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村上春樹の「オムレツ」や、森茉莉の「シュウクリイム」など、文豪たちの「おいしい」を集めた、食で楽しむ名作紹介コミックエッセイ【書評】

  • 2026.10.12

【漫画】本編を読む

読書中、作中に登場する料理やスイーツの描写から想像が大きく膨らみ、思わずお腹が鳴ってしまった経験はないだろうか。『ハラヘリ読書』(宮田ナノ/KADOKAWA)は、古今東西の文学作品で描かれる魅力的な食べ物を、大の食いしん坊を自称する著者・宮田ナノ氏が紹介していくコミックエッセイである。

取り上げられる作品は、近代文学から現代の小説、児童文学まで多岐にわたる。例えば、森茉莉がエッセイで綴った贅沢な「シュウクリイム」や、内田百閒の随筆などに登場する味わい深い「おかうこ(たくあん)」、村上春樹がエッセイで描いたシンプルな「オムレツ」、森見登美彦の小説に出てくる芳醇な「ラム酒」など、どれも大いに食欲が刺激される、魅力的なものばかり。そして宮田氏は、作中の食べ物をピックアップしているだけでなく、文豪たちの独特な言い回しをマネしながら「森茉莉ごっこ」などに興じるなどして作品世界と料理を全身で味わっているため、ほかにはない説得力を感じられるのだ。

さらに面白く感じたのが、食べ物を前にした文豪たちを見ることで、彼らへの印象が大きく変わることだ。教科書などに登場し、別世界の遠い存在のように思っていた文豪たちが、何に心を躍らせ、どんなものに胃袋を掴まれていたのかが分かるので、ぐっと身近な存在に思えてくるのである。そして単なる料理紹介にとどまらず、「この料理を食べるシーンがなぜこんなにも心に残るのか」という宮田氏独自の考察によって、文豪や作品に対する興味をさらに深めてくれるのである。

読んだことのある作品なら「分かる」と頷け、未読の作品なら「今度読んでみよう」と思わせてくれる。そして、これまで自分が読み、印象的だった作品に登場する食べ物が思い出され、あらためて読み返したくなるだろう。

本をじっくり読みたくなり、そしておいしいものを食べたくなる。そんなふたつの欲を刺激する、文学と食をつないだ作品である。

文=坪谷佳保

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