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新人バス運転士「ルート知らないんですけど…」突然、『代車運行』を任され絶望…結末に「今でも忘れられません」

  • 2025.10.14
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出典:photoAC(写真はイメージです)

こんにちは。送迎バスの運行管理やバス運転士の経験を持つVenus☆トラベルです。

今回は、20年ほど前に私が経験した、バス運転士として「最も驚愕した予期せぬトラブル」をご紹介します。当時は「もう辞めたい」とまで考えたものの、今では笑って「何とかなる」と考えられるようになった経験の1つでもあります。

私には届かなかった上司の心の声

送迎バスの運行を請け負う会社では、事故や故障によって運行が滞ったとき、事故処理や代車運行が求められます。

あるとき、現場からの一報を受けた上司から「バスが故障した!現場に向かって!」と言われ、私は張り切って現場へ急行しました。

てっきり、故障対応でお客様の誘導が必要だと思った入社半年の私。

しかし、上司の心の声は「代車でバスを走らせて」でした。

現場で初めて代車運行の言葉を聞いた私は、運行ルートを知りません。ところが、上司から返ってきた言葉は「バスを走らせるのは運転士の義務だ!」でした。

「安心・安全な運行を厳守するのが運転士なのに、知りもしないルートを走ることが、果たして安心・安全な運行になるのか?」

そんな疑問と上司への怒りでいっぱいでしたが、暑い中、バス停でお客様を待たせていることに気づき、一言、「わかりました」と上司へ伝えて電話を切りました。

気合いなのか意地なのか…私が取った行動

代車を発進させ、とりあえず出発地点へ到着し、乗客を乗せたものの…私には次のバス停の位置すらわかりません。このとき、初めて上司への反発心を後悔しました。

とはいえ、バスがあるのに「走れません」とは言えない運転士としての意地もあり、咄嗟に乗客へ案内を出すことにしたのです。

「バス故障により、当バスは代車となります。また、私自身バスの運転には自信があるものの、初めて来たため肝心の運行ルートを把握できておりません。どなたかバスのルートをご存じの方はいらっしゃいませんか?」

おそらく、乗客も怖かったと思います。だって、運転士が運行ルートを知らないだなんて、誰も予想していなかったことでしょう。

最後の乗客が降車して絶望…そして奇跡が起きた

最初は戸惑う乗客が多かったものの、2人の男性が案内を申し出てくれたため、降車する乗客はいませんでした。

バスの故障で運行停止してから、すでに1時間近く経過しています。1人、また1人と降車していくなか、終点まで残り数ヵ所のバス停を残し、案内をしてくれた最後の乗客が降車します。

「もう誰もいないね」もはや絶望です。

しかし、そのとき奇跡が起こりました。なんと、男性1人が乗車してきてくれたのです。

再び、運行ルートの案内をお願いしたところ、乗客の言葉は「すみません…僕、盲目で…」でした。

しかし、視力を失われたのは2年前で、運行ルートはなんとなく覚えているとのことで、案内してもらうことにしました。

何とか見えていたときの風景を思い出し、言葉で伝えてくれる乗客。右左折する目印を聞いて必死に探す運転士の私。

乗客と運転士の二人三脚で、何とか終点までたどり着くことができました。

今だからこそ笑える「良い経験」

終点で待っていたのは、私に指示を出した上司でした。「まさか本当に走るとは思わなかった」と言ったニヤニヤ顔は、今でも忘れられません。

今の時代、無理な指示を出したりするとハラスメントに当たる可能性があり、無茶な指示はなくなったことでしょう。

しかし、あの時の経験があったからこそ、ある程度のことは「何とかなるものだ」と思えるようになれた自分がいます。だからこそ、人生に転機が起こっても今こうして頑張れているのだと、今ではあのときの上司に感謝すら覚えています。

仕事で「No」を言えなかった時代だからこその経験ですが、今の私の働く力の1つとなって身についているのです。


ライター:Venus☆トラベル

近畿地方でバスの運転に関わる仕事に携わって約12年、多くの送迎バスを運転しました。幼稚園や自治体、企業や施設など、それぞれの場所で学ぶことが多くありました。その反面、運転士視点で感じた心の声をリアルにお届けします。


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