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結婚と同時に芸能界を“電撃引退”。コンサル会社で2年の会社員生活→復帰した【イケメン俳優】

  • 2026.10.11
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2007年12月、テレビ東京系ドラマ「恋愛診断 翼のカケラ」DVD発売記念イベントに出席した柳下大(C)SANKEI

20年前の2006年9月、ワタナベエンターテインメントの若手俳優集団「D-BOYS」に、ひとりの新星が加わることになった。第3回D-BOYSオーディションの最終審査でグランプリに輝いたのは、当時18歳の柳下大(やなぎした・とも)。審査の場で彼が披露したのは、特技のヒップホップダンスだった。

俳優として14年間を駆け抜け、一度は芸能界の表舞台から身を引いた柳下だが、引退を伝える言葉のなかにも、そして再挑戦を誓う復帰の言葉のなかにも、あの2006年のオーディションが刻まれていた。踊ることでエンターテインメントの扉をこじ開けたあの日を、彼は人生の原点として数え続けているように見える。

そして迎えた2026年。彼は、つかこうへいの作品が再演を重ねてきた紀伊國屋ホールの舞台に立っていた。しかも、その役どころはダンサーだった。

ダンスを武器に熱気あふれる集団に飛び込んだ18歳

2006年9月3日に行われた最終審査では、会場のファン投票で1位を獲得した22歳の牧田哲也が準グランプリ、三好真が雑誌『smart』賞に輝いた。そのなかで頂点に立ったのが柳下だった。

当時のD-BOYSはまさに熱気の只中にあった。城田優が主演映画などで頭角を現し、遠藤雄弥は月9ドラマ『のだめカンタービレ』への出演を控え、柳浩太郎はミュージカル『テニスの王子様』で主演を務めてきた。先輩たちがテレビや映画、舞台へと活躍の場を広げていくなか、ダンスを特技とする18歳の少年がその輪に飛び込んだのだ。

勢いは止まらず、柳下はその年のうちに『テニスの王子様』3代目青学・海堂薫役に抜擢される。オーディションを制した少年は、息つく間もなく、その舞台に立つことになった。

つかこうへいとの邂逅と役者生命の危機

キャリアを重ねるなかで、柳下にとって長い縁となったのが、劇作家・つかこうへいの作品との出会いだ。2011年の『熱海殺人事件』で犯人・大山金太郎を演じ、その後も『いつも心に太陽を』など、つか劇の世界に身を浸していった。

順風満帆に見えたキャリアに大きな試練が訪れたのは、2015年1月のこと。舞台『真田十勇士』の再演本番中に靭帯を損傷。翌月以降も板の上に立ち続けたが、同年7月に手術を余儀なくされた。

人生初の大怪我に、前のように動けるようになるのか、役者を続けられるのかという不安も抱えた。入院中は、この仕事の厳しさを思い、自分が今後もやっていけるのかと葛藤する日々が続いた。

その不安をぬぐい去ったのは、周囲の温かい支えだった。翌2016年2月、信頼を寄せる宮田慶子演出の主演舞台『オーファンズ』で復帰することが決まると、彼は「精神的にも人間的にも成長した柳下大を見せたいと思います」と、彼は決意を新たにしていた。

会社員生活と再挑戦

2020年9月30日、柳下はブログを通じ、所属事務所の退社と芸能界からの引退を発表した。2006年9月のオーディションでのデビューから、丸14年を数えた日だった。

引退の理由として綴られたのは、自分自身に感じた限界、ほかのことにも挑戦したいという気持ち、そして家庭を持ちたいという思い。同時に一般女性との結婚も明かされた。

引退後はコンサルティング会社に就職し、2年間にわたって会社員として社会と向き合った。しかし、表現への情熱が完全に潰えることはなかった。2023年末には「クオッカーズ」の名で舞台のプロデュース事業を始めると発表。表舞台から作品を創り出す裏方へと立場を変え、旗揚げ公演『バンブー・サマー2024』に向けて「若手が輝ける場所を提供できるように」とコメントした。

そして2024年9月、自身のInstagramで俳優への復帰を宣言する。

ここでも彼は、2006年にD-BOYSの一員として産声をあげたあの日から筆を起こしていた。仲間と厳しく競い合いながら駆け抜けた14年で一度ピリオドを打ち、ビジネスの現場に身を置くなかで、自分の中に眠る可能性に改めて気づいた。再挑戦を1からのスタートと書き、彼は再び表現の海へと漕ぎ出した。

20年目の紀伊國屋ホールで円環を描くように

復帰後の歩みは、まるでこれまでのキャリアが円環を描いて結実していくかのようだ。

2026年2月から紀伊國屋ホールで上演された、つかこうへい十七回忌特別公演『熱海殺人事件』ラストメッセージで、柳下の役どころは「爆弾キャスト・ダンサー」だった。

15年前に大山金太郎を演じた青年が、20年前のオーディションで未来を切り拓いた特技、ダンスの名を冠した役で、同じ作品の全公演に名を連ねた。かつての軌跡が、これ以上ない形で重なり合った。

勢いは舞台だけにとどまらない。2026年7月にはフジテレビのドラマ『さよならノワール』第1話に小西悠介役で出演。さらに同年11月には、紀伊國屋サザンシアターで2本立てで上演されるつかこうへいの革命ミュージカル『飛龍伝』と『幕末純情伝』の両作への出演が控えている。近年のつか作品で、柳下はいまやおなじみの顔になっている。

18歳のあの日、オーディションの舞台でヒップホップを踊った少年は、そのあと華やかな脚光も大怪我も知り、一度は看板を手放し、会社員生活を経て戻ってきた。

柳下大という表現者が歩んできた道は、決して平坦な一本道ではなかった。引退と復帰の節目に彼があの2006年のオーディションを書き記したのは、単なるノスタルジーではなく、なぜ自分は表現するのかという原点の熱を確かめるための儀式だったように思う。

酸いも甘いも噛み分けた30代後半の肉体と表現力で、11月のミュージカルの舞台にどのようなステップを刻むのか。客席の明かりが落ちるときが、今から待ち遠しい。


※記事は執筆時点の情報です

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