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地上波連ドラ初主演・なにわ男子メンバー“等身大のダメ男…どこにでもいそうなリアリティ感に集まる”安心感と共感”

  • 2025.7.23

ホラーを覚悟して再生したのに、気がつけば笑っていた。そんな視聴体験をくれるのが、藤原丈一郎主演の深夜ドラマ『ロンダリング』だ。主人公・緋山鋭介(藤原丈一郎)は売れない俳優。彼には「この世に未練を残す死者の声が聞こえる」という不思議な力がある。ある日、ひょんなことから天海不動産の社長・天海吾郎(大谷亮平)に拾われ、「事故物件ロンダリング部門」のスタッフとして働くことに――。設定だけ聞けばかなり重い。事故物件、幽霊、死者の声……それでもこのドラマが“ゆるい”。なんとも言えない温度感で笑わせ、でもときどきホロリとさせる不思議な魅力を放っている。

※【ご注意下さい】本記事はネタバレを含みます。

藤原丈一郎の“ゆるヒーロー”っぷりが絶妙

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『ロンダリング』第2話より(C)カンテレ・フジテレビ

本作で地上波連続ドラマ単独初主演となる藤原丈一郎。なにわ男子としてのアイドル活動でも注目を集める彼だが、本作で演じる緋山は完全に「等身大のダメ男」だ。自称・俳優ではあるが仕事に恵まれておらず、オーディションにも落ちまくっている様子。

そんな彼が、社長の命令で事故物件に住み込んでは、心霊トラブルを解決していく。物件に潜む“ワケあり”幽霊たちの正体や背景が、少しずつ明かされていく過程が心地よい。

藤原の演技は、飾らない。それでいて、緋山の人間臭さをしっかり表現している。怒る、嘆く、困る、泣く――喜怒哀楽の変化がとても自然で、観る者をドラマのなかへ引き込む。彼の演じる緋山は、まさに「どこにでもいそうなダメな人」。でも、そのリアリティが、視聴者に安心と共感を与えるのだ。

“社長”大谷亮平との凸凹コンビもクセになる

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『ロンダリング』第3話より(C)カンテレ・フジテレビ

緋山に仕事を依頼する天海社長を演じるのは、大谷亮平。彼の演じる天海は、どこか飄々としていて胡散臭い。だがその胡散臭さがこのドラマの“笑いの導火線”になっている。

死者の声が聞こえるという緋山の能力を、自分の不動産ビジネスに都合よく使おうとする天海社長。その関係性が、いわゆる「上司と部下」ではなく、詐欺師と子分のような軽妙さがあっておもしろい。

会話劇のテンポもよく、ふたりのやり取りがいちいち小気味よい。重たい題材のはずなのに、なぜか観終わったあとに笑っている自分がいる。この不思議な軽さこそが、『ロンダリング』の大きな魅力だ。

そして、物語を引き締めているのが、橋本涼演じる謎の男・P.J.の存在だ。彼の正体は未だ不明だが、物語の端々に登場しては、意味深な発言を繰り返して存在の後味を残していく。

P.J.の登場によって“連続ドラマ”としての軸もきちんと保たれている点が秀逸だ。彼の言動や背景が徐々に明らかになるにつれて、ドラマはコメディの枠を超えて、ミステリーやヒューマンドラマとしての深みを増していく。

コメディに潜む“死”と“生”のメッセージ

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『ロンダリング』第3話より(C)カンテレ・フジテレビ

このドラマのもうひとつの美点は、「ゆるいのにメッセージ性がある」ことだ。事故物件の背景にある死。幽霊として語られる死者の無念。その一つひとつに、実は生きる人間のやるせなさや悲しみが滲んでいる。

「人はなぜこの世に未練を残すのか」「死んでも伝えたい想いとは何か」――緋山が幽霊たちと関わるたびに、そうした問いが浮かんでは消えていく。

『ロンダリング』は、ホラーでもない、完全なコメディでもない。シリアス一辺倒でもなければ、ファンタジーでもない。すべてをちょっとずつ混ぜ合わせたような、絶妙なバランスで成り立っている。

今後、P.J.の正体や緋山の過去、そして“ロンダリング”という仕事の本質がどのように描かれていくのか。深夜ドラマならではの遊び心と、藤原丈一郎の等身大の演技が光る癖になるドラマとして、注目していきたい。


カンテレ制作・フジテレビ系列 ドラマ『ロンダリング』毎週木曜 深夜0:15

ライター:北村有(Kitamura Yuu)
主にドラマや映画のレビュー、役者や監督インタビュー、書評コラムなどを担当するライター。可処分時間はドラマや映画鑑賞、読書に割いている。X(旧Twitter):@yuu_uu_