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オーディションで落選した歌い手と、路上で声を鍛えた歌い手。25年前、2人が声を重ねた“国民的グループ”のデビュー曲

  • 2026.10.17
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2002年3月、アルバム発売記念ライブをおこなったEXILE(C)SANKEI

男性ボーカルたちが艶やかなR&Bの節回しを身につけ、ヒットチャートの真ん中へ躍り出ていた世紀の変わり目。テレビのオーディション番組が未来のスター候補たちを映し出し、誰が選ばれ、誰が去るのかを、視聴者は固唾をのんで見守っていた。

その熱狂の渦中で、最終選考まで残りながら選ばれなかった歌い手がいた。勝者となったCHEMISTRYの2人がまばゆいデビューを飾った2001年、彼もまた別の扉を開いて世に出る。ダンサー集団に迎えられ、路上で声を鍛えたもう1人の歌い手と声を並べて。

EXILE『Your eyes only~曖昧なぼくの輪郭~』(作詞:Kenn Kato/作曲:Face 2 fAKE)ーー2001年9月27日発売

彼らが差し出したデビュー曲は、フロアを煽るダンスナンバーではなく、甘く揺れるミディアムテンポのR&Bだった。挫折の悔しさを知る声と、ストリートで鍛え上げた声。素性の違う2つの歌声を最初の名刺に選んだところに、このグループの確かな芯がある。

落選の先で手にした誇らしい紙袋

ATSUSHIは2000年、『ASAYAN』の男子ボーカリストオーディションで最終候補5人に残った。だが、候補が4人に絞られる段階で落選する。後年、合格者たちの活躍を見るうちに、次第につらさを感じるようになったと振り返っている。夢へ近づいた経験は、その扉に届かなかった痛みも残した。

その姿を画面の向こうで見つめていたのがHIROだった。ダンサーを軸にしたグループ・J Soul Brothersは、ボーカルのSASAの脱退を控え、まさにグループの変革期を迎えていた。HIROは2001年、ATSUSHIに声をかける。

レコード会社との打ち合わせの帰り道、ATSUSHIはその会社の袋を提げて電車に揺られた。ここからデビューへの道が開けるかもしれない。手にした紙袋ひとつが、たまらなく誇らしかった。

落選から始まった歌い手が、紙袋の重みで確かめた未来。届かなかった悔しさを知る声だからこそ、どれほど甘いR&Bを歌っても、その歌声にはどこか切実な体温が宿るのだ。

勝者と同じ年に別の扉をくぐる

同じオーディションの勝者となったCHEMISTRYは、2001年3月7日に『PIECES OF A DREAM』でデビューし、瞬く間に大ヒットを記録。洗練されたツインボーカルデュオとして、その年の顔となった。

その年の秋、もう一方の道を歩んできたATSUSHIが世に出る。J Soul BrothersからSASAが抜け、ATSUSHIとSHUN(現・清木場俊介)が加入したグループは、EXILEと名を改めた。新しい名で踏み出した最初の一歩が、この『Your eyes only~曖昧なぼくの輪郭~』だ。

勝った側も、拾い上げられた側も、同じ年にR&Bのツインボーカルで歩き出した。並べてみれば運命めいた対の構図に映るが、優劣の話ではない。ひとつのオーディションを起点に、ふたつの大きな潮流が生まれたのだ。

アメリカの黒人音楽に育まれ、リズムの揺らぎと歌の色気を味わうR&B。そのグルーヴを日本語で歌いこなす男性ボーカルが並び立ったこの年、EXILEの出発点もまた、時代の真ん中にあった。

店頭に並ぶ前に夏の夜へ流れた英語詞

デビューを控えた2001年の夏、この曲はフジテレビ系月9ドラマ『できちゃった結婚』の挿入歌として流れていた。ただし劇中で使われたのは英語詞のバージョンで、日本語版は9月27日発売のCDに収められた。

作曲と編曲を手がけたFace 2 fAKEは、同ドラマの劇伴音楽にも関わった作家ユニットだ。作詞のKenn Katoは、のちに『song for you』『ki・zu・na』『careless breath』と、初期EXILEの重要な楽曲の歌詞を次々と担っていくことになる。

一度は夢が途切れた歌い手の声が、デビューの日より先にゴールデンタイムのドラマの中で響いていた。英語の響きで耳になじんだ旋律が、秋の訪れとともに切実な日本語をまとって店頭に並ぶ。新しいグループの始まりは、そうして静かに助走をつけていた。言葉が入れ替わっても旋律の甘さが崩れないところに、この曲が意味先行ではなく、声とリズムの快楽によって自立していることがよくわかる。

定まらない輪郭を重なる声でなぞる

踊る集団のデビュー曲でありながら、テンポは跳ねすぎず沈みすぎない、心地よいミディアムに置かれた。体を揺らしながら、歌詞の言葉にも自然と耳が向く絶妙な速度だ。

2人の声質は鮮やかな対照をなす。SHUNは路上と独学で鍛えた、生まれつきよく響く骨太な声の持ち主。対するATSUSHIは幼い頃からクラシックピアノに親しみ、ボーカルトレーニングも積んできた。出自の違う声が同居することで、甘いメロディに豊かな奥行きと陰影が生まれる。

歌詞に描かれる曖昧な「輪郭」と、相手の「瞳」への願い。その心もとなさは、新たな一歩を踏み出した2人の姿にも重なって聞こえる。オリコン週間ランキングでは初登場8位、翌週には最高4位を記録。売上は20万枚を超えた。勝者と同じ年に、別の道から歩き出した歌も、多くの人の胸へ届いていた。

別れの日にも再会の日にも戻る歌

この曲は、2人の歩みの大切な場面にも立ち現れる歌だった。

2006年春、SHUNの正式な脱退を経て、6人で最後のライブを披露した『ミュージックステーション』(テレビ朝日)で、2人はこの曲を歌った。ATSUSHIはSHUNをかけがえのない相方として語り、2人は見つめ合い、声を重ねた。

10年後の2016年夏、ATSUSHIの東京ドーム公演に清木場俊介(SHUN)がサプライズで登場する。10年ぶりのライブ共演となり、初期の楽曲を集めたメドレーにもこの曲が入っていた。この公演への出演依頼は、清木場が翌2017年に発表するシングル『友へ』の制作にもつながった。

自分の輪郭が定まらない男が、誰かの瞳に映る自分を探す歌だった。別れのステージで、2人はその歌を互いの目を見つめながら歌った。オーディションで夢に届かなかった歌い手が、やがて画面の中で、隣に立つ相方への思いを言葉にしていた。曖昧だった僕の輪郭は、相方の瞳の中でようやく確かな形を結んだのだ。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。

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