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25年前、日本中が衝撃を受けた“力強い疾走ビート” 歌姫のリクエストから生まれた“TKサウンドの最終章”

  • 2025.11.2

「25年前の秋、あなたはどんな景色を見ていた?」

2000年。街のスピーカーからはダンスビートと新しい世紀の鼓動が混ざり合っていた。ガラス張りのビル群の間を抜ける風、ネオンの瞬き、携帯電話を握りしめる若者たち。そこに流れていたのは、あの声だった。

安室奈美恵『PLEASE SMILE AGAIN』(作詞・作曲:小室哲哉)――2000年10月4日発売

小室哲哉プロデュースのロック調サウンド。ギターが走り抜けるサウンドは、安室からのリクエストによって実現した。

ロックの風をまとうポップアイコン

1990年代後半、安室奈美恵は“時代そのもの”だった。R&Bのグルーヴを日本に根づかせ、ファッションや生き方までをも変えていった存在。だが2000年という節目の年に彼女が放ったのは、意外にもギターサウンドを軸にしたロックポップだった。

曲の冒頭、ドラムとギターが絡み合う瞬間から、これまでの“クールなR&B女王”とは違う勢いが感じられる。小室哲哉のメロディはキャッチーながら、リズムには力強い跳ねがあり、どこか挑戦的でもあった。

この変化には、制作の裏でのやりとりが大きかった。安室が「久々にスカーンと抜けるような曲を」とリクエストし、小室がその声に応える形で生まれたという。

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2010年、GINGERのイベントに登場した安室奈美恵(C)SANKEI

“Fran”の世界に溶け込むクールなサウンド

『PLEASE SMILE AGAIN』は、明治製菓「Fran」のCMソングとしても知られる。安室本人が出演し、クールな表情を浮かべる映像は大人な印象を残した。「強さ」と「優しさ」が同居する瞬間が、画面越しにも伝わってきた。

発売当時、CDセールスは20万枚を超えた。全盛期の爆発的ヒットと比べれば控えめかもしれない。だが、その数字以上に、この曲が持つ意味は大きかった。

小室哲哉との“最終章”にあった静かな余韻

小室ファミリーの時代を象徴してきた二人にとって、今思えばこの作品は“転換点”だったように思う。1995年の『Body Feels EXIT』以来、数々の名曲を生み出してきた黄金タッグ。その関係が成熟を迎えるなかで、『PLEASE SMILE AGAIN』はまるで“新しい季節の入口”を思わせる清々しさを放っていた。

サウンドには、小室特有のエレクトロ要素が残りつつも、ギターの生音やリズム隊が前面に出ており、よりナチュラルな感触へと進化している。テクノロジーの輝きから、人間的な温度へ――その橋渡しを果たした1曲といえるだろう。

彼女が見ていた“次の景色”

2000年の安室奈美恵は、母として、女性として、そしてアーティストとして確実に次のステージを見据えていた。『PLEASE SMILE AGAIN』の頃、まだ小室哲哉とのタッグは続いていたが、その音の中にはすでに“自立”の気配が滲んでいた。

ギターの強いビート、余白を感じるボーカル。かつての完璧なダンス・チューンとは異なる、より素顔に近い響きが聴こえる。この曲は、いわば「過去」と「未来」のちょうど境界に立つような1曲だった。

力強いのに、どこか寂しげ。華やかなのに、どこか透明。

そんな二面性を抱えたサウンドと歌声は、2000年代初頭の“安室奈美恵という人間のリアル”そのものだった。

時代を駆け抜けた笑顔の意味

25年が経った今聴いても、この曲のイントロには不思議な爽快感がある。それは、単なる懐かしさではなく、“新しい時代へ踏み出す勇気”のようなもの。あの頃、私たちは未来に向かうことを恐れていなかった。

彼女の笑顔がテレビやCMに映るたび、世界が少しだけ軽くなった気がした。

この曲は、2000年という境界線を駆け抜けた彼女からのメッセージ。その言葉が、今も静かに響いている。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。