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元宝塚トップ娘役・咲妃みゆ、KERA作品は「ワクワクとゾクゾクが同時にある」

  • 2025.9.15

「最初にお話をいただいたときは、とても嬉しかったです。喜びを通り越してびっくりマークでした(笑)」。そう咲妃みゆさんが話すのは、ケラリーノ・サンドロヴィッチ(以下、KERA)さんの書き下ろし新作舞台『最後のドン・キホーテ』。

KERAさんの作品の、ワクワクとゾクゾクが同時にある感じが好き

「私の中でKERAさんの作品は、現実とファンタジーの中間地点のような印象です。観劇していると、自分でも気づいていなかった感情を急に引っぱり出される感覚があって、いつもワクワクとゾクゾクが同時にある感じです」

ナンセンスコメディの旗手と、元宝塚歌劇団トップ娘役の組み合わせは意外。しかし、一昨年に咲妃さんが出演した唐十郎作品『少女都市からの呼び声』を観てのオファーだったと聞けば納得だ。現実とファンタジーの世界が縦横無尽に交差していく唐戯曲は、演技力だけでは演じられず、思い切りの良さとユーモア、それを表現できる肉体を持つ俳優だけが表現できる世界だった。

「KERAさんが観に来られていたのは知っていたのですが、その数日後に今作のオファーをいただいて嬉しかったです。『少女都市~』は、これまで自分がまるで触れたことのない世界で、稽古前に劇団・新宿梁山泊さんの稽古場を見学させていただいた時に、自分に足りてないものがすべてわかったんです。演者さんが発するセリフひと言ひと言に、生きるって命がけなんだという唐さんの強烈なメッセージを感じ、その瞬間にかける魂のほとばしりにゾクゾクしました。そのゾクゾクは、KERAさんの作品にも通じるもの。どう見せたいとかうまく演じようではなく、自分の持ちうるエネルギーをすべて出しきるつもりで臨みました。すべてが理解できたわけではないけれど、唐さんのセリフに身を委ねるうち、なぜか涙が込み上げてくるような不思議な体験をしました」

唐作品にとどまらず、2021年には古田新太さんプロデュースの『衛生』という“お下劣”ミュージカルにも挑戦している。

「たぶん知りたがりなんだと思います。人々が惹きつけられるものがあるなら、蚊帳の外から眺めているだけじゃなく飛び込んでみたいんです。とはいえ、さすがに『衛生』の台本を読んだときは、とんでもない世界に飛び込んでしまったなと思いました(笑)。稽古期間中には全身に蕁麻疹が出てしまったこともあるくらい。でも逆にそこで覚悟が決まりましたし、今となっては大好きな作品です。今回も、自分を奮い立たせて挑む作品に巡り合えてありがたいです」

咲妃みゆ

さきひ・みゆ 1991年3月16日生まれ、宮崎県出身。元宝塚歌劇団雪組トップ娘役。退団後は舞台のほか映像作品でも活躍。近作に、ドラマ『波うららかに、めおと日和』。映画『やがて海になる』は秋公開予定。

Information

最後のドン・キホーテ
KAAT 神奈川芸術劇場プロデュース『最後のドン・キホーテ THE LAST REMAKE of Don Quixote』

騎士物語を読みすぎて現実と妄想の区別がつかなくなった初老の男が自らを騎士と思い込み旅に出る冒険物語、スペインの作家・セルバンテスの『ドン・キホーテ』を原作にKERA流の群像劇が展開。9/14(日)~10/4(土) KAAT 神奈川芸術劇場〈ホール〉 作・演出/ケラリーノ・サンドロヴィッチ 出演/大倉孝二、咲妃みゆ、山西惇、音尾琢真、矢崎広、須賀健太、高橋惠子ほか 全席指定S席1万円ほか チケットかながわ TEL. 0570-015-415(10:00~18:00) 富山、福岡、大阪公演あり。

写真・内田紘倫(The VOICE) スタイリスト・國本幸江 ヘア&メイク・本名和美(RHYTHM) インタビュー、文・望月リサ

anan 2462号(2025年9月10日発売)より

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