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名門ジュエラーの最新作が集結。宝石が織りなす夢物語に魅せられて

  • 2026.8.7
Hearst Owned

2026年7月6日(月)〜9日(木)に、オートクチュール・ファッションウィークが開催された。異例の40度近い酷暑に見舞われたパリ。街を覆う熱気と呼応するように、ハイジュエリーの世界でも創造性の熱い競演が繰り広げられた。

近年は、年明けから春にかけて、各メゾンが世界各地でトップクライアントを招いたプライベートイベントを開催し、新作ハイジュエリーを先行発表するスタイルが定着しつつある。それでもモードの都パリは、世界中のコレクターやプレスが集う特別な舞台として、メゾンのスピリットとクラフツマンシップを世界へ発信する重要な機会となっている。今回も最高峰の宝石を用いて生み出された傑作が一堂に会し、ゲストを非日常の世界へといざなった。リポート前編では、個性豊かな8ブランドのコレクションに迫る。

ヴァン クリーフ&アーペル

“ボーテ レジェンデール” Van Cleef & Arpels

「ヴァン クリーフ&アーペル」は、古代エジプトへの憧憬(しょうけい)を約180点で表現する“エジプトの魅惑”を発表した。メゾンがエジプトに着目したのは、1922年のツタンカーメン王墓発見を契機に、欧州でエジプトブームが高まった1920年代。当時は古代のモチーフをアールデコの美学と融合した作品を生み出し、後にはエジプト王室のための特別注文も手掛けるなど、深い縁を築いてきた。

“ミューズ トリオンファル”クリップ Van Cleef & Arpels

新作では、10.02カラットのイエローダイヤモンドを王族の胸飾りのように配した“ボーテ レジェンデール”、37石のエメラルドでナイル川とパピルスの風景を描く“リヴァージュ エジプシャン”、約107カラットのエメラルドと天然パールが連なる“プリンセス デュ ニル”が圧巻。さらに、太陽神ラーの魂を象徴する聖鳥をモチーフにした“ベヌ ミステリユー”クリップでは、一枚一枚の羽から細く伸びた脚、鋭い爪先に至るまで精緻に造形されている。

“ベヌ ミステリユー”クリップ Van Cleef & Arpels

メゾンのシグネチャーである“バレリーナ クリップ”も、今回は古代エジプトの世界へ。クレオパトラとファラオを描き、アンク十字や王笏、二重冠などの象徴的なモチーフを盛り込んだ。頭飾りから衣装、靴先まで驚くほど緻密に作り込まれた姿は、今にも物語を語り始めそうな生命感を宿している。

ティファニー

tiffany

ニューヨークを象徴するジュエラー「ティファニー」は、新作“ブルー ブック 2026:ヒドゥン ガーデン”と、唯一無二のマスターピース“レジェンダリー バード:ザ サファイア エディション”をパリで披露した。

“ヒドゥン ガーデン”は、20世紀を代表するジュエリーデザイナー、ジャン・シュランバージェの自然観を継承し、春・夏・秋の3章を通して花々や鳥、編み込み模様など、自然が秘める生命力を描く。サマーコレクションでは“パラダイス バード”を筆頭に、点描画のように配したカラーストーンで生命力あふれる鳥を描写。風に揺れる花びらや編み込み模様を思わせる立体的な造形によって、色彩豊かな幻想の庭園を創り上げた。

“レジェンダリー バード”は、毎年1点のみ制作される特別なクリエーション。今年は34.48カラットのマダガスカル産非加熱サファイアを主役に、ブラックオパール ダブレットやマザー オブ パール、ルビーを重ね合わせ、花々の上を舞うハチドリを思わせる空想的な鳥を生み出した。1965年に誕生した“バード オン ア ロック”のレガシーを受け継ぎながら、「ティファニー」が培ってきた芸術性と卓越したクラフツマンシップを凝縮した一作となった。

