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高齢者は1万歩でなくてもいい…84歳の今も毎日1万歩を歩く現役女性医師が勧める「無理なく続けられる歩数」

  • 2026.10.8

元気な高齢者とそうでない人は生活内容にどんな違いがあるのか。84歳の現役医師・天野惠子さんは「長寿の正解は不明だが、短命に終わる理由ははっきりしている」という――。

※本稿は、天野惠子『84歳、現役女医のひとり暮らし』(世界文化社)の一部を再編集したものです。

なぜ人間だけに老後が存在するのか

65歳以上の高齢者は今、総人口の29%(約3600万人)。75歳以上は17%(約2100万人)に達しました(2025年総務省統計局発表)。日本は今、世界的にも例を見ない超高齢社会を突き進んでいます。

【図表】年齢3区分別人口および割合(2025年、2026年) 9月15日現在
出典=総務省「統計トピックスNo.149 統計からみた我が国の高齢者」

ほとんどの動物は、生殖機能の終了とともに死を迎えます。しかし、人間は閉経以降も生き続け、長い老化期間を過ごします。なぜ人間だけに老後が存在するのかといえば、次世代に知恵を伝えるためではないでしょうか。そう思うと、少しでも世の中をよくするために、残りの人生を過ごしていきたいと思うのです。

私がライフワークとして取り組み続けたいのが、性差医療の啓発活動です。男性と女性では病気の現れ方も、薬の効き方も違います。その違いを踏まえた医療の大切さは、残念ながらまだ十分に認知されているとはいえません。そのためには、後進の医師の育成が急務と考え、日々さまざまな活動を行っています。

その啓発活動の一環として、私が長年働きかけてきたのが、「女性の健康ナショナルセンター」の設立です。2024年、国立成育医療研究センター内に、女性の健康総合センターが設立され、日本初の女性の健康課題に特化した専門組織として、女性特有の疾患や性差医療に関する研究開発を推進しています。女性が生涯にわたって健康で活躍できる社会づくりを目指す画期的な組織です。

人生100年時代を支えていくためには、女性のライフステージと性差に着目した意識改革と臨床・研究は不可欠。私は日本性差医学・医療学会創立者として、このセンターの発展のため応援活動を続けるつもりです。

無理なく継続するためのおすすめの歩数

女性の2人に1人は90歳以上まで生きる時代です。でも、ただ長生きすればいいわけではありません。どう生きるかが大事です。私が最も重視しているのは、「歩けるかどうか」。歩けなくなったとたん、生活の自由度は一気に下がります。

多くの調査データでも紹介されていますが、“元気な高齢者”の条件は、よく歩くこと。「歩ける人ほど長生き」というのは医学的にも事実です。よく歩くことは認知機能の維持にも役立ち、週3回以上の早歩き程度の強度の運動習慣のある高齢者は、認知症になるリスクが低いと報告されています(国立研究開発法人国立長寿医療研究センターの調査より)。

私自身、毎日1万歩を目安に、ふだんから積極的に歩くようにしています。歩数を稼ぐために1駅分歩いたり、階段を使ったり。高齢者が無理なく継続するには、一日6000歩程度がおすすめです。

ランニングシューズの女性の足元
※写真はイメージです

適度な運動で体を動かし、今ある能力を維持していくことが大切です。

また、私は愛猫との朝散歩を欠かしませんが、午前中の軽い散歩もいいでしょう。日光を浴びることでセロトニンの分泌が促され、気分が安定しますし、体内でビタミンDの生成を助けますから、骨や筋力の維持、睡眠リズムの改善に役立ちます。一日10分、週2〜3回から無理のない範囲で習慣づけてみてください。

短命に終わる理由ははっきりしている

現在、100歳以上の人口は増えており、10万人に迫る勢いです。百寿者は今や「特別な人だけの世界」ではなく、日々の積み重ねがその未来をつくるといえます。

長生きできる方法の正解はまだありませんが、短命に終わる理由ならはっきりしています。暴飲暴食、過剰な飲酒、喫煙、睡眠不足、生活習慣病の放置、孤立、ストレスです。これらを徹底的に遠ざけましょう。そして、長寿の人に共通しているのは、「まだやりたいことがある」という意欲です。

くめども尽きぬ興味や意欲があり、夢や目標を持つことこそが、生命力を高めます。高齢からの人生において、「もう年だから」「人生のピークは過ぎた」「今さら夢なんて幻想だ」と考えていませんか? しかし、そんなことはありません。

【図表】65歳以上の就業者数の推移(2015 年~2025 年)
出典=総務省「統計トピックスNo.149 統計からみた我が国の高齢者」

私の半生を振り返ってみると、60代から花開いたといっても過言ではなく、それまでは実に苦難の連続でした。医師になるという子どもの頃からの夢は叶いましたが、長年、無給の医局員に据え置かれ、大きな実績も上げられないまま東大を去ったのは、これまで述べたとおりです。

自身の凄絶な更年期体験から性差医療という生涯の研究テーマを得、その第一人者として女性医療の発展に貢献できるようになったのは、ほんの20年前のこと。80代になり、我慢やしがらみ、忖度から解放され、自分の好きなことのために自由に時間が使えるようになった今が、やっとたどり着いた人生の黄金期です。まさに、人生のピークが後半にやってきたといえるのです。

理想や目標…“小さな未来”を持てば道が開ける
天野惠子『84歳、現役女医のひとり暮らし』(世界文化社)
天野惠子『84歳、現役女医のひとり暮らし』(世界文化社)

これからは、老後はのんびり悠々自適にという時代ではなくなり、後半生をいかにセルフマネジメントできるかが大切になってくるでしょう。何歳からでも自分の理想像を掲げ、やりたいことを見つけて日々を過ごすことは、人生の醍醐味。まずは身近なことでいいのです。訪れたかった場所へ旅行する、しばらく会っていない友人と食事をする、新しいレシピに挑戦する……こうした“小さな未来”を持ち続けることが、生きる力を生み出します。

さらに、新しく仕事や勉強を始めたり、ボランティアなどの地域活動に参加したりするのも行動範囲が広がります。ペットを迎えたり習い事を始めたりして、まったく違うコミュニティに参加するのもおすすめです。知らなかった世界や思いもよらない情報に触れることが刺激になって、知的探求心が満たされ、日々が豊かになります。

天野 惠子(あまの・けいこ)
静風荘病院特別顧問
1942年生まれ。循環器内科医。静風荘病院特別顧問。日本性差医学・医療学会理事、NPO法人性差医療情報ネットワーク理事長。東京大学医学部卒業。女性外来・性差医療の先駆者としての功績により令和7年吉川英治文化賞を受賞。

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