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支店長「地面師詐欺にも使われる場合が」窓口で発狂する女性客…元銀行員が“偽造”を見抜いた『決定的証拠』

  • 2025.11.13
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出典元:photoAC(画像はイメージです)

こんにちは、元銀行員のマイルドバンカーです。

銀行にはさまざまな書類の提出があり、委任状もその一つです。

家族や友人に委任状を渡しておけば、本人ではなくても預金の引き出しや振込みが可能です。

ただし、委任状は悪用されるケースがあるため、銀行は単なる形式的なチェックでは済ませません。

今回の委任状にまつわるトラブルと、銀行員がチェックしているポイントを紹介します。

Sさんが気付いた委任状の違和感

その日、窓口業務のSさんは委任状にもとづく預金の引き出しを受け付けました。

具体的には、預金者Aさんが委任状を作成し、娘のBさんに預金の引き出しを任せる内容です。

本来は銀行指定の用紙を使っていただきたいのですが、必要項目の記載漏れがなければ、任意の用紙でも手続きは可能です。

Sさんが委任者と受任者の住所氏名、届出印や委任内容などをチェックしたところ、記載項目はすべて網羅されていました。

しかし、以下の部分に違和感を覚えたようです。

  • 預金の払出請求書と委任状の文字が似ている
  • 届出印の印影が薄い
  • 押印時の凹みがない

委任状は預金者のAさんが記入し、払出請求書はBさんが窓口で記入するため、親子といえども筆跡は違っているはずです。

Sさんは、「委任状と払出請求書は同一人物が書いたもの。ただし、委任状はわざと下手な文字にしている」と感じていました。

さらに、届出印が薄く、押印時にできるはずの「紙の凹み」がありません。

私が書類をチェックする際、Sさんから「これ、ちょっとおかしいです」の引き継ぎを受けました。

今でも悪用される印鑑の写し取り

銀行の窓口では筆跡を鑑定できないため、委任状をBさんが書いたかどうかは証明できません。

しかし、委任状を2名体制でチェックした結果、印鑑の写し取りは間違いないと判断しました。

印鑑の写し取りでは、どうしても朱肉が薄くなります。

こうした印影の薄さや、紙の凹みの有無などは、私たちが偽造を疑う際の重要なチェックポイントの一つです。

委任状の内容が疑わしいため、Bさんには「お母さまに電話して確認する」と伝えたところ、かなりお怒りになりました。

親子といえども有印私文書偽造は犯罪です!

Bさんは「預金者本人への確認」を想定していなかったようです。

電話をかけようとする私を制止するため、大声を出されました。

「なぜ電話が必要なのか?委任状があるからさっさとお金を出せ!」
「このお金は母親が必要としている!」
「私を嘘つき呼ばわりするのか!」

といった強い口調での反論がありました。

委任状に書かれていた電話番号に連絡したところ、「そんなものは書いていない。娘が勝手につくったんだから相手にしないで」という返答でした。

結局、「さっさとお金を払わないからダメなのよ!親子関係が悪くなったらどう責任とるの?」など、Bさんは最後まで逆ギレ状態でした。

実印や印鑑を押した書類は厳重に保管しましょう

今回の一件を支店長に報告すると、「印鑑の写し取りは地面師詐欺にも使われる場合がある」とのことでした。

実印や銀行の届出印は大事に保管されていると思いますが、押印された契約書にも注意が必要です。

住宅ローンの契約書などがある場合は、施錠できる引き出しに保管しておきましょう。


ライター:マイルドバンカー

銀行に20年以上勤務し、営業・法務・財務・経営企画などを経験する。現在は独立して法律ライターとなり、遺産相続や労働問題、債務整理や会社設立などのコラム記事を手掛ける。「複雑そうな法律をわかりやすく」をテーマに、3,000本以上の記事を執筆している。


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