り締まりの対象にはならないのです。結局、住民同士のマナーやモラルに頼るしかありません。

「注意しても逆ギレされるし、警察も動かない。どうしていいかわからなくなりました」

Aさんは、せっかく建てた新居にいながら、休日になるとカーテンを閉めて過ごすようになったといいます。

夢にまで見たマイホームが、心休まらない場所になってしまいました。

“道路族”が生まれる構造的な背景

“道路族トラブル”は単なるマナーの問題ではなく、地域の環境や社会構造の変化とも深く関係しています。

道路で子どもを遊ばせる理由としては、保護者の「無知」や「無自覚」だけではありません。

最近では、「公園はあるけれど、ボール遊び禁止・騒音禁止などの制約が多く、子どもが思いきり遊べない」という声もよく聞かれます。また、「公園だと目が届かない」「不審者が心配」といった防犯上の理由から、家の前の道路なら安心と考える保護者も少なくありません。

こうして、結果的に住宅街の道路が“子どもの遊び場”と化してしまうのです。

特に、袋小路や行き止まり構造の分譲地では、通行量が少ないことから「この道は自分たちのもの」という意識が生まれやすく、
道路の公共性が薄れてしまう傾向があります。

さらに、警察も「危険行為でなければ介入できない」という立場。

つまり、トラブルが起きても誰も明確な解決策を持たない構造的な問題があるのです。

購入前にできたはずの“現地確認”

Eさんのようなトラブルを避けるには、購入前の“現地確認”が何より重要です。

特に次の3点は、建築士として強くおすすめしたいポイントです。

  • 夕方や休日に現地を訪れる

実際に近隣の子どもたちが遊んでいる時間帯を観察。車の出入り、生活音、人の動きを見ることで、昼間とは違う“リアルな雰囲気”がわかります。

  • 公園の位置を確認する

近くに公園や広場がないエリアでは、子どもが道路で遊ぶリスクが高まります。「道路が広くて安心」よりも、「公園が近くて安全」のほうが実際の暮らしは静かです。

  • SNSや口コミをチェック

「道路族+地域名」で検索すると、過去のトラブルが投稿されていることもあります。販売会社の情報だけでなく、地域の“生の声”を参考にすることも大切です。

「家の性能」よりも「人の環境」

Eさんのように、“静かな住宅街”という言葉を信じて家を建てた人が、隣人トラブルで悩むケースは決して少なくありません。

住宅の性能や立地だけでなく、「人」と「環境」も含めて暮らしを設計、確認する視点が求められています。

「住んでみないと分からない」ではなく、「住む前に最大限努力すること」が、後悔しない家づくりの第一歩です。


ライター:yukiasobi(一級建築士・建築基準適合判定資格者) 地方自治体で住宅政策・都市計画・建築確認審査など10年以上の実務経験を持つ。現在は住宅・不動産分野に特化したライターとして活動し、空間設計や住宅性能、都市開発に関する知見をもとに、高い専門性と信頼性を兼ね備えた記事を多数執筆している。


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