ブシュロン

“フラワー”ネックレス boucheron

革新的な創造性で、ハイジュエリーの常識を覆し続ける「ブシュロン」。今回は“ヒューマン ビーイング”と題し、人間という存在をテーマに据える。クリエイティブ ディレクターのクレール・ショワンヌは、「AIが急速に浸透する時代だからこそ、人の手でしか生み出せない創造性を見つめ直したかった」と語る。共通のクラスターをベースにしたネックレスとリングの5つのジュエリーセットは、同じフォルムを持ちながらも、素材と技法の違いによって唯一無二の個性を表現する。

“レイン”ネックレス boucheron

“レイン”は、ロッククリスタルの中に4800石以上のダイヤモンドを一石ずつ封入し、雨粒が肌に浮かぶ幻想的な表情を創出。花が開くさまを描いた“フラワー”は、細密画家が双眼顕微鏡下でピンククオーツ一石ごとに絵付けを施した。“ライト”では、1500カラット超のモルガナイトを厳選し、石の特性に合わせて爪をネジ留めする独自技法を採用。まるで肌の上で光が躍るかのような、透明感あふれる輝きに思わず引き込まれる。

“タトゥー”リング boucheron

一方“タトゥー”には、グリプティック(宝石彫刻)の職人がスモーキークオーツの裏面を手彫りし、200種類以上の専用工具を製作して繊細なレリーフを完成させた。“チェッカーズ”は、クレールが愛する千鳥格子をモチーフに、時計製造に用いられる技法で163石のオニキスを精密加工。CAD設計によって柄が途切れることなく連続するよう仕上げられている。すべての制作には延べ1万4000時間以上を費やし、途方もない時間と手仕事の積み重ねが、人間の創造性の尊さを物語る。

ショーメ

Chaumet

1780年創業の「ショーメ」の新作ハイジュエリーコレクション“A Journey Through Nature”は、自然主義のジュエラーとして受け継いできた伝統を再解釈。ハーブのすがすがしさ、スパイスの甘美さ、そして芳醇(ほうじゅん)なるもりなど、自然がもたらす繊細な感覚までもジュエリーで表現した。

Chaumet

全46点には、ダイヤモンドに加え、エメラルドやサファイア、スピネルなど希少なカラーストーンを用い、生命力あふれる植物の姿を精緻に映し出している。なかでも印象的なのが、バニラの花から着想を得たネックレス。かれんな白い花弁を立体的に再現し、完成までに1350時間以上を費やしたという。花びら一枚一枚が風にそよぐような軽やかさと繊細なグラデーションを宿し、卓越したサヴォアフェールが光る。

Chaumet

植物の葉脈や香り立つアロマを思わせる彫刻的なセッティングや、自然の色彩を映したカラーストーン使いも随所に取り入れ、はかなく移ろう自然の一瞬を、永遠に身にまとうことのできるハイジュエリーへと仕立てた。

ダミアーニ

“Impetuosa” Damiani

「ダミアーニ」は、イタリア・コモ湖で6月に発表した新作“アルテ マエストラ”をパリでも披露。先駆的な創造性と技術の融合をテーマに、美術史に名を刻む8つの傑作から着想を得て、それぞれの芸術表現を光、色彩、フォルム、動きへと置き換えた。100年以上にわたり受け継がれてきた金細工の技術を駆使し、芸術家の直感をジュエリーという立体的な作品へと昇華している。

“Florea” Damiani

コレクションには、サンドロ・ボッティチェッリのプリマヴェーラに咲き誇る花々をエメラルドやサファイアで表現した“フロレア”、ミケランジェロ・メリージ・ダ・カラヴァッジオのメドゥーサの緊張感と官能性を蛇のモチーフとルビーで描く“マリア”、クロード・モネの睡蓮に宿る光と水面の移ろいを色石で再現した“アン・プラン・エール”などが登場。

“Malìa” Damiani

さらに葛飾北斎の名作、神奈川沖浪裏から着想を得たネックレス“インペトゥオーザ”。波が頂点に達し、今まさに砕け落ちる一瞬を彫刻的なフォルムで表現し、ブルーサファイアやパライバトルマリン、ダイヤモンドを緻密なグラデーションでセッティングすることで、水のうねりや躍動感を描き出した。絵画の構図や色彩、筆致に込められたエネルギーを精緻な技術と感性でハイジュエリーへと結実させたコレクションだ。

