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タクシー運転手「13,000円が水の泡に…」乗り逃げ被害に今でも後悔…“泣き寝入り”せざるを得なかったワケ

  • 2025.10.13
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出典元;photoAC(画像はイメージです)

料金を支払わずに走り去る「乗り逃げ」。それは、タクシー運転手が日常的に直面するリスクの1つであり、れっきとした犯罪行為です。しかし、その被害の多くは警察に届けられることなく、運転手の泣き寝入りで終わってしまうといいます。

なぜ被害は表に出にくいのか。実際に13,000円を踏み倒された都内エリアで4年半のキャリアを持つ現役運転手、Aさん(2025年10月時点)が、その悔しい記憶を語ってくれました。

「財布がない」悪質なウソと、反故にされた口約束

Aさんが体験した乗り逃げは、計画的とも思える手口でした。

「1度、13,000円の乗り逃げ被害に遭いました。湯島から吉祥寺までお乗せした酔った女性が、到着するなり『財布もカードもない』と」

Aさんは、少し苦笑いを浮かべながら当時を振り返ります。

「後日振り込むという口約束を信じて連絡先を交換しましたが、結局支払われることはありませんでした。最初からそのつもりだったのかと思うと、人間不信になりますよ」

タクシーの運賃13,000円。
決して小さな額ではありません。「後で払う」という言葉を信じた結果、裏切られた。その経験は、Aさんの心に深い傷を残しました。酔っていたという状況も、計算されていたのかもしれません。

なぜ警察を呼ばなかったのか?運転手を縛る「ためらい」

では、なぜその場で警察を呼ばなかったのでしょうか。Aさんにはいくつかの理由がありました。
「今思えば、その場で警察を呼ぶか、免許証の写真を撮らせてもらうべきでした。でも突然の出来事にどう対応していいかわからなかったんです」

Aさんの言葉には、当時の戸惑いが今も滲んでいました。現場は深夜。相手は酔っており、トラブルに発展する可能性もあったといいます。

さらにAさんは、運転手という仕事ならではの葛藤についても語ります。
「事を荒立てて時間をロスしたくないという気持ちもありました。次のお客さんを探さないと収入が減ってしまう。そんな一瞬のためらいが、被害につながったのだと思います」

恐怖と焦り、そして時間との戦い。いくつもの要因が重なり、結果的に「泣き寝入り」という選択を迫られてしまう。これが、乗り逃げ被害がなかなか表に出ない大きな理由だといえます。

マニュアルなき現場、運転手個人の裁量に委ねられる防犯

Aさんは、このようなトラブルに直面した際の対応が、運転手任せになっていた点も指摘します。
「私の勤務している会社では明確なマニュアルがあるわけではなく、実際は運転手個人の裁量に任されています。だからこそ、経験の浅い運転手ほど、どう対応していいかわからないんです」

現場で発生する問題を個人が1人で抱え込む構図。その背後には、組織としての防犯体制の脆弱さがあったといいます。

「本来は、会社がドライブレコーダーの映像を元に被害届を出すなど、組織として対応すべきなんです。でも、私の会社では実際はそこまで手が回っていないのが現状ですね」とAさん

自己責任という名の現場放置、組織としての仕組みの不備という構造的な問題が垣間見えます。

生活の糧を奪う行為

乗り逃げは、運転手の生活を直接脅かす悪質な犯罪です。その被害を防ぐためには、運転手個人の注意だけでなく、業界全体の防犯体制の強化が不可欠でしょう。

そして私たち乗客も、タクシー料金が運転手にとって生活の糧であるという当然の事実を、今一度心に留めておく必要があります。1人ひとりの誠実さが、この問題を減らす第一歩になるはずです。

取材協力:タクシー運転手Aさん
4年半のタクシー運転手経験を持ち、都内エリアで勤務している