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「予想の斜め上」「高度な脚本」NHKドラマの最終回、綾瀬はるか“孤独女子”が選んだ“生き方”にあふれる驚きと賞賛の声

  • 2025.8.6

「私はこれからも、私らしく生きていきたい…。だから、別れよう。私はひとりで生きて、ひとりでしにたい」……綾瀬はるか主演のNHKドラマ『ひとりでしにたい』(毎週土曜よる10時)最終回。この台詞が静かに、しかし鋭く視聴者の胸に刺さった瞬間だった。全6話を駆け抜けた本作は、タイトルのインパクト以上に、その中身が濃密だった。老後や孤独死を巡るリアルな問い、家族との関係、他人から見た“幸せ”に翻弄される自分自身。そして、何よりも“どう生き、どう死ぬか”を、自分の言葉で考え抜いた主人公・山口鳴海の姿が、視聴者に深い余韻を残した。

孤独死を恐れて始まった物語

鳴海がこの旅を始めたきっかけは、風呂で亡くなった伯母・光子(山口紗弥加)の孤独死だった。「あんなふうにはなりたくない」……それは「惨め」「可哀想」という他者の視線を恐れたものだった。そして彼女は婚活を始め、「誰かと一緒にいることで孤独を回避しよう」と試みる。

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『ひとりでしにたい』8月2日放送 (C)NHK/テレビマンユニオン

しかし、出会った那須田(佐野勇斗)との関係は、鳴海に新たな問いを投げかける。愛とは何か。依存とは違う、自分にとっての生きる選択とは何か。

その一方で那須田は自らの過去、ネグレクトを受けていた事実について語り、「あなたといると普通の子になれる気がした」と語る。そのうえで「彼氏という名ばかりの役職でいい。自分を使い倒してくれていい」と鳴海に提案するのだ。

その言葉に鳴海は、一度はあくまで「投資」「利用する形」で彼を受け入れようとする。しかし、この関係もまた、誰かに依存することで成立する逃げの生き方であることに気づく。

「ひとりでしにたい」は、孤独ではなく自立

鳴海が選んだのは、那須田との別れだった。でもそれは彼を拒絶したのではなく、自分自身を見つめ直したうえで選び直した自立の現れだったのだと思う。「人の目を気にしてた。無意識のうちに、人から見た素敵な人生や良い死に方を目指してた」という鳴海の言葉に、この物語の核心が表出している。

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『ひとりでしにたい』8月2日放送 (C)NHK/テレビマンユニオン

ひとりで死ぬことを恐れていたはずの鳴海。そんな彼女が「私は私らしく生きて、ひとりでしにたい」と言えるようになるまでの物語。それは、他者の価値観から自由になるための成長の過程と同義だった。

最終回放送後、SNSには「終わり方意外」「続編希望」「濃密な芝居に心を鷲掴みにされた」「予想の斜め上を走り続ける高度な脚本」と驚きと称賛の声があふれた。鳴海と那須田、彼らが選ぶこの先のストーリーをもっと見ていたい。それだけ、彼女の生き方に共振する視聴者が多かった証拠なのだと思う。

より良い死に方は、より良い生き方の先にある

このドラマは「死に方」を描いたのではなく、「生き方」を描いた物語だった。どう死ぬかは、どう生きるかの延長線上にある。そんな当たり前のことを、現代に生きる私たちにそっと突きつけてくれた。

「愛と書いて、めんどくさいと読む」。最終回の副題に込められた皮肉と真実。誰かと生きるのも、ひとりで生きるのも、どちらもめんどくさい。だからこそ、私らしい生き方を選び取る。鳴海の静かな決断は、きっと多くの人の心を揺さぶり続けるだろう。


NHK 土曜ドラマ『ひとりでしにたい』 毎週土曜よる10時放送
NHKプラスで見逃し配信中

ライター:北村有(Kitamura Yuu)
主にドラマや映画のレビュー、役者や監督インタビュー、書評コラムなどを担当するライター。可処分時間はドラマや映画鑑賞、読書に割いている。X(旧・Twitter):@yuu_uu_