エルメス

“セレット” ©Julien Martinez Leclerc

2年に一度発表される「エルメス」のオート・ビジュトリー。9作目となる今回は“INTO THE HORSESCAPE”と銘打って、メゾンの原点である馬の世界を、時に大胆に、時に抽象的にジュエリーへと昇華した全90点を展開。

“ラッソ ディスコ” ©Guido Mocafico

「エルメス」ジュエリー部門 クリエイティブ・ディレクター、ピエール・アルディは「馬の姿はほとんど見えないが、その象徴性はすべての作品に息づいている」と語る。手綱をダイヤモンドで描く“ラッソ ディスコ”、18世紀のミニチュア鞍(くら)を再解釈した“スレット”、蹄鉄(ていてつ)のくぎをオート・ビジュトリーへと昇華した“クルー・ド・フォルジュ・ルミエール”など、豊かな想像力で馬具を芸術的なジュエリーへと変貌させた。

“クルー・ド・フォルジュ・ルミエール” ©Guido Mocafico

人馬一体となる乗馬の動きも反映され、身体との調和を考慮した、しなやかな可動構造やクラスプを感じさせない精巧な機構など、卓越したサヴォアフェールも随所に見られる。神話や乗馬文化、「エルメス」の歴史を横断しながら、機能性と造形美、抽象性と物語性を融合した、メゾンならではの世界観でゲストを魅了した。

ポメラート

“マンダラ クロミア” pomellato

ミラノ発のジュエラー「ポメラート」は、1967年の創業以来掲げてきた“自由”の精神を“ポメラート スティーレ・リベロ”で表現した。ミラノらしい自然体のエレガンスを軸に、自己表現と創造の自由をたたえる全65点は、3つのチャプターで構成される。

“アタッシェ” pomellato

鮮やかな色彩をテーマにした”ビジョナリー カラーズ”では、ジェムストーンを自由に配置するブランド独自のセルティ・リーブル技法を軸に、大胆なカラーコンビネーションやアシンメトリーなセッティングで色彩の可能性を追求。“マグネティック ゴールド”では、メゾンの原点となるゴールドを主役に、ブラウンダイヤモンドやチェーンモチーフを取り入れ、彫刻的な存在感を際立たせる。“ヒプノティック シャドウズ”では、透かし細工を現代的に再解釈し、光と影が織りなす軽やかなフォルムを卓越したサヴォアフェールで具現化した。

“アラベスク” pomellato

すべてに共通するのは、異なる時代や様式を自在に掛け合わせる折衷主義の発想。フォルムや色彩、光、着け心地までも緻密に調和させ、伝統技術と革新的なデザインを融合した「ポメラート」ならではの美意識が息づくコレクション。

ミキモト

“レクラ オリジネル” MIKIMOTO

日本を代表するジュエラー「ミキモト」は、フランス語で輝きを意味する“レクラ”を発表した。静寂の中から一瞬にして解き放たれる光を着想源に、ブランドの原点である真珠の内なる輝きを軸とし、宇宙を貫く光線や星々の軌跡、閃光(せんこう)が生み出す一瞬のきらめきを、構築的で繊細なジュエリーへと落とし込んだ。

“レクラ ソレール” MIKIMOTO

ハイライトとなる“レクラ オリジネル”は、白蝶真珠とアコヤ真珠、多彩なカットのダイヤモンド、シャープな白蝶貝を組み合わせ、深い宇宙を走る光を表現。“レクラ ソレール”は、首元からデコルテ全体を覆うつけ襟のような大胆なシルエットが圧巻で、パールの白にトルマリンやエメラルドのグリーン、サファイアのブルーを重ね、光が放つ色彩のグラデーションをドラマチックに描き出す。

ショルダーブローチ“レクラ マジェステュー” MIKIMOTO

銀河を思わせるヘッドジュエリー“レクラ ステレール”や、約104カラットのアクアマリンを主役にしたショルダーブローチ“レクラ マジェステュー”も登場。真珠のやわらかなつやと彫刻的なフォルムが協奏し、壮大な光のスペクタクルを繰り広げた。

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