1. トップ
  2. 恋愛
  3. 【60代エンタメ】俳優・浦井健治さん「韓国の作品を演じて学んだこと」【好奇心の扉・後編】

【60代エンタメ】俳優・浦井健治さん「韓国の作品を演じて学んだこと」【好奇心の扉・後編】

  • 2026.3.4

いま韓国創作ミュージカルは、世界中で注目を集めています。日本の劇場でも、話題の作品が次々に上演。 この春に幕を開けるのは、韓国でも大ヒットしたミュージカル『破果 パグァ』。 本作の主役である女性暗殺者に復讐を誓い、危険なゲームを仕掛ける青年を演じるのは、韓国発の名作ミュージカルに数多く出演されている浦井健治さん。浦井さんに、クライムノワールを原作とするこの作品の面白さや見どころ、そして、日本と韓国の舞台をつなぐ思いを伺ったインタビュー、前後編の後編をお届けします。  

「韓国の作品を演じて学んだこと、そのひとつは“ちゃんと伝える”大切さです」

作品にあらわれる国民性 その違いと乗り越え方

これまで、韓国作品を上演するために、日本のクリエイティブチームやキャストはさまざまな工夫をしてきたそうです。 「発声の点では、ハングルは英語のように音の立ち上がりから強く発するので、ミュージカルには適しているんですよね。なので、日本語に置き換えるときには、曲にエネルギーを注ぎ込み、オリジナル作品の持つメッセージを届けることを意識します。日本語とハングル、どちらのよさもありますが、日本語は、情緒や心の機微を表現するのに向いているように思います」 浦井さんはそのキャリアのなかで日本と韓国の、ある表現の違いにも気がついたといいます。 「日本人は人生の大切な局面で、あえて気持ちを直接伝えないかわりに『伝わってるかな?』と問うようなコミュニケーションが、思いやりとして捉えられたりしますよね。その点、韓国は『ち
ゃんと伝える』ことを大切にする。稽古場でそれを役として体現するうちに『伝える』大切さを僕も学び、その意味が理解できたように感じました」 同時代を生きる俳優が、セリフに実感を持って演じること。それは、観客が古今東西の戯曲に共感して楽しむことができる鍵となるのかもしれません。 「『演劇は時代を映す鏡だ』とは、シェイクスピア『ハムレット』のセリフ。また、演出家の栗山民也さんは『演劇は時代を再生する装置だ』とおっしゃっています。2時間から3時間の上演時間のなかで、ある時代の戦争や革命といった歴史を知ることができるのも演劇。ときに教科書や研究書よりも、強く伝える力があるように思います」

「イ・ジナさんは『破果』が自分の手から離れて、日本で今回上演されることをとても誇りに思ってくださっていると感じています」と浦井さん。

劇場で観客と一緒に作っていくのが演劇

俳優としての自分の土台は、「稽古場にある」と浦井さん。
 
「例えば、大学などで舞台芸術を指導している方々が、稽古場では演出家・ボイストレーナーであり、作品を観客に届けるプロフェッショナルとして提案や試行錯誤を重ねています。僕にとっては、韓国の大学路のような場所です。そこで第一線の方々から学べている豊かさ。また、鹿賀丈史さんや市村正親さんのような先輩方は第一声を発するだけで、もしくは現れるだけで、その人にしか出せない世界観で場を支配してしまう。稽古場で、そうした境地に立っている先輩方から得たエネルギーや時間を、自分は空気のような感覚で身にまとっている気さえしています。ただ、これは僕ひとりのものではなく、誰もが受け取るべきものだと思うんです」
 
いま、日本の「2.5次元」作品は国内だけでなく世界各国で大人気。そうした舞台で経験を積んだ若手俳優たちが、最近はミュージカルにも次々と挑戦しています。
 
「時代の転換期なのかもしれません。日本の漫画やアニメが、エンターテイメントとして世界に誇るコンテンツになっているからこそ、これまでの稽古場で培われてきたミュージカル界の豊かな財産を継続できたらいいですね。歌舞伎界に代々受け継がれてきた芸があるように」
 
その稽古場で作り上げられた作品は、観客がいる劇場で演じられることで作品として完成し、磨き上げられていきます。上演そのものを形として残しておくことはできませんが、観劇によって刻まれた記憶は、その日その席で観た人だけのもの。
 
「『素敵なあの人』を拝見して、ファッションや美容だけでなく、観劇にも長けている方が多いのではないかと感じました。日本と韓国で盛り上がっているミュージカルの〝いま〟を観ていただけたら本当に嬉しいです」

ミュージカル『破果 パグァ』

2026 年3 月7 日( 土) ~ 3 月22 日( 日) 東京・新国立劇場中劇場、3 月27 日( 金) ~ 3 月29 日( 日) 大阪・梅田芸術劇場メインホール、4月4日( 土) ~ 4 月5 日( 日) 福岡・久留⽶シティプラザ ザ・グランドホールにて上演。
 
