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京都の中心部からちょっと離れたところで、"移転組"の進化を垣間見た[門上武司さん今月のおすすめ]

  • 2026.10.11
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門上武司さん、秋山都さん、山路美佐さん、森脇慶子さん他、食通のジャーナリストや編集者が毎月ひとつのテーマから着想した3軒をまとめてご紹介する小誌連載「ガストロノミーの杜 極私的店案内」。

今回はフードコラムニストの門上武司さんが、京都の3店をご紹介します。

空間が変わり、料理が変わる。その相乗効果が素晴らしい

今年に入ってから、京都の飲食店で注目すべき"移転"がありました。

まずは日本料理の「研野(けんや)」。岡崎にあったカウンターだけの割烹から、高野川沿いの一軒家へ移りました。門をくぐり玄関まで、耳を澄ますと高野川のせせらぎが聞こえます。もはや料亭の佇まいです。カウンターと座敷に分かれた空間には、掛軸や花がこまやかに配されています。「日本の文化や伝統を、料理を通して伝えてゆくのが私たちの仕事です」と語る主人の酒井研野さんの心意気が店の隅々まで行き渡っています。

料理は割烹時代のライブ感と醍醐味を生かしたものがコースに上手く取り入れられ、先付の銀杏や枝豆を熱々の状態で出しつつ、八寸では、華やかに季節感を伝えます。

Kunihiro Fukumori

もう一軒はリストランテ「MUTA CHIMERA」。18年間続けた祇園から蹴上に移転し、カウンターのフルオープンキッチンという新たなスタイルに。「パスタはすべてお客さまの目の前で手打ちして仕上げます。目の前で麵を打つ姿をご覧になったことのある方は少ないようで、皆さん興味津々です」と語るオーナーシェフの筒井光彦さん。以前にも増して、料理に迫力が出てきました。

そして、御所の横の小さな路面店から関西日仏学館内の瀟洒な空間へと移転した「Droit」。オーナーシェフの森永宣行さんは「天井が高く、広々としたこの白い建物の空間から着想を得たひと皿です」と、爽やかなソースをまとったオマール海老の料理を出しました。シェフはメインの食材にどんなソースを合わせるか常に考えています。伝統的なソースで現代的な軽やかさを表現し、新たな場所でクラシカルな世界観を守った味わいを追求しています。

今回の3軒は、いずれも「京都の中心部からやや離れた場所へ移転」しています。店へ向かう道中の情景や建築空間までゆったりと楽しめるようになり、料理の伝わり方も自然と変わりました。それまで立地と空間の制約で実現できなかった店主の理想を形にすることで、店の価値そのものが一段引き上げられたようです。

Kunihiro Fukumori

「研野けんや」(京都・宝ヶ池)

閑静な一軒家で着想された、華やかな料理を楽しむ

高野川のほとりに建つ明治期の旧邸宅を改装した空間に身を置けば、凜とした空気感に浸ることができます。料亭と割烹のよさを堪能できるスタイルは、今後の日本料理のあり方を示唆しているようです。写真の八寸は、鱧寿司、うなぎの八幡巻、自家製からすみ大根、子持ち鮎、柿なます、新いくら、鯛の酒盗和え。

DATA
コース昼22,000円、夜33,000円。
営業時間/12時〜、18時〜(ともに一斉スタート)
定休日/日・月曜、火曜の昼
tel.075-708-6800
Google mapで確認
京都府京都市左京区上高野下荒蒔町12‒3

研野

MUTA CHIMERA

「MUTA CHIMERAムータ キメラ」(京都・岡崎)

シェフの躍動感が伝わる、オープンキッチンスタイルのイタリアン

食材ひとつひとつに対する真剣な姿勢に、シェフの凄みを感じます。例えばメインに使われる七谷鴨は、筒井シェフと生産者が餌の配合から相談して作り上げた逸品。すべてのパスタを手打ちで仕上げる姿に目を奪われます。写真は「アオウミガメとジロール茸のグリーンパッパルデッレ」(夜のコースの一皿)。

DATA
コース昼13,200円~、夜22,000円(ともにサ別10%)。
営業時間/12時~、18時30分~(ともに一斉スタート)
定休日/月曜(祝日の場合は営業、翌火曜休)、不定休
tel.070-6548-1174
Google mapで確認
京都府京都市左京区粟田口鳥居町51-3

MUTA CHIMERA

Droit


「Droitドロワ」(京都・出町柳)

歴史ある館に移り、伝統的なフランス料理をさらに追求

全世界のフランス政府公式機関の中に、ミシュランの星を獲得しているレストランが入るのは「Droit」が世界で初めて。歴史ある建物の中で、伝統的なフランス料理をどう解釈し表現していくのか?シェフの挑戦は続きます。「オマール海老 ア・ラ・プランチャ 7種の柑橘ソース」(写真)のほか、フランス産の鳩や北海道十勝若牛などを生かしたメイン料理がコースに登場します。

DATA
コース19,800円~。
営業時間/17時~21時(L.O.)
定休日/月・火曜
tel.075-761-2180
Google mapで確認
京都府京都市左京区吉田泉殿町8 関西日仏学館 1F

Droit

教えてくださったのは……

門上武司さん(フードコラムニスト)
かどかみたけし●フードコラムニスト。食にまつわる執筆、編集の業務を中心に、プロデューサーとして幅広く活動。「一般社団法人 全日本・食学会」理事長補佐。「食の都・大阪」推進会議メンバー。料理雑誌『あまから手帖』編集顧問。著書多数。最新刊は『別冊あまから手帖 食べる仕事 門上武司』。

文=門上武司 撮影=福森クニヒロ 編集=平田剛三(婦人画報編集部)

『婦人画報』2026年11月号より

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