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登場すると空気が変わる…!大人気バンド・ドラマーの“体当たり女優”、第1話で見せた“新たな顔”【日10ドラマ】

  • 2025.7.10

バンド「ゲスの極み乙女。」のドラマー“ほな・いこか”として知られるさとうほなみ。表現力豊かな彼女が、女優としてまたひとつ、新しい顔を見せているのが、7月6日(日)より放送開始された、テレビ朝日系 日10ドラマ『こんばんは、朝山家です。』だ。本作で彼女が演じているのは、中村アン演じる朝子の仕事仲間にして、公私ともに信頼を寄せる映画プロデューサー・則元桐子。これまでの「体を張ってきた女」というイメージを良い意味で裏切る、等身大で信頼感あふれるバリキャリ像が、多くの視聴者にとって新鮮な驚きをもたらしている。

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(C)SANKEI

「体当たり」から「地に足のついたプロ」へ

さとうほなみの女優としてのキャリアは、一貫してチャレンジングだった。『あなたがしてくれなくても』で演じた三島結衣花のように、感情を剥き出しにするような体当たりの演技や、『花腐し』で二人の男性から思いを寄せられる難役など、常に一歩踏み込んだ“濃い”キャラクターを見事に演じ切ってきた。

しかし『こんばんは、朝山家です。』の則元桐子は、そんな彼女の過去作とは一線を画す存在だ。

桐子は、朝子が信頼する仕事仲間であり、朝子の夫・賢太(小澤征悦)の映画監督デビューを応援するプロデューサー。脚本の提案にも親身になり、「キャスト次第で通せると思う」と真剣に受け止めるなど、まさに味方であり支え手の役回りだ。

きびきびと働き、冷静かつ誠実に物事を進めるその姿は、これまでの挑発的な役柄とはまったく異なる。だからこそ、視聴者の多くが「このさとうほなみ、見たかった!」と感じたのではないか。芝居の説得力が、明らかに一段深まっているのだ。SNS上でも、これまでどこか危なげな役が多かった彼女に対して「このドラマでは信用できる……?」という声も挙がっている。

「この役をさとうほなみが演じたら?」という信頼感

さとうほなみの演技の魅力は、なんといっても“なりきり力”と“空気感”のつくり方にある。どんなにクセの強い役柄でも、彼女が演じると浮つかない。それは、バンド活動やモデル経験を通じて培われた豊かな表現力に加え、人間の裏表や感情の綾を丁寧に掬い取る繊細な観察眼があるからだろう。

台詞よりも、呼吸や視線、仕草といった行間に宿る感情が巧みで、それが「この役をさとうほなみが演じたらどうなるか」を想像させる。

本作でも、桐子という「普通に仕事ができる大人の女性像」をきっちりと具現化している。その普通さのリアリティがまた良い。

たとえば、朝子が夫のために持ち込んだ映画企画に対し、なんとかして実現の可能性を探っていくプロデューサーとしての立ち回り。そこには、仕事と友人、夢と現実の間でゆれる現代女性が共感できる息遣いがあった。

新しい「大人の女性」像の提示

『こんばんは、朝山家です。』では、桐子というキャラクターに、さとう自身の「飾らない、でもブレない」人間性が滲み出ているように思える。だからこそ、朝子との友情にも説得力があり、プロデューサーとしての言葉に重みがある。家庭でも職場でもバタバタな朝子にとって、桐子の存在がどれだけ貴重か。それが画面越しにも伝わってくる。

これまでテレビドラマで描かれてきたバリキャリ像は、しばしば「冷たくて強い女」になりがちだった。しかし、さとうほなみが演じる桐子はちがう。しなやかで、人情味があって、仕事もできて、周囲にもちゃんと目を配れる。

理想というよりも「実際にこういう人っているよね」と思わせてくれる現実味のある女性であり、それこそが、いまこの時代に求められる新しい大人の女性像なのではないだろうか。ひとたび登場すれば、画面の空気が変わる。そんな稀有な存在感を放つ俳優は、そう多くはない。

彼女の女優としてのキャリアは、まだまだ拡張途中だろう。いま以上にコミカルな役も、いま以上にシリアスな役も、どちらにも振れる振り幅を持つ。だからこそ、ますます彼女の存在に注目してしまうのだ。


ライター:北村有(Kitamura Yuu)
主にドラマや映画のレビュー、役者や監督インタビュー、書評コラムなどを担当するライター。可処分時間はドラマや映画鑑賞、読書に割いている。X(旧Twitter):@yuu_uu_