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「子どもがお腹すかせてるの」旅館の朝食でオムレツの列に割り込んだ女性。だが、先に待っていた父親が静かに伝えたこと

  • 2026.10.4

朝食会場でできていた、オムレツの長い列

私がまだ20代だったころ、当時つき合っていた彼と、手ごろな値段の旅館に1泊したことがあります。

朝食はバイキング形式で、会場は家族連れでにぎわっていました。

なかでも人気だったのが、目の前でオムレツを焼いてくれるコーナーです。

台の向こうでは、白い調理服を着た料理人が、フライパンを使って1つずつ焼いていました。

その前には列ができていて、私と彼も中ほどに並びました。

私たちのすぐ前には、30代くらいの父親と5歳くらいの男の子がいました。男の子は台のほうを何度ものぞきながら、父親に聞いています。

「あと何人?」

「もうちょっとだよ。いいにおいしてきたね」

男の子は待ちきれない様子でしたが、父親のそばでおとなしく順番を待っていました。

そこへ、40代くらいの女性が列の横を早足で歩いてきました。

女性は長い列をちらりと見ると、そのまま先頭まで進み、料理人に声をかけたのです。

「子どもがお腹すかせてるの。先に1個だけ焼いて」

「並んでますよ」と言われても動かない女性

先頭にいた年配の男性が、戸惑った様子で声をかけました。

「あの、みんな並んでますよ」

ところが女性は、その場を離れません。

「1個だけよ。すぐ済むじゃない」

列に並んでいた人たちは顔を見合わせました。私も彼と目を合わせましたが、何と言えばいいのか分かりません。

私たちが並び始めてから、すでに10分ほどたっていました。

料理人が対応に迷ったように手を止めると、女性はさらに急かしました。

「お願い、早くして。子どもが待ってるのよ」

そのとき、私たちの前にいた父親が男の子の手を握ったまま、列から少しだけ身を乗り出しました。

「うちの子もお腹すいてますよ。でも、ずっとここで待ってます」

女性が振り返ります。

父親は声を荒らげることなく、続けました。

「子ども連れは、ほかにもいますから」

その言葉に、女性は周囲を見回しました。列には、同じように家族と一緒に待っている子どもたちが何人もいます。

少しの沈黙のあと、料理人も女性に声をかけました。

「申し訳ございません。順番にお焼きしていますので、最後尾からお並びいただけますか」

女性はしばらく黙っていましたが、それ以上は何も言わず、列の横を歩いて最後尾へ向かいました。

父親も何事もなかったように男の子の隣へ戻ります。

「もうすぐだよ」

そう声をかけられた男の子は、またオムレツの台を見ながら待っていました。

やがて私たちの番も来て、焼きたてのオムレツがお皿にのりました。

席に戻ると、彼が小さな声で言いました。

「さっきのお父さん、落ち着いてたね」

大声で責めたわけでも、女性を言い負かそうとしたわけでもありません。ただ、自分の子どもも同じように待っていると伝えただけでした。

その一言があったからこそ、女性も周りの状況に気づいたのかもしれないと感じた出来事です。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた30代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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