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30年前、初登場1位→60万超の“希望を再生した”未来ポップ 伝説的グループが“生きる”へ変化した名曲

  • 2025.11.3

「30年前の夜明け、あなたは何を聴いていただろう?」

1995年の秋、ネオンの光がまだ“未来”の象徴だった時代。ディスコからクラブへと文化が移り変わるその夜の空気に、ひとつのサウンドが流れた。

trf『BRAND NEW TOMORROW』(作詞・作曲:小室哲哉)――1995年10月25日発売

テレビ東京系ドラマ『クリスマスキス〜イブに逢いましょう』の主題歌となったこの曲は、ランキング初登場1位を記録し、60万枚を超えるセールスを記録した。

静かな夜明けに鳴り響いた“新しい明日”の鼓動

当時のtrf(現・TRF)は、すでに『survival dAnce 〜no no cry more〜』『BOY MEETS GIRL』『CRAZY GONNA CRAZY』など、爆発的なヒットで時代を席巻していた。この『BRAND NEW TOMORROW』では、それまでの“踊らせるtrf”から、“生きるtrf”へと進化を遂げた作品だったように思う。

イントロから流れるハイトーンなYU-KIのボーカルが印象的だ。透明感のあるシンセのリフ、そこに刻まれる4つ打ちのリズムは、勢いよりも安定を感じさせるテンポ感。“踊る”ための音楽ではなく、“歩き出す”ための音楽――そんな小室哲哉の意識の変化が、ここには明確に現れている。

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1995年、第37回日本レコード大賞を受賞したtrf(C)SANKEI

小室哲哉が描いた“希望の再構築”

この曲が生まれた1995年は、阪神・淡路大震災、地下鉄サリン事件といった出来事が続き、人々の心に深い影を落とした年だった。バブルが完全に終焉を迎え、夢のような90年代前半が遠ざかっていく中で、社会全体が「次の時代」を模索していた。

小室哲哉は、そんな時代の空気をいち早く察知していた。『BRAND NEW TOMORROW』に込められたのは、“勢い”ではなく“再生”のメッセージ。サウンドはミニマルで無機質に見えて、その裏には人間らしい温かさが潜んでいる。

「明日がくること」そのものが、すでに奇跡だった時代。

小室がこの曲に込めた“新しい明日”という言葉は、単なる希望ではなく、生きることの確認のようにも聴こえる。

“未来系ポップス”の到達点

『BRAND NEW TOMORROW』は、単にtrfのヒット曲のひとつではない。それは、“小室サウンド”が社会と響き合う瞬間を象徴する作品でもあった。ドラマのタイアップも相まって、この曲は夜の街だけでなく、オフィス街や通勤電車でも自然に流れるようになり、リスナーの日常へと溶け込んでいった。

“踊る”ために鳴らされたビートが、“生きる”ためのビートに変わった時代。『BRAND NEW TOMORROW』は、そのちょうど境目に立っていたのだ。

時代が終わっても、明日は続く

今あらためて聴くと、この曲の持つ“優しい強さ”が心に染みる。華やかなサウンドの中に、ひとりひとりの息づかいがある。trfが歌ったのは「未来」ではなく、「明日へ向かう今」だった。

それから30年。音楽の形もメディアも変わったが、“明日を信じる音”の力だけは、何も変わっていない。あの夜明けのシンセの響きは、今もなお私たちの心のどこかで鳴り続けている。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。