1. トップ
  2. 「忘れたらプール入れないからね!」児童に念を押した小学校教員→放課後まさかの光景に真っ青「やってしまった…」

「忘れたらプール入れないからね!」児童に念を押した小学校教員→放課後まさかの光景に真っ青「やってしまった…」

  • 2025.9.12
undefined
出典:Photo AC ※画像はイメージです

こんにちは。元小学校教員のみずいろ文具です。

今日は、今から10年ほど前、私が教員時代に経験した「忘れられない失敗談」をご紹介します。今でこそ笑い話にできますが、当時は冷や汗をかきながら必死に自転車をこいでいたことを、今も夏の終わりになると思い出します。

夏休み明けの水泳学習と“カード”の存在

長い夏休みが終わり、子どもたちが少しぼんやりした表情で登校してくる9月初旬。担任としては「学校の生活リズムを取り戻していこう」と気を引き締める時期です。

そんな時期に再開するのが水泳学習。1学期後半の7月にも進めますが、その残りを夏休み明けに実施します。学校によって多少違いはありますが、当時勤めていた学校では、毎回「プール健康カード」を持参することが決まりでした。

このカードには保護者が当日の朝、子どもの体温や健康状態を記入し、捺印をして持たせます。これがないと入水は認められないルール。水泳学習は命にかかわるので、子どもの安全を守るための大切な手続きです。

私はその週の学級通信や前日の帰りの会で、しつこいくらいにこう念押ししていました。

「いい?絶対に忘れないでね!カードないとプールに入れないからね!」

放課後に突きつけられた悲しい現実

しかし、放課後になって職員室の机を整理していた私は、信じられない光景を目にしました。

学期末に集めていた子どもたちのプール健康カードが、きっちり封筒に入って私の机の引き出しから出てきたのです。

「…ここにある、ということは…」

血の気がサーっと引きました。子どもたちに「絶対に忘れないで」と言っていた私が、そもそも配付をしていなかったのです。翌日は水泳学習。カードがなければ、クラス全員が入水できません。

大慌てで管理職に相談しましたが、返ってきた言葉はただひとつ。

「…配って歩くしかないね」

自転車で35軒、家庭訪問の旅へ

気温30℃を超える真夏日、覚悟を決めて私は公用自転車にまたがりました。地図を片手に、クラス全員分35軒の家庭を訪問してカードを配布する“旅”の始まりです。

最初の数軒は緊張でいっぱいでしたが、玄関先で「先生!どうしたんですか?」と驚かれ、事情を説明すると「それはそれはお疲れ様」と笑って受け止めてくださる方が多く、少し肩の力が抜けました。

中にはお茶やお菓子を差し出してくださる保護者もいて、ありがたい気持ちと同時に「恥ずかしい、やってしまった」という気持ちでいっぱいでした。

しかも軒数を重ねるうちに日は傾き、あたりはだんだんと暗くなっていきます。年度初めに家庭訪問をしてはいたものの、うろ覚えのお宅もあり、道に迷うことも。

真っ暗な道を汗だくで自転車を走らせ、ようやく最後の家にたどり着いたときには、空には星がきらめいていました。

学校に戻ると夜の8時近く。職員室でまだ仕事をしていた教頭先生が、「…おかえり」と苦笑いで出迎えてくれました。

今だから言える“懐かしい失敗”

令和の今は、プールのための健康観察や入水の可否がアプリで管理される学校が増えました。保護者がスマホで入力すれば担任が端末から確認できる仕組みです。このため、配り忘れや記入漏れといった問題は大幅に減りました。

あの時の私のように「自転車で35軒配り歩く」なんて、今の先生方は経験することはないかもしれません。それでも、汗をかき、必死でカードを届けたあの夜は、私にとって忘れられない教員生活の1ページです。

失敗はつらいものですが、そこから学んだ責任感、突然の訪問に嫌な顔することなく対応してくださった保護者の温かさは、今の私の糧になっています。便利な時代になった今だからこそ、あのアナログで必死だった経験が懐かしく思えるのです。



ライター:みずいろ文具
関東の公立小学校で15年間、子どもたちと向き合ってきました。教室での日々を通して感じた喜びや戸惑い、子どもたちから教わったことを、今は言葉にしています。教育現場のリアルや、子どもたちの小さな成長の瞬間を、やさしい視点でお届けします。


【エピソード募集】日常のちょっとした体験、TRILLでシェアしませんか?(2分で完了・匿名OK