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NHK大河の“画面の隅”にそっと置かれたこだわり「だからOPにも」「そうだったんだ」出演女優が明かした“粋な計らい”

  • 2026.3.7
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『豊臣兄弟!』1月4日放送 (C)NHK

大河ドラマ『豊臣兄弟!』で白石聖が演じているのは、仲野太賀演じる小一郎の幼なじみで、後に恋人となる直。爽やかさのなかにも凛とした心の強さが際立つ女性で、男勝りな面がありつつも、気さくな言葉の裏には一途さが宿る。NHK情報番組『あさイチ』のプレミアムトークに出演した白石は、小一郎・直と、池松壮亮演じる小一郎の兄・藤吉郎の三人を繋ぐキーアイテムを始め、大河の裏側に言及した。

※以下本文には放送内容が含まれます。

少年漫画のようなワクワク感

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『豊臣兄弟!』1月4日放送 (C)NHK

『豊臣兄弟!』の冒頭には、どこか“少年漫画の第1話”を思わせる匂いが漂う。『あさイチ』プレミアムトークに出演した白石も、その点について触れた。貧しさも理不尽も、まだ物語の輪郭としては柔らかく、これから世界が広がっていく予感だけが、物語の空気を軽くしている。

小一郎・藤吉郎・直。幼なじみの距離感は、近すぎて、だからこそ言葉にできない気持ちも秘めている。

白石いわく、直は“男勝り”な気質がある。しかし、その荒さは弱さの裏返しで、根本にあるのは、まっすぐすぎる一途な乙女心だ。いちばん効いているのは、初登場から一貫して漂っていた、お互いに好きだけれど、付き合うまではいかない絶妙な間。言えない、触れない、でも離れられない……そんな未完成さが、直という人物を瑞々しく見せている。

だからこそ第2話ラスト、三人が中村を旅立ち清洲へ向かう場面は、ただの出発ではない。未来へ向かう足音に混じって、置いていかれる“日常”の湿度が後をひく。まさに少年漫画のような、これから冒険が始まっていくワクワク感が、今後の物語を方向づけているようだ。

直はヒロインとして前に立つというよりも、物語の横で、小一郎の背中に“いつでも帰れる場所”を貼り付ける役割を担っているように見える。彼女がそこにいるだけで、小一郎の人生は“勝ち負け”だけにならない。

雨のシーンに隠された裏事情

直というキャラクターが“忘れられない存在”になった理由として、桶狭間の戦いを目前に据えた小一郎が、神社の境内で直と話すシーンが挙げられる。

戦に対し及び腰になった小一郎は、直とともに故郷へ帰ろうとするものの、直は受け入れない。雨が降り荒ぶなか、怖気付く小一郎に発破をかけ、背中を押す重要なシーン。最初、二人は神社の境内で会話をしていたが、やがて雨のなかに出ていって雨粒に打たれながら、さらに言葉を交わす。当初から予定にあったシーンではなかったという。

このシーンをよりドラマチックにするには雨に打たれるしかないと、仲野太賀と監督の話し合いで撮影前に急きょ決まったのだとか。

逃げ腰になった小一郎の背中を押す直。必死に、でも祈るように。ここには、台本の行間を役者同士が埋めていく即興の気配がある。正論や説教ではなく、体温で相手を動かす芝居。

いま振り返ると、恐ろしく感じてしまう。この魂の交流とも言える場面が、後の悲劇の予感にすり替わってしまうこと。優しさが強すぎると、そのぶん守りたい気持ちが鋭利になる。直の押す力は、未来へ進ませる力でありながら、同時にある種の“戻れなさ”を決定づけてもいる。

小道具に込められた絆

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『豊臣兄弟!』1月4日放送 (C)NHK

画面の隅にそっと置かれた“こだわり”が、登場人物の心を象徴する。そんな粋な計らいも見え隠れするのが『豊臣兄弟!』だ。

たとえば、直が大切に持ち歩いている巾着に揺れる、手のひらサイズのひょうたん。後の秀吉を思わせるアイテムでもあり、同時に小一郎を表す表象として“かざぐるま”が置かれているシーンもある。つまりこれらの小道具は、彼らの絆を象徴するモチーフなのだ。プレミアムトーク内で白石からこの件が明かされると、SNS上では「だからOPにもかざぐるまが……」「そうだったんだ」という声が溢れた。

このふたつのモチーフが呼応していると知った瞬間、直が退場した意味合いに変化が生まれる。彼女がいなくなってしまったあとも、小一郎の周囲には“彼女がいた痕跡”が残るだろう。人は、失ったものを“記憶”に変えて生きていく。ひょうたんが揺れるその一秒は、直が生きた証拠になる。

実は『私の夫と結婚して』の……

白石といえば、配信されるや否や話題をさらったドラマ『私の夫と結婚して』で江坂麗奈というヒール役を演じ、強烈な印象を残したことも記憶に新しい。

だからこそ『豊臣兄弟!』の直と同一人物だと知ったとき、混乱してしまう視聴者もいたのではないか。実際のところ、この二つの役を演じたのが白石聖だったと今朝知った! と『あさイチ』宛にメールをしてきた視聴者もいたほどだ。

狂気を具現化したような麗奈と、戦国をまっすぐに生きた直。共通点はないように思えるが、白石がプレミアムトーク内で麗奈について語る際に使用していた“見捨てられ不安”という言葉が鍵になるかもしれない。

不安を武器にして相手を縛る麗奈。直も直で、自分の存在が小一郎の足枷になるのでは、と常に不安を抱えていた。明るく天真爛漫で、でもふと繊細な一面が垣間見える。その一瞬に気づいたとき、視聴者もまた小一郎のように、彼女のことを守らねばと思ってしまうのだろう。


NHK大河ドラマ『豊臣兄弟!』毎週日曜よる8時放送
NHK ONE(新NHKプラス)同時見逃し配信中・過去回はNHKオンデマンドで配信

ライター:北村有(Kitamura Yuu)
主にドラマや映画のレビュー、役者や監督インタビュー、書評コラムなどを担当するライター。可処分時間はドラマや映画鑑賞、読書に割いている。X:@yuu_uu_