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25年前、ハリウッド大作監督に「続編に出て」と誘われた東大卒美女とは?「ミニだから出来ませんけど」

  • 2026.10.15
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2001年11月、東京国際ファンタスティック映画祭に登場した菊川怜(C)SANKEI

25年前の2001年9月、今はなき東京・渋谷パンテオンで、映画『ラッシュアワー2』のプレミア試写会が開かれた。満員の客席を前に、応援ゲストとして壇上に現れたのは、当時23歳の菊川怜である。

来日したブレット・ラトナー監督に花束を手渡すと、監督はその中から一輪を抜き取って菊川へと返し、もし続編を日本で撮るなら出演してほしいと誘った。

大作映画のプレミアらしい、華やかなリップサービス。だが、それに対する菊川の返しが実に小気味よかった。

「今日は、ミニだから出来ませんけど、ケリとかアクションをやってみたいです」と、菊川は監督に返した。

一見すると、機転の利いたユーモアに思える。しかし、当時の彼女の足跡を丹念にたどってみると、この一言は、単なる社交辞令などでは到底片付けられない本気の響きを帯びてくるのだ。

渋谷が中華一色に染まった夜

その晩の渋谷パンテオンは、徹底したお祭り騒ぎだった。

ゲスト用の入口には真っ赤なじゅうたんが敷き詰められ、艶やかなチャイナドレス姿の女性たちがずらりと並んで来場者を出迎える。劇場の正面では、在日中国雑技団によるドラゴン・ダンスが舞った。上映の前には、爆竹代わりのクラッカーが鳴り響くなか、ダンス隊が客席の通路を練り歩いてステージへと上がった。

主演のジャッキー・チェンとクリス・タッカーの来日は叶わなかった。壇上に立ったラトナー監督は、話題が次回作に及ぶと、続編の舞台はアフリカかエジプト、もしかしたら日本になるかもしれないとぶち上げた。

菊川への誘いも、そうしたお祭り騒ぎの延長線上にあった。それだけに、菊川のリアクションの妙が際立つ。今日はミニだからと断りを入れつつも、続けてケリやアクションをやってみたいと口にした。

初めての映画で銃を握った東大出身の才女

世間的な菊川怜のイメージといえば、東大工学部卒の才色兼備であり、知性派キャスターの印象が強いかもしれない。

だが実は、このプレミアのわずか半年前、彼女はすでにアクション映画で主演を飾っていた。2001年3月に公開された日米合作映画『ダブル・デセプション〜共犯者』である。

ロサンゼルスを舞台に、誘拐事件に巻き込まれた富豪の令嬢と元警官の闘いを描く本作で、菊川は事件の渦中に飛び込む令嬢・リサを演じた。これが映画初出演にして初主演だった。

撮影当時は22歳。劇中にはガンアクションやカーアクションが多く、台詞のほとんどは英語。東大在学中にコンテストで優勝した彼女にとって、そのハードルはあまりに高かった。英語より数学のほうが得意だった彼女は、撮影の時は不安でいっぱいだったと後年振り返っている。

あの渋谷のステージでケリやアクションをやってみたいと返せたのは、すでにハリウッド映画のタフな現場をくぐり抜けていたからだと思う。

勢いは止まらなかった。翌2002年には映画『GUN CRAZY Episode-2 裏切りの挽歌』で再び主演。法の無力さに絶望し、弁護士から殺し屋へと身を投じるダークヒロインを演じた。CMの起用社数では、2002年・2003年と2年連続で女性タレントの首位に君臨している。

届かなかった続編と結実した鉄拳

では、あの夜の言葉はどうなったのか。

『ラッシュアワー3』が日本で封切られたのは、プレミアから6年後の2007年8月のことだった。メガホンをとったのは同じくラトナー監督。だが、ジャッキー演じるリー捜査官とタッカー演じるカーター刑事が飛んだ先は日本ではなくパリであり、立ちはだかる強敵・ケンジを演じたのは真田広之だった。キャストに、菊川怜の名前はない。

プレミアの夜の誘いは、やはり宴の幻に終わったのか。そう思われた矢先の翌2008年夏、彼女のアクションへの情熱は、思いがけない形で結実する。

テレビ朝日の金曜ナイトドラマ『打撃天使ルリ』での主演だ。

ごく普通のOLがある日突然不思議な力を宿し、世にはびこる悪を一撃の鉄拳でなぎ倒していくアクションドラマ。それまで平手打ちでも人を殴ったことがなかった菊川は、制作発表の席で、初めはグーで殴るなんてできるかなと思ったと明かした。そのうえで、劇中では「今までにないような形相になっています」と見所を紹介した。

あの渋谷のステージで口にした「ケリとかアクション」から7年。銃ではなく自らの拳を武器に悪を叩きのめすルリの姿は、あの日ラトナー監督に返した言葉が、長い時間をかけてもっとも純度の高い形で具現化したものだったと思う。

一輪の花の先へ

菊川が初めての映画の現場の不安を振り返ったのは、2025年9月に放送のラジオ番組の収録でのことだった。翌10月には、15年ぶりの映画出演で主演した『種まく旅人〜醪(もろみ)のささやき〜』が公開されている。

この作品で演じたのは、日本酒を愛し、淡路島の老舗酒蔵を視察に訪れる農林水産省の官僚・神崎理恵だ。2026年夏のドラマ『キスは捜査のあとで』(ABCテレビ)では、刑事が通うスナックのママ・松雪みすずを演じた。

振り返れば、あの夜に手渡された一輪の花と誘いは、そのままハリウッドへの切符になったわけではなかった。

けれど、「今日は、ミニだから」とかわしながら、アクションをやってみたいと返した23歳の心意気。その前のめりさは、のちに悪を拳でなぎ倒すヒロインへと、地続きで繋がっていたように思う。


※記事は執筆時点の情報です

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