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「まだ逮捕されないのか?」外国人男が卒塔婆を振り回し…大炎上“墓荒らし動画”に下る処罰は?【弁護士解説】

  • 2025.9.7
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出典元:photoAC(画像はイメージです)

近年、SNSの普及により、さまざまな情報が瞬時に拡散される時代となりました。しかし、中には注目を集めるために過激な内容を投稿する行為も増加しています。

8月下旬、オーストラリア人男性が日本の墓地でお供え物の缶チューハイを飲んだり、卒塔婆を振り回したりする自撮り動画が拡散され、「大切な人が眠る場所に対して許せない行為」「罪を償わせるべき」「まだ逮捕されないのか?」と話題になりました。

警察は事実関係を確認中で、在日オーストラリア大使館も渡航者に対し「現地の法律とルールを尊重するよう」注意喚起を出しています。

はたして、このような墓荒らし行為は法的にはどのような問題があるのでしょうか?気になる疑問について、弁護士さんに詳しくお話を伺いました。

墓荒らし行為の法的責任について、弁護士が詳しく解説

今回は、NTS総合弁護士法人札幌事務所の寺林智栄弁護士に詳しくお話を伺いました。

墓荒らしはどんな罪になるの?

---自分とはまったく無関係のお墓のお供え物を無断で盗んでいく行為や、お供え物や卒塔婆を振り回す行為、破壊する行為は、どういった罪にあたり得ますか?

1、お供え物を無断で盗む行為

お墓に供えられた花や果物、飲食物を持ち去る行為は、刑法上の「窃盗罪」(刑法235条)に該当します。お供え物は亡くなった方に向けられたものであるため、法律的には「所有権が誰にあるか」という点が問題となります。

一般的に、供物は墓地の管理者や、墓を承継する遺族の所有物と考えられています。したがって、これを勝手に持ち去る行為は、他人の財物を不法に占有する行為となり、窃盗に当たります。

2、卒塔婆を振り回す・壊す行為

卒塔婆や墓石などを壊したり、落書きしたり、振り回して損壊する行為は、刑法261条の「器物損壊罪」にあたります。卒塔婆や墓石は、寺院や遺族が費用を払って設置したものですから、勝手に壊すことは明確に犯罪に該当します。

3、墓を荒らす行為そのものの罪

お墓を踏み荒らしたり、卒塔婆や供物を投げ捨てるなど、「墓所の尊厳を著しく侵害する行為」は、刑法191条の「墳墓発掘・死体損壊罪」に該当する可能性があります。これは、単に物を壊したという次元を超え、死者や遺族の敬虔な感情を害する特別な罪とされているため重く扱われ、3か月以上5年以下の拘禁刑が科される可能性があります。

A墓地への立ち入り自体が罪になるケースも

---そもそも、自分の先祖や親族のお墓があるわけではない墓地に勝手に立ち入ること自体に違法性はありますか?

1、墓地への立ち入りの一般的な扱い

多くの墓地や霊園は、一般の参拝やお参りを想定して公開されている場合があります。寺院の境内墓地や公営墓地などは、誰でも自由に出入りできるケースが多く、単に立ち入るだけでは直ちに違法とならないのが通常です。

しかし、立ち入り方や目的によっては、法律上の問題が生じることがあります。

2、違法性が認められる可能性があるケース

・不法侵入(刑法130条)
墓地がフェンスや門で囲われており、「立入禁止」「関係者以外立入禁止」といった表示がある場所に、正当な理由なく立ち入れば、「住居侵入罪」や「建造物侵入罪」にあたる可能性があります。

・威力業務妨害罪(刑法234条)
墓地は寺院や霊園の管理業務によって維持されています。墓地内で不審な行動をして、参拝者の行為や管理者の業務を妨害すれば、この罪に問われる可能性があります。

・軽犯罪法違反
「正当な理由なく他人の敷地に侵入する行為」は軽犯罪法1条32号にあたる場合があります。門扉を越えて立ち入る、夜間に忍び込むなどの行為をした場合には該当する可能性があります。

日本での犯罪…国籍によって刑罰は変わる?

---今回は外国人男性による問題行動でしたが、外国籍の人と日本国籍の人で、処罰のされ方は変わってくるのでしょうか?

1、刑事責任の基本原則

まず大前提として、日本国内で行われた犯罪行為は、日本の法律(刑法・特別法など)が適用されます。これを「属地主義」といいます。そのため、行為者が日本国籍であっても外国籍であっても、同じ行為をすれば同じ罪に問われ、同じ刑罰が科されるのが原則です。

今回の例でいえば、(1)お供え物を盗めば窃盗罪、(2)卒塔婆を壊せば器物損壊罪、(3)墓を荒らせば墳墓発掘・損壊罪が成立しうることは、国籍に関わりません。

2、外国人特有の影響

ただし、刑事責任そのものは同じでも、外国籍の人が犯罪を犯した場合、刑罰とは別に「在留資格・出入国管理上の影響」の問題が生じます。主に生じるのは以下の問題です。

・強制退去(退去強制手続)
出入国管理及び難民認定法(入管法)により、一定の刑事事件で有罪判決を受けた外国人は、刑期を終えた後に退去強制の対象となることがあります。たとえば、懲役刑・禁錮刑の実刑判決を受けた場合などが挙げられます。

・在留資格の取消し・更新拒否
在留資格を持つ外国人が犯罪を犯した場合、更新が認められない、あるいは資格が取り消されることもあります。

・再入国禁止
強制退去となった場合、原則として5年間(場合によっては10年間)日本への再入国が禁止されます。

3、国際的配慮の有無

「外国人だから罪が軽くなる」「逆に重くなる」といったことはありませんが、外交的な注目を集める事件の場合、外務省を通じて本国大使館に連絡されるなど、外交ルートを通じた配慮や通報が行われることもあります。

文化的理解と法的責任、双方の重要性

墓荒らし行為は単なる器物損壊を超えて、死者への尊厳を傷つける重大な犯罪行為として法的に厳しく処罰される可能性があることが分かります。

日本とは文化や宗教観が異なる国の人であっても、日本国内では日本の法律が適用され、同等の刑事責任を負うことになります。一方で、在留資格への影響など、特有のリスクも存在します。

国際化が進む現代社会では、異なる文化的背景を持つ人々が共存していくことが求められます。お互いの価値観を尊重し、理解し合うことが、より良い国際社会を築いていくための第一歩なのではないでしょうか。


参考:オーストラリア大使館 Australia in Japan(@AustraliaInJPN)
https://x.com/AustraliaInJPN/status/1962699053315301591

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