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夏の台風は迷走しやすい?その理由や防災のポイントを紹介

  • 2025.7.4

日本では、例年7月から10月にかけて台風の発生・接近・上陸が多くなります。

毎年のように台風被害が夏から増える理由として「夏の台風は迷走しやすく、進路予想が難しい」点が挙げられます。夏の台風の動きに翻弄され、当初の予想とは異なる場所で大きな被害が発生する可能性もあります。

そこで、今記事では夏の台風が迷走しやすい理由や特徴、防災のポイントをご紹介します。

<こちらの記事もよく読まれています!>→低気圧・台風の気圧の低さと大雨や暴風との関係を解説

夏の台風が迷走しやすい理由

夏の台風が迷走しやすい理由は、日本付近が夏の高気圧に覆われ、台風を流す偏西風が北上しているためです。

画像:筆者作成

台風は上空の風に流されながら移動する性質があります。秋は日本の上空に偏西風と呼ばれる強い西風が吹いているため、日本付近に近づいた台風は東寄りに進路を変えて加速します。しかし、夏は偏西風が高い緯度で吹いているため、台風を流す強風がありません。

台風は地球の自転の影響で北に進む力をもちますが、自転が台風を動かす力は弱く、上空で吹く風や気圧配置などの影響を大きく受けます。例えば、日本付近の上空に「寒冷低気圧」がある場合、その低気圧の風により台風が複雑な動きをすることもあります。

また、2つ以上の台風が接近して存在している場合、それらが互いに影響を及ぼして複雑な動きをするケースもあります。この相互作用は、1921年にその存在を提唱した当時の中央気象台所長・藤原咲平氏の名を冠して「藤原の効果」と呼ばれています。

上記のような要因により、夏の台風は迷走しやすい特徴があります。

夏の台風の特徴

夏は上空の風が弱いため、台風の動きが遅くなる場合も多く、大雨や暴風が長期化しやすい傾向があります。

特に、大雨をもたらす強い台風が接近した際に、台風の動きが遅いと総雨量が多くなります。総雨量が多くなることで、土砂災害や洪水、浸水害などの災害リスクが高まるのです。

また、強風や暴風、高潮災害なども長期化するおそれがあり、ライフラインや交通機関への影響も長引く可能性があります。

夏の台風はもともと暑い空気に覆われており、熱帯の暖かな空気を供給します。そのため、気温が上がりやすくなり、熱中症のリスクが高まることも特徴です。

夏の台風の発生・接近・上陸数

以下の表では、2000年~2024年の5月~11月における台風の発生数・接近数・上陸数を年平均で示しました。

気象庁は6月・7月・8月を「夏」と定義しており、夏の台風はこの時期に発生した台風を指します。ただし、9月以降でも夏の高気圧や偏西風の位置により、台風が迷走する場合もあります。

1年間の中で、台風の発生数・接近数・上陸数が多いのは7月~10月で、特に8月~9月が多くなっていることがわかります。

夏の台風の事例紹介

ここからは、過去に発生した“夏の迷走台風”の事例をいくつか紹介します。

① 2016年8月21日~8月31日/台風10号

四国の南で発生した台風10号はいったん南下し、そのあとは北東に進路を変えながら北上し、暴風域を伴ったまま岩手県に上陸しました。その後、東北北部を通過し北海道西部の日本海に抜けるという珍しい進路をたどっています。

なお、2016年の台風10号は気象庁が1951年に統計を開始して以来、初めて東北地方に上陸した台風です。東日本から北日本を中心に広範囲で大雨や暴風をもたらしました。

② 2018年7月25日~8月3日/台風12号

2018年に発生した台風12号は、紀伊半島に上陸した後、西側に進み近畿、中国、九州を横断。7月30日にはいったん東シナ海に抜けましたが、そのあとも九州南部で停滞・旋回する複雑な進路をたどっています。

なお、関東地方は日降水量200mmを超える大雨となり、東海地方や伊豆諸島では猛烈な風を観測しました。

③ 2024年8月22日~8月30日/台風10号

出典:気象庁「台風経路図」

2024年に発生した台風10号は九州に上陸後、ゆっくりとしたスピードで四国付近を横断し、東海道沖に進みました。その後、熱帯低気圧に変わった後も再び上陸。東海地方へと進んでいます。

台風10号は動きが遅く、西日本から東日本の太平洋側を中心に大雨となりました。総降水量は東海地方や九州南部で900mmを超え、鹿児島県では猛烈な風も観測しています。

夏の台風に備える3つのポイント

夏の台風に備えるポイントは以下の3点です。

・夏の台風は予想外の動きをする場合がある。普段は台風被害が少ない地域でも注意が必要

・災害が長期化しやすいため、備蓄品を多めに準備しておく

・停電を想定した熱中症対策を行う

2016年の台風10号が、観測史上初めて東北地方に上陸したように、夏の台風は過去に例がない複雑な動きをみせることがあります。そのため、普段は台風被害が少ない地域でも、予報円に入っている場合は十分に注意が必要です。

また、台風の動きが遅くなることで災害が長期化するリスクもあります。飲料や食料などの備蓄品を1週間分以上用意するなど、備えておきましょう。

夏の台風は気温が高く、大雨や強風の影響で停電が発生すると冷房が使えなくなる可能性もあります。冷凍庫に保冷剤や水を凍らせたペットボトルをストックしたり、乾電池式のハンディファンを用意したりと、夏の高温時の停電を想定した熱中症対策を事前に行いましょう。

〈執筆者プロフィル〉

田頭 孝志
防災アドバイザー/気象予報士
田頭気象予報士事務所。愛媛の気象予報士・防災士。不動産会社の会員向けの防災記事、釣り雑誌にコラムの連載・特集記事の執筆、BS釣り番組でお天気コーナーを担当したほか、自治体、教育機関、企業向けに講演を多数、防災マニュアルの作成に参画。

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