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25年前、女性監督を「いい意味で鬼監督」と評した25歳。“仮面ライダー”出身・人気俳優が、監督デビューを果たすまで

  • 2026.10.15
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2001年9月、映画『プラトニック・セックス』完成会見に出席したオダギリジョー(C)SANKEI

25年前の2001年9月、東京・新橋のホテルで開かれた映画『プラトニック・セックス』の完成報告会見に、当時25歳だったオダギリジョーの姿があった。

100万部を超えるベストセラーになった、飯島愛の半自叙伝の映画化である。メガホンをとった松浦雅子監督、1万人を超える応募者から選ばれた16歳の新人・加賀美早紀、そして原作者の飯島本人が並ぶ場で、ヒロインの恋人・敏海(トシ)を演じたオダギリは、飾らない言葉で撮影を振り返った。

初めてタッグを組んだ女性監督の印象を問われると、彼は「いい意味で鬼監督」と答えた。細かいところまで指導されて「いっぱいいっぱい」だったと明かし、応えられたかどうかも分からないと続けた若き日の姿は、今となってはどこか新鮮に映る。

いまや長編監督作が国際映画祭に選ばれ、プロデューサーとしても作品を支える彼が、かつては演出を受ける側で手いっぱいだった。いつか自分でも監督をしてみたいと思いながら、撮られる側でもがいていた25歳の原点を、当時の言葉から紐解いてみたい。

不器用さを認めて「小芝居」でかわす25歳

オダギリが演じた敏海は、DJを志しながら間違いメールをきっかけにヒロインと惹かれ合い、同棲生活を送る青年だ。いじめを苦に自死した妹への思いを抱え、影を背負いながら生きている。

この役について、オダギリは会見で、現実の自分と共鳴しあえたと語っていた。とても不器用で、不器用だからこそ生きづらさを抱えてしまう敏海の危うさは、当時の自分自身の中にも少なからずあった。

だが、彼がユニークだったのは、そこで役に同化しきらなかった点だ。自分はそこを、ちょっとうまく「小芝居」をからめて人生を進めていこうと思うけれど、敏海にはそこが少し足りない気がすると言葉を継いだ。

役の痛みに寄り添いながらも、ふっと一歩引いて、自分は小芝居で切り抜けるとうそぶいてみせる。弱さをまっすぐ認めつつ、照れ隠しのようにクールな知性を忍ばせる語り口に、すでに彼独自の美学が見える気がする。

相手役の加賀美早紀は、当時16歳の現役高校生だった。オダギリは、撮影が始まる前は何を話せばいいのだろうと思ったものの、いざ撮影が始まると、そうしたギャップは一切感じなかった。

『クウガ』を終えて何色にも染まらない深夜の顔へ

この会見のわずか8か月前まで、彼は日曜朝の顔だった。『仮面ライダークウガ』の主人公・五代雄介を、1年にわたって演じ終えたばかりだった。

だが、その後のオダギリの足取りは、いわゆるヒーロー出身俳優の王道とは少し違って見える。2001年秋の彼は、実に雑多なテレビの空気に身を置いていたのだ。日本テレビの深夜番組『秘密の爆笑大問題』に毎週のように出演し、10月からはテレビ朝日の深夜ドラマ『嫉妬の香り』にも出る。9月には『笑っていいとも!』のスタジオにも顔を出していた。

そんな時期に届けられたのが、『プラトニック・セックス』だった。同年10月に公開された同作は、翌年の日本アカデミー賞で話題賞(作品部門)を受け、加賀美早紀は新人俳優賞に輝いた。

そしてオダギリ自身もまた、2003年1月公開の黒沢清監督『アカルイミライ』で主演を務める。この作品は、いきなりカンヌ国際映画祭のコンペティション部門に出品された。

「変なプライド」に閉じ込めていた映画への思い

実は、オダギリが抱いていた映画を作りたいという思いは、俳優になるよりもずっと古い。

母が仕事に出かけるあいだ、幼いオダギリはいつも映画館に預けられていた。映画を観ているうちに、いつしか自分も映画を作りたいと思うようになった。映像制作を学ぶため、アメリカの大学へ進んだほどだ。

しかし、長編監督デビュー作『ある船頭の話』が世に出たのは、2019年のこと。2001年の会見から数えれば、18年近くが過ぎていた。自ら脚本を書いた同作は、ベネチア国際映画祭のベニス・デイズ部門に、日本の長編映画として初めて正式出品された。主演の船頭を演じたのは柄本明である。

なぜ、これほどまでに時間がかかったのか。帰国後の日本外国特派員協会での会見で、オダギリはその理由を率直に明かしている。

俳優という立場を利用して映画を撮るのはよくないと思っていた、どれほど真剣に向き合っても「俳優オダギリジョー」というフィルターがつきまとう、と彼は答えた。本当は撮りたかったのに、「変なプライド」でその気持ちを閉じ込めていたとも振り返っている。

かつて鬼監督の細かな指導にいっぱいいっぱいになっていた若者は、いざ自身がメガホンをとる番になると、柄本をはじめとする尊敬する先輩たちに自分が芝居をつけるのは失礼だと考えた。同じ役者として、どうすれば役者の心から湧き出す芝居を引き出せるかがわかる。それが監督としての強みだったと、同じ会見で語っている。

撮って支えて演じる現在地

いま、オダギリの仕事はさらにその領域を広げている。

2026年12月公開予定の池田暁監督作『妖怪、化物をひろう』では、台湾・金門島でオールロケをした日台合作映画に、プロデューサーという裏方の立場から加わった。主演は余貴美子で、オダギリ自身も生真面目な警官・小宮役でスクリーンに姿を見せる。

さらに、2026年10月から放送が始まるドラマ『深夜食堂6』でも、おなじみの交番勤務の警官・小暮役で出演する。そして2027年1月からは、NHKのドラマ『デンジャラス』で文豪・谷崎潤一郎を演じることも控えている。

細かい指導に応えられたかどうかも分からないと打ち明けた25歳の青年は、自らの長編映画を撮り、いまや他人の監督作を後押しするプロデューサーにもなった。

しかし、作り手や支え手に回ったからといって、演じる場所から離れたわけではない。撮る側、支える側、そして撮られる側。その境界線を行き来するオダギリジョーを、まだまだ見ていたい。


※記事は執筆時点の情報です

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