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「月々1万円」の罠…残クレで新車を買った人の“大誤算”→銀行ローンより「約15万円損する」思わぬ落とし穴【元ディーラーが解説】

  • 2025.12.4
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出典元:photoAC(画像はイメージです)

月々の支払いが抑えられる点から“残クレ(残価設定クレジット)”を選ぶ人は少なくありません。

しかし実際には、金利の仕組みや総支払額を銀行ローンと正確に比較していないケースも多く、“おトクに見える裏側”に潜む思わぬ落とし穴に気づいていない人も。

今回は、元ディーラーの視点から、残クレが銀行ローンより割高になりやすい理由や実態をわかりやすく解説します。

残クレだと総支払額が割高になるのはなぜ?

月々1万円といった“負担の軽さ”が魅力の残クレ。実は銀行ローンより「総支払額が割高」になるケースが多いと言われています。今回は元ディーラーの徳田このみさんに、仕組みや実態を伺いました。

---銀行ローンより残クレのほうが「総支払額が割高」になってしまう理由を教えてください。

徳田さん

最大の理由は、支払い終了後に残価を再クレジットする際の金利が高いことにあります。見落とされがちなポイントとしては以下の3つです。

  1. 購入時の残クレ金利は優遇されている(例:1.9〜3.9%)
    購入時の残価設定クレジットの金利は、メーカーのキャンペーンや残クレ専用の優遇金利※が適用され、1.9%〜3.9%程度と比較的低めに抑えられてるケースが多いですが、支払い終了後の再クレジットには、こうした優遇措置は適用されることはほぼありません。通常の金利である5%〜7%程度が適用されることが一般的です。この金利差が、総支払額を大きく押し上げる要因になります。※金利は一例

  2. 5年後の“残価100万円”を再クレジットすると金利が高くなる(例:5〜7%)
    残クレを選択した場合、5年後には「返却」「乗り換え」「買取(残価を一括または再クレジットを組み乗り続ける)」という選択肢があります。もし残価の100万円を再クレジットを組み、完済する道を選んだ場合の再クレジットの金利は、購入時に組んだ金利よりも高い場合が多いのです。

  3. 残クレは「二段階で金利」が発生する仕組み銀行

ローンであれば5年で完済し、その後は車の維持費のみですが、残クレでは5年後に改めて長期のローンが始まります。この「二段階の金利負担」が、見えにくいコストとして積み重なっていきます。


---月々支払う金額は低く抑えられても、5年後・10年後を考える必要がありそうですね。

徳田さん:そうですね。前述の内容をでシュミレーションをしてみると、下記のようになります。

<残クレ(5年後に残価を再クレジット)>
購入時150万円を金利3.9%で5年 → 金利約15万円
残価100万円を金利6%で5年 → 金利約16万円
総金利:約31万円/総支払:約281万円

<銀行ローン(最初から全額ローン)>
250万円を金利2.5%で5年 → 金利約16万円
総支払:約266万円

上記は架空の金利で計算していますが、結果的に残クレの方が約15万円割高になる計算となります。これらの計算から分かる通り、結果的に残クレのほうが金利が高くなる場合があるのです。

契約満了時の選択肢とそれぞれのメリット・デメリット

 

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出典:photoAC(※画像はイメージです)

---一般的に、残クレの契約満了時には「走行距離の超過」や「傷の査定」などが、追加費用の原因(トラブルの温床)になりやすいと言われています。そうしたリスクを踏まえた上で、契約満了時の選択について、メリット・デメリットを教えてください。

徳田さん:まず「乗り換え」についてのメリットです。常に最新の車種に乗れるため、新しい技術や安全装備をいち早く体験できる点は大きな魅力です。乗り換えのサイクルは、3~7年と比較的短いため、経年劣化による不具合や高額な消耗部品の交換が発生しにくいのも利点と言えます。また、購入時にメンテナンスパックが付属しているケースも多く、基本的な維持費について大きく心配する必要がありません。さらに、下取りの手続きが簡単で、スムーズに次の車へ乗り換えできる点もユーザーにとっては便利です。

デメリットは、残価を差し引いてクレジットを組む仕組みであっても、乗り換えのたびに諸経費やオプション費用が新たに必要になるため、金銭的な負担は常に大きくなることです。車が生活に欠かせない場合、支払いが半永久的に続くことになるのも大きなデメリットです。また、基本的には初めに選んだメーカーの車に乗り続ける必要があり、自由度は高くありません(返却すれば他メーカーへの移行も可能)。さらに、自分の車として所有できないため、走行距離や外装・内装の傷に常に気を使う必要があります。状態によっては追加費用を請求される可能性もあり、改造やカスタマイズが制限される点も注意すべきポイントです。

