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「仮面ライダー」から始まった“イケメン俳優”の軌跡、NHK大河主演→“歌舞伎の女形”で魅せた新境地

  • 2026.6.5
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2012年8月、映画『仮面ライダーフォーゼTHE MOVIEみんなで宇宙キタッー!』大ヒット御礼舞台挨拶に登場した吉沢亮(C)SANKEI

俳優の魅力は、たいてい「その人らしさ」に宿る。どんな役を演じても滲み出る個性。それを華と呼び、スターの証とする。

吉沢亮は、そこが少し違う。この人は役のたびに姿を変える。前の役の余韻が、次の役には一切残らない。王を演じれば王に、女形を演じれば女形に、まるごと化ける。だから一本観るたびに「こんな顔もできるのか」と驚かされる。

変身し続ける男。それが、吉沢亮という俳優の正体だ。

文字通りの変身から始まった

象徴的なことに、この人のキャリアには文字通りの「変身」がある。

2011年から放送された特撮ドラマ『仮面ライダーフォーゼ』。吉沢が演じた朔田流星は、表向きは愛想のいい交換留学生でありながら、その実は昏睡状態の親友を救うため孤独に戦う潜入者だった。仮面ライダーメテオに変身する役どころである。表の顔と裏の顔を持つ少年を、淡々と演じ分けていた。

仮面の下にもう一つの顔を持つ。後の吉沢を思えば、これ以上ない出発点だ。変身する側の人間として、この人は世に出た。ちなみにこのとき親友を演じたのが横浜流星(奇しくも彼も「流星」)で、彼のドラマ初出演でもある。二人が遠い先でもう一度交わることを、まだ誰も知らない。

同じ顔で、正反対の二人に化ける

変身が現実離れした域に入ったのが2019年だ。映画『キングダム』で、吉沢は中華統一を目指す秦の若き王・嬴政と、その王に瓜二つの少年・漂を一人二役で演じた。同じ顔の人間が、孤高の王と市井の少年として、まったく別の体温で画面に立つ。観ているうちに、二人が同じ俳優だということを忘れてしまう。一つの身体に二人を宿してみせた演技で、第43回日本アカデミー賞最優秀助演男優賞を受けている。

派手な変身ばかりではない。同じ年のNHK連続テレビ小説『なつぞら』では、十勝で絵を描く無口な青年画家・山田天陽を演じた。声を荒げるでも泣き崩れるでもない、静かな役だ。そこには土の匂いのする青年が、確かに生きていた。

本当の変身は、何も起きない役で一人の人間の輪郭を立ち上げるときに起きる。派手に化けるのはまだわかりやすい。吉沢は、その正反対の静けさへの変身もやってのけた。

遠ければ遠いほど、化けてみせる

この人の凄みは、化ける対象がどんどん自分から遠ざかっていくところにある。

2021年のNHK大河ドラマ『青天を衝け』では渋沢栄一を演じ、平成生まれで初の大河主演を務めた。青年から老境まで、一人の人間の生涯をまるごと背負う。役を変えるのではなく、一つの役の中で時間そのものに変身していく仕事だった。

そして2025年の映画『国宝』で、吉沢はもっとも遠い場所へ跳んだ。歌舞伎の女形に人生を捧げる男・立花喜久雄である。男の俳優にとって、女形はおそらく到達しうる最果てだろう。所作も、声の出し方も、視線の置き方も、男のままでは届かない。そこへ平然と化けてみせ、観た者が一人の役者の業をまるごと信じてしまうほどの説得力で立った。この作品で、第49回日本アカデミー賞最優秀主演男優賞、第35回日本映画批評家大賞 主演男優賞ほか数々の映画賞を獲得する。

王、少年、画家、偉人、女形。並べてみると、共通点は何もない。共通点がないことこそが、変身し続ける男の一貫性なのだ。

出発点に、また戻ってくる

おもしろいのは、『国宝』で立花喜久雄のライバルを演じたのが、横浜流星だったことだ。フォーゼで親友を演じた二人が、芸の道を競う役で再会した。変身し続けた末に、出発点の相手とまた巡り合う。出来すぎている。

そして2026年7月17日公開の映画『キングダム 魂の決戦』で、吉沢は再び嬴政を演じる。原作屈指の合従軍編を映画化する大作だ。これだけ遠くまで化けてきた人が、また始点近くの役に戻ってくる。

仮面の下に別の顔を持つ少年から始まり、王に、画家に、偉人に、女形にと、際限なく変身してきた。この人はおそらく、これからも一つの顔に留まらない。次はどこへ化けるのか。それが見えないからこそ、目が離せない。


※記事は執筆時点の情報です

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