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まるで朝ドラ?「今年のドラマで一番」「完成度が高い」テンポの良く描いた“リアルな終活”が話題に【NHK土曜ドラマ】

  • 2025.7.16

「結婚しないまま年を取ったらどうなるんだろう?」「親の介護や老後、誰が面倒を見るの?」そんな現代的な問いに、コミカルかつシビアな視点で切り込むのが、2025年7月スタートのNHKドラマ『ひとりでしにたい』だ。主演は綾瀬はるか、脚本は『あさが来た』の大森美香。舞台は終活をテーマにした新しい人生ドラマだが、SNS上では「現代社会の問題が詰まってる」「毎度考えさせられる」「多彩な表現が駆使され完成度が高い」「今年のドラマで一番に躍り出たかも」と話題になっている。

終活をテーマにした異色の人生ドラマ

原作はカレー沢薫による同名漫画。物語は、独身OL・山口鳴海(綾瀬はるか)が伯母の孤独死をきっかけに「終活」について考え始めるところから始まる。

婚活やマッチングアプリで結婚相手を探すも上手くいかず、「ひとりで生きる」「ひとりで死ぬ」ことを前向きにとらえる姿勢へとシフトしていく鳴海。その過程で描かれるのは、ただの独身女性の奮闘記ではない。親世代との世代間ギャップや、介護、熟年離婚といったより広い社会問題だ。

とくに注目したいのは、鳴海の両親・和夫(國村隼)と雅子(松坂慶子)との関係性。父・和夫は「介護が必要になったら娘が実家に戻ればいい」と考えているが、それを見た鳴海が「それはちょっと違う」と思うプロセスには、現代のリアルが詰まっている。ただでさえ、自分ひとり生きていくのも精一杯な若い世代が増えている現代、共感する視聴者も多いのではないだろうか。

「結婚しない」「ひとりで生きる」をどう描くか?

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『ひとりでしにたい』6月21日放送 (C)NHK/テレビマンユニオン

鳴海は35歳、趣味は推し活というイマドキの独身女性だ。仕事もそれなりに充実しており、とくに恋愛をしたがっているわけでも、結婚したがっているわけでもない。そこに「親の老後」「自分の終活」といった課題が突如降りかかる。

親世代との終活温度差を描く3話の展開は、とくに考えさせられるはずだ。

たとえば父・和夫の「自分が倒れたら娘が仕事を辞めればいい」という考え方。昭和的ともいえるその価値観に対し、鳴海は「それでは自分の人生がなくなる」ときっぱり否定する。一方で母・雅子は、密かに熟年離婚を考えていたり、亡き伯母との因縁があったりと、単なる家族ものに留まらない深みを与えている。

『ひとりでしにたい』のおもしろさは、婚活と終活をひとつの線でつなげているところだ。

最初は孤独死が怖くて婚活を始める鳴海だが、途中で気づく。「誰かと一緒に死にたいわけじゃない」と。結婚しない=不幸、という価値観はもはや古い。仕事や趣味、自分らしい生活を大切にしながら、いざというときのために準備を整える。それが「終活」だとこのドラマは伝えている。

葬儀会社で働いた経験がある筆者から見ても、この描写はリアルだ。実際、生前から自分の葬儀や身辺整理を進める高齢者は珍しくない。配偶者がいても、いなくても、自分の最後は自分で決める。その意識こそが、いまの時代に沿っている生き方なのだと感じる。

綾瀬はるか×佐野勇斗のバディ感

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『ひとりでしにたい』7月12日放送 (C)NHK/テレビマンユニオン

重くなりがちなテーマだが、脚本家・大森美香の手腕でうまく笑える場面も多い。たとえば、鳴海が那須田(佐野勇斗)とともに実家へ行き、両親に終活の話を持ちかけるシーン。「親が元気なうちから準備を進めるのがいい」とわかっていても、いざ本人たちに言うのは難しいもの。そんな葛藤を描きつつ、どこかクスッとできるテンポの良さもある。

綾瀬はるか演じる鳴海と、佐野勇斗演じる那須田のコンビもこのドラマの魅力のひとつだ。

佐野勇斗は、さわやかな好青年役だけでなく、今作では「ちょっと冷静すぎる年下同僚」としてのポジション。大人びた雰囲気をあわせ持った風貌で、鳴海との会話シーンにもしっかりとした説得力を滲ませている。

佐野は共演者とのアンサンブルが得意な俳優としても知られており、本作でもその持ち味が活かされている。國村隼演じる和夫と向き合い、「終活には何よりも情報収集が大事」と諭すシーンも印象深い。

このドラマが教えてくれるのは、終活とは単に死に向かう準備ではなく、自分らしく生きるための選択でもあるということ。結婚するもしないも、家族と過ごす時間も、すべては「どう生き、どう死にたいか」を問い直すきっかけになる。

SNS上では「現代社会の問題が詰まってる」「毎度考えさせられる」「多彩な表現が駆使され完成度が高い」「今年のドラマの中で一番に躍り出たかも」という声が早くも挙がっている。リアルな課題と向き合いながらも、クスッと笑える。そんな新しい朝ドラ的土曜ドラマとして、『ひとりでしにたい』は幅広い世代に響く一本になるはずだ。


NHK 土曜ドラマ『ひとりでしにたい』 毎週土曜よる10時放送
NHKプラスで見逃し配信中

ライター:北村有(Kitamura Yuu)
主にドラマや映画のレビュー、役者や監督インタビュー、書評コラムなどを担当するライター。可処分時間はドラマや映画鑑賞、読書に割いている。X(旧Twitter):@yuu_uu_