---車を使用する期間や頻度によって、選び方が大きく変わりそうですね。次に「返却」によるメリット・デメリットを教えてください。

徳田さん:まず、「乗り換え」と異なり返却を選べば、次に購入する車を同じメーカーに縛られることなく、自由に他メーカーへ乗り換える選択肢が生まれます。また、あらかじめ残価が設定されているため、手放す際に売却手続きを行う必要がなく、煩雑な手間を気にしなくて良い点も大きな利点です。

その一方で、「乗り換え」と同じく、車を自分の所有物として持てないため、外装・内装の傷に気を使わなければなりません。また、車の改造やカスタマイズは基本的に認められず、行った場合は返却前に自費で元の状態に戻す必要があるため注意が必要です。

---「買取」についてのメリット・デメリットを教えてください。

徳田さん:まず、車が自分の所有物になるため、売却や改造などを自由に行えるほか、乗り慣れた車にそのまま乗り続けられる安心感が得られます。所有に切り替われば、走行距離や傷を気にする必要もなくなり、一括で残価を支払えばその後の毎月の支払いや金利負担からも解放されます。

一方、デメリットとしては、総支払額が通常のクレジットや銀行ローンより高くなる傾向がある点です。さらに、クレジットはほとんどの場合再審査が必要で、審査に通らなければ現金で一括支払いをするしかありません。(※詳細はディーラーによって異なるため確認が必要です)

また、5〜7年が経過した車はちょうど車検や修理費がかさむ時期に入るため、維持費の負担が大きくなる点も考慮する必要があります。加えて、残価は購入時に固定されているため、市場価値が下落していたとしても、設定された残価をそのまま支払わなくてはならない点もデメリットと言えるでしょう。

元ディーラーが語る「残クレ」で後悔する人・しない人の違いとは?

 

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出典:photoAC(※画像はイメージです)

---最後に元ディーラーの視点から、「残クレ」にしたことにより後悔する人はどんな人か教えてください

徳田さん:まず、日常的に長距離を運転することが確実な人は、走行距離制限に引っかかりやすく、追加費用が発生しやすいため注意が必要です。また、免許を取ったばかりの初心者や運転に慣れていない人は、事故やこすり傷などのリスクが高く、返却時に高額な請求を受けてしまう可能性があります。

さらに、車の改造やカスタマイズが好きな人も残クレには向きません。実際に「返却前に元に戻すから大丈夫」と考えていたユーザーが、最終的に戻す費用や作業の負担で後悔した例も。加えて、釣り道具やアウトドア用品など汚れやすい荷物を頻繁に積む人も、内装の汚れが査定に影響しやすく注意が必要です。

加えて、山道や砂利道など傷がつきやすい環境をよく走る人、あるいは海沿いや山奥といった車が痛みやすい場所に駐車せざるを得ない人も残クレとは相性が良くありません。これらの環境では車両の劣化が早く進み、返却時に追加費用が発生するリスクが高くなるためです。

---逆に「残クレ」にしても後悔しない人はどんな人でしょうか?

徳田さん:車が必要な期間があらかじめ決まっている人には非常に相性が良く、ライフスタイルの変化に合わせて無理なく車を手放すことができます。また、常に最新の車種や技術に触れていたいという人にとってもメリットが大きく、手軽に新しいモデルへ乗り換えられる点が魅力でしょう。

加えて、車の扱いが丁寧な人は、返却時の査定で不利になるリスクが低く、残クレの利点を活かしやすいタイプ。飽き性で「同じ車に長く乗り続けるより、定期的に違う車を楽しみたい」という人にも向いています。さらに、日常的に長距離運転をする機会がなかれば、走行距離制限等に悩まされることも少ないでしょう。

---ありがとうございました!

数年後のビジョンも見据えて車を選ぼう

残クレ(残価設定型クレジット)は、月々の支払いを抑えながら新車に乗れる手軽さが魅力的な一方で、その仕組みや金利の特徴を理解していないと、後々「思ったより高くついた」と感じてしまうこともあります。

また、契約満了後の「乗り換え」「返却」「買取」にはそれぞれメリットとデメリットがあり、どれが適しているかはライフスタイルや車の使い方によって大きく変わります。つまり、残クレは「誰にとってもおトク」な万能プランではなく、自分のカーライフと相性が合うかどうかが最も大切なポイントです。

今回の内容を参考に、支払額だけで選ぶのではなく、5年後・10年後のライフプランまで見据えた上で、後悔しない選び方を考えてみてはいかがでしょうか。


監修者:徳田このみ

企業の人事担当として、10年以上人事業務に従事。現在はWebメディアでの記事執筆や監修、地方創生メディアでのインタビュー記事の作成など、ライターとして活動中。人事経験とキャリアコンサルタント資格を活かした就職・転職関連のキャリア形成に関わる記事、自動車ディーラーでの就業歴を活かした自動車関連の記事の執筆や監修などを行っている。


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