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「今日はいいです」入浴拒否を続ける70代女性…数日後、彼女が漏らした本音…結末に「心が震えた」【精神科ナースの告白】

  • 2025.10.22
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出典元;photoAC(画像はイメージです)

こんにちは、現役看護師ライターのこてゆきです。

精神科の現場では、食事や服薬だけでなく「清潔ケア」も大切な日常支援の1つです。

けれど実際には、その当たり前が難しい場面に何度も出会います。

特に、うつ病の患者さん。気分の波が大きく、「入浴したくない」「着替えたくない」と拒否されることは珍しくありません。

今日は、そんなある70代女性との関わりを通して気づいた、「清潔ケアの本当の意味」についてお話ししたいと思います。

「今日はいいです」その言葉に隠されたもの

うつ病で入院中の70代女性患者Aさんは、入浴日になると、いつも目を伏せてこう言いました。

「今日はいいです」

1日の中でも気分の変動は強く、入浴拒否が日常になっていました。理由を尋ねても、はっきりとは答えません。

「疲れたの」「また今度でいい」

その表情には、頑なさと、どこか申し訳なさのようなものが入り混じっていました。

「気分の問題かな」「身体がしんどいのかな」

私は毎回、そう自分に言い聞かせながら病室を後にしました。

清潔を保つことは大切。しかし、無理に誘えば心を閉ざしてしまうかもしれない。

「看護師としてやるべきこと」と、「人として寄り添いたい気持ち」の間で、心が揺れ続けました。

「入ってもらわないと困る」焦りと迷いのはざまで何日も入浴ができない日が続くと、他のスタッフからも声が上がりました。

「そろそろ入ってもらわないと」

「匂いも気になるし、皮膚トラブルになったら大変よ」

たしかに、言っていることは正しい。しかし、その正論をそのままぶつけるのは違う気がしました。

私は少し時間をあけたり、声をかけるスタッフを変えたり、いろんな方法を試しました。

けれど反応はいつも同じ。

「今日はいいです」

小さく首を振る彼女の姿に、私の方が心折れそうになっていました。

「どうしたらいいんだろう」

そんな思いが頭を巡りながらも、「待つしかない」という直感だけは不思議とありました。

「今日なら入れるかも」小さな一言に見えた希望

ある日の午後、巡回でAさんの部屋を訪室した時に、彼女がぽつりとつぶやきました。

「今日なら、お風呂、入れるかも」

その言葉に思わず立ち止まりました。

驚きと嬉しさで胸が熱くなりながらも、声を荒げないように努めました。

「そうですか。じゃあ、ゆっくりお湯をためておきますね」

その日、彼女は久しぶりに浴室へ。湯気の中で少し緊張した表情を見せながらも、

「気持ちいいですね」と私が声をかけると、ほんの一瞬だけ微笑みました。

その笑顔を見た瞬間、「入浴できたこと」よりも、「心が少し動いたこと」が何より嬉しく感じました。

清潔ケアは「身体のケア」だけじゃない

それからというもの、彼女は自分から「今日はどうしようかな。入らないとって思うんだけど、体が重くて動けそうにないの」と話すようになりました。

拒否ではなく、相談に変わったのです。

その変化を見て、私は思いました。清潔ケアとは、身体をきれいにするだけじゃない。その人の「心の準備」を見守る時間なんだと。

私たちはつい「清潔を保つこと」に目を向けがちです。しかし、本当に大切なのは「その人がどう感じているか」を見逃さないこと。

「今日はいいです」と言うその言葉の奥には、「しんどい」「自信がない、不安」「誰かに見られるのがつらい」

そんな心の声が隠れているのかもしれません。

「無理に進めない勇気」を持つこと

あの患者さんとの時間を通して、私は「無理に進めない勇気」を学びました。

焦らず、信じて、待つこと。

それが、結果的に「心を動かす支援」につながることがある。

看護の現場では、「何かをやること」よりも「待つこと」の方が難しいときがあります。

でも、患者さんの「今日なら入れるかも」という一言が、それを教えてくれました。

あの日の小さな声を、私は今でも忘れられません。

もし今、同じように「拒否されてつらい」と感じている看護師さんがいたら、焦らずその人のペースを信じてみてください。

清潔ケアは、身体を洗うだけでなく、心に触れるケアでもあるのだと思います。



ライター:精神科病院で6年勤務。現在は訪問看護師として高齢の方から小児の医療に従事。精神科で身につけたコミュニケーション力で、患者さんとその家族への説明や指導が得意。看護師としてのモットーは「その人に寄り添ったケアを」。


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