1. トップ
  2. レシピ
  3. 海面水温の上昇で高まる災害リスク! 黒潮大蛇行の終息との関連も解説

海面水温の上昇で高まる災害リスク! 黒潮大蛇行の終息との関連も解説

  • 2025.10.8

写真:PIXTA

近年、日本では気温だけでなく日本近海にて海面水温が大きく上昇しています。海面水温の上昇は異常気象や魚介類の生態など広範に影響し、私たちの生活を左右します。

そこで、本記事では海面水温の長期変化傾向や上昇の原因、気象災害との関連を気象予報士が解説します。

海面水温の上昇によるリスクを把握し、できるかぎり対策をとりましょう。

海面水温の長期変化傾向

昨今の日本は気温だけでなく、海面水温も上昇し続けています。以下の表は、日本近海における海面水温の長期変化傾向です。

日本近海における「2024年までの海域平均海面水温(年平均)」は、1920年からの100年間で+1.33℃となりました。世界全体平均の海面水温上昇(100年あたり+0.62℃)に比べ、約2倍以上となっています。

これまで、日本近海の海面水温は長期的な昇温傾向とともに、十年規模の変動がありました。例えば、近年は2000年頃に高く2010年頃に低くなりました。

これまでの傾向を参考にすると、2020年頃に海面の水温低下が予想されました。しかし実際には下がらず、むしろ急上昇している状況です。

日本近海の海面水温が上昇する要因

日本近海の海面水温が上昇する大きな要因は、気温の上昇です。以下の図は、日本の年平均気温偏差を表しています。

海面水温の上昇と同様に気温も上昇しており、海面水温と気温には密接な関係があると考えられます。

「黒潮大蛇行」との関係

2025年4月に「長らく続いた黒潮大蛇行が終了した」というニュースが流れました。

黒潮大蛇行とは、東海~関東の太平洋を流れる黒潮が大きく蛇行して流れる現象です。大蛇行が発生すると、本州南岸と黒潮との間に下層にある冷たい海水が湧き上がり、海面水温が下がります。

一方で、黒潮大蛇行の発生時期には黒潮の一部が分岐し暖水が流れ込む「黒潮分岐流」が発生しやすくなります。その結果、東海から関東地方の一部では暖水が流入し、海面水温が上昇します。

しかし、ここ数年の記録的な暑さや海面水温の高さと黒潮大蛇行の関係性は明らかになっていません。

東海から関東地方の沿岸は黒潮大蛇行で海面水温が上がり、それに伴い東日本の太平洋側の気温が上昇していたと考えることもできます。

一方、日本近海で特に海面水温が大きく上昇しているのは日本海であり、黒潮大蛇行が日本全体の気温や海面水温に影響を与える作用は限定的と考えられます。

ちなみに、黒潮大蛇行は以下の間隔で発生しています。

黒潮大蛇行の終息により、今後は東海~関東の太平洋沿岸を中心に海面水温分布が変化する可能性があります。気候が変動する可能性もあるため、今後の動向には注意が必要です。

また、海面水温の上昇は魚介類の生態にも大きな影響を与えます。

海面水温が上昇することで高水温を好むブリやサワラなどの魚種が生息・回遊する海域が北方に拡大する一方、サケなどの低水温を好む魚種は日本周辺の海域まで南下する資源が減少しています。

さらに、魚だけでなくノリなど海藻の生産にも影響が及びます。これらに伴い、漁業経営や地域の食文化、海洋資源管理政策にも大きな影響を与える可能性があります。

海面水温の上昇で大雪災害の増加も?

海面水温の上昇により、さまざまな気象災害が発生するリスクがあります。

まず、海面水温が上昇すると、海水が膨張し海面が上昇します。それに伴い、台風や低気圧が接近したときに生じる高潮や高波、大雨時には河川の水が海に流出できず浸水の発生リスクが高まります。

また、海面水温の上昇によって強い勢力をもつ台風による災害発生のリスクが高まります。これは、海面水温が高くなることで台風の成長に必要となる水蒸気が多く供給されるためです。

冬季においても、海面水温の上昇により雪を形成する水蒸気が多く供給され、大雪災害が増加する可能性があります。

海面水温の上昇を抑えるために

海面水温の上昇を抑えるために、私たちができる取り組みは地球温暖化対策と同様に「温室効果ガスの排出削減」です。

例えば、以下のような取り組みが大切です。

・ 節電、節水を心がける
・ 徒歩や自転車で移動する
・ 公共交通機関を利用する
・ 環境に配慮した製品を選ぶ
・ 再生可能エネルギー源に切り替える
・ 廃棄食品を減らす
・ リデュース、リユース、リペア、リサイクルを活用する

こうした取り組みは、一人ひとりの生活スタイルを見直すことから始まります。継続的に実践することで、温室効果ガスの排出削減に効果をもたらすことでしょう。

温室効果ガスの排出削減により気温や海面水温の上昇を抑えることは、結果的に気象災害の対策につながります。

異常気象への備え

昨今、日本付近の気温や海面水温は「過去に経験したことのない高さ」となっています。

気温や海面水温は気象を左右する直接的な要素であり、記録的な大雨や大雪、高潮といった災害をもたらす可能性があります。

これまで災害がなかった地域でも、大きな気象災害が発生する可能性があるため「自分の地域は大丈夫」と思い込まないように注意が必要です。気象災害に備えるために、気象情報、避難情報、ハザードマップを活用するとともに、防災グッズなどを準備しておきましょう。

気温や海面水温の上昇を抑えるためには、一人ひとりの小さな行動の積み重ねが欠かせません。節電や省エネ、再生可能エネルギーの利用など、日常でできる取り組みを一人ひとりが続けることが、自然災害の対策につながります。

〈執筆者プロフィル〉
田頭 孝志
防災アドバイザー/気象予報士
田頭気象予報士事務所。愛媛の気象予報士・防災士。不動産会社の会員向けの防災記事、釣り雑誌にコラムの連載・特集記事の執筆、BS釣り番組でお天気コーナーを担当したほか、自治体、教育機関、企業向けに講演を多数、防災マニュアルの作成に参画。

元記事で読む
の記事をもっとみる