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「予約したのに乗れない?」窓口で客が激怒。元駅員が明かす、ネット予約の“落とし穴”

  • 2025.12.10
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出典元:photoAC(画像はイメージです)

こんにちは。元鉄道駅員の川里と申します。

今日は、私が駅員時代に経験した「お客さまの失敗談」をご紹介します。

鉄道サービスの複雑さを再認識したエピソードです。

インターネット列車予約サービス

インターネットで列車を予約したことはありますか? 現在、「えきねっと」「エクスプレス予約」「e5489」など、JRや各鉄道会社で様々なインターネット列車予約サービスが展開されています。

私が勤めていた会社にも、インターネットから列車を予約できるサービスがあります。ただ窓口と同じきっぷを予約・購入できるだけでなく、3日前や7日前までに予約を確定する割引サービスや、チケットレスで乗車できるサービスが利点です。

また、サービスにもよりますが、列車の出発前ならインターネット上で自由に何度でも予約の変更が可能です。「今夜出発の列車を予約しているけど、やっぱり明日の列車に変えようかな」というようなとき、わざわざ駅に行かずとも家や町にいるまま変更できます。

さらには「予定がなくなったから、やっぱり行かない」という払い戻しの操作も可能です。駅窓口の混雑を見て「今からここに並ぶのか…」とため息をついた経験のある方も多いと思いますが、ネット予約は「駅に並ぶ必要がない」というのが最大の長所です。

一方で、ログインIDやパスワードを忘れたり、スマートフォンの電池切れで予約番号がわからなくなったりといったトラブルが多発していました。

ネット予約で疑似周遊旅行

さて、ここからは私が応対したあるお客さまの話です。この方は私が勤務している駅よりもかなり遠くから、飛行機を経由してお越しでした。列車の予約はすべてインターネットで行っており、出発時点では帰りの旅程を決めていなかったようです。旅慣れした方の印象がありました。

当時、私が勤めていた会社ではチケットレス乗車が未対応で、すべての予約は窓口か指定席券売機できっぷとして発券する必要がありました。帰りの列車をネット予約したお客さまが私の窓口に来て、予約番号を申告します。なお、実際に申告された番号は忘れてしまったので、以下の予約番号は適当な数字です。

「1483です」

その4桁の予約番号を聞いた瞬間、私は「またか」と思いました。そして、さぞ落胆されるだろうと思いながら、以下の案内をしました。

「他社のネット予約サービスをご利用ですね? 恐れ入りますが、この駅では受け取りできません。お客さまご自身で払い戻し操作のうえ、買いなおしが必要です」

受け取りも全額返金もできない

お客さまは落胆どころか驚愕されました。

「嘘でしょ!? 予約はできるのに受け取りできないの? 払い戻しって…手数料かかるの? 嘘でしょ!?」

予約番号は忘れましたが、お客さまの驚いた様子はよく覚えています。

私の会社では、きっぷの受け取りに必要な予約番号は5桁です。このお客さまが利用したネット予約では複数の会社の列車を予約できますが、きっぷの受け取りはそのネット予約サービスを運営している会社の駅のみに限られます。

このようなトラブルは時々起きていました。相互直通する列車があるので互いのネット予約サービスできっぷは予約できます。しかし、発券はそれぞれの会社の駅でしかできません。ネット予約の「駅に行かずに予約できる」メリットが仇になっていたのです。

また、駅の券売機で買い間違えたきっぷなら全額返金できる場合がありますが、発券もできない他社の予約に対して窓口で払い戻しはできません。私が可能な案内は、お客さまの操作で手数料を払い、予約を払い戻してもらうということだけです。

納得できない!

このお客さまについては救済策がないか上司にも相談したのですが、上司の回答は「根気よく説明し、ご納得いただくように」とのことでした。しかしながら、お客さまはお金がかかっているので簡単に飲み込めるものではありません。

「チケットレスに対応していないのもきっぷの発券ができないのも、すべて鉄道会社の都合じゃないか。なのに客に責任を押し付けて手数料を取るのか?」

「予約ができるから予約したんだ。列車に乗れないのなら予約させないのが常識だ」

「そもそも、あなたがたの会社のインターネット予約は使いにくい。こっちの会社のフォーマットを見ろ。ね? こんなに使いやすい」

メモを取りながらご意見を伺いました。お客さまは、ご自身の考えを強い口調で、長い時間にわたって話し続けられました。その間にも、窓口の列は後ろへ後ろへと延びていきました。もちろん、納得できない気持ちはよくわかります。とはいえ本当にこれ以上の案内はできないので、心苦しくも頭を下げるしかありません。

インターネット予約の使いにくさなど、様々なご意見を述べられたお客さまは、最終的に『高速バスを使うから、もういい!』と言い残し、窓口を離れていきました。

ネット予約は便利な反面、サービスを提供する会社ごとにルールが異なる場合があります。特に、複数の鉄道会社を乗り継ぐ旅行の際は、きっぷの予約サイトに記載されている「受け取り場所」や「注意事項」を事前に確認することが、トラブルを避ける上で非常に重要です。せっかくの旅行が台無しにならないよう、少しだけ時間を取って確認することをおすすめします。



ライター:川里隼生

鉄道会社の駅係員として8年間、4つの駅を経験しました。コロナ禍やデジタル化を通して移り変わってきた、会社としての鉄道サービスの未来像と、お客様それぞれが求めている鉄道サービスのあり方の両方から学んだことを記事にしていきます。


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