【出演】花總まり、浦井健治、中山優馬、熊谷彩春、武田真治 ほか
【翻訳・訳詞】高橋亜子
【演出】一色隆司
【音楽監督】甲斐正人
 
Original work Gu Byeong-mo'snovel "HAKA 破果"
Script & Lyrics by Hyejeong Jang, Gina Lee Music by Nayoung Lee Original Production by PAGE1
主催:ミュージカル『破果』製作委員会 【NHK エンタープライズ/ブルーミングエージェンシー/ h.stage / Air Media /ニッポン放送】

命あるものの温もりに気づいたとき、ヒロインの人生最後の死闘がはじまる

かつてない“60 代女性の暗殺者” を主人公に据えた、韓国でセンセーショナルな反響を呼んだミュージカル『破果』は、激しいアクションシーンも見どころのひとつ。
韓国本国では2024 年3 月に初演を迎え、『ジーザス・クライスト・スーパースター』『ヘドウィグ』『ガイズ&ドールズ』などの演出で知られる演出イ・ジナはじめ、実力派クリエイターが集結し、観客の心を揺さぶる傑作として大きな話題を呼んだ。
原作はベストセラーとなった小説『破果』。韓国文学史上最高と称賛された“キラー小説” であり、ニューヨークタイムズによる「注目すべき本100 選」にも選定され、日本だけではなく世界13 か国で翻訳され世界中で読まれている。

あらすじ

人生のほとんどをプロの暗殺者として生きてきた爪角。超一流の暗殺者であった彼女も年齢を重ね、体の衰えから引退を決意する。いままで守るべきものを作らず、ひとりで生きてきたが、捨てられていた老犬や、親しみを感じる近所の住人など、気がつけば守りたい存在が……。
喜怒哀楽とは無縁の孤独な人生を送るつもりが、他人の痛みを感じるようになり、いつしか心に温もりを求めるようになっていく爪角。しかし、心を寄せていた子どもを、彼女を執拗に追い続ける青年トウが連れ去った。人生で初めて誰かのために闘うことを決意した彼女に待ち受けるものとは……!?

ミュージカル『破果 パグァ』を楽しむためのおすすめブックガイド

『破果』 ク・ビョンモ 著 小山内園子 訳 ¥2,970 岩波書店

小山内園子さんの「 訳者あとがき」によると本作は2013 年に発表後、数年をおいて韓国でのフェミニズムの盛り上がりという時代の変化を背景に、SNS の口コミにより大きな注目を集め、2018 年に加筆された改訂版が刊行された。《「こういう女性の物語を読みたかった」と、いわば読者に召喚されるかたちで爪角は再登場》したのだった。日本ではその改訂版が翻訳され2022 年に出版。2024 年に第 15 回翻訳ミステリー大賞を受賞。

『破砕』 ク・ビョンモ 著 小山内園子 訳 ¥1,870 岩波書店

韓国で2023 年に発表、日本では2024 年に刊行された、爪角が殺し屋となるまでの前日譚。山にこもって3週間、死と隣り合わせの最終訓練を受けることになった少女。人を破壊する術を身につけることは、人として、女としての「普通」の一生を粉々にすること─。『破果』と合わせて読むことで、爪角の人間としての輪郭がより鮮明に浮き上がってくる。

これからの活動への思いを馳せて写真集のロケ地は韓国へ

浦井健治 写真集『 Mirae ~未来~ 』 ¥5,500 ワニブックス

2025 年に発売された浦井さんの4冊目となる写真集は、本人たっての希望で韓国・ソウル市内がロケ地に選ばれた。演劇の街、大学路エリアにも撮影に訪れたそう。

お話を聞いた方

浦井 健治さん 2000 年『仮面ライダークウガ』(EX)で俳優デビュー。2004 年『エリザベート』皇太子ルドルフ役に抜擢。以降、幅広いジャンルの作品に出演。第22 回読売演劇大賞最優秀男優賞、第67 回芸術選奨文部科学大臣演劇部門新人賞など数々の演劇賞を受賞。舞台以外にも3作のアルバムを発表し、ソロコンサートなど音楽活動も展開している。2025 年にはデビュー25 周年記念写真集『Mirae ~未来~』を発売。ポッドキャスト番組『浦井健治のココバナカフェ』も好評配信中。2026 年5 月、世界51か国以上で公開され熱い感動を呼んだフランス映画を舞台化するオリジナルミュージカル『最強のふたり』など、話題作が控えている。

撮影/川村恵理 構成・文/杉村道子 ※素敵なあの人2026年4月号「《60代の女性暗殺者が舞台の主人公》『破果 パグァ』のノワールな快感   俳優・浦井健治さんが語る 日韓が紡ぐミュージカルの新潮流【好奇心の扉】」より
※掲載中の情報は誌面掲載時のものです。商品は販売を終了している場合があります。
※画像・文章の無断転載はご遠慮ください。

この記事を書いた人 素敵なあの人編集部

「年を重ねて似合うもの 60代からの大人の装い」をテーマに、ファッション情報のほか、美容、健康、旅行、グルメなど60代女性に役立つ情報をお届けします!

元記事で読む
の記事をもっとみる