1. トップ
  2. エピソード
  3. 「さっきの投稿、消してもらえない?」記念日の写真を載せた私が、彼の本音を知るまで

「さっきの投稿、消してもらえない?」記念日の写真を載せた私が、彼の本音を知るまで

  • 2026.9.16
ハウコレ

既読のまま入力中の表示が出ては消える画面を見つめながら、私は彼のフォロワーの中に誰かがいるのだと決めかけていました。届いた長い文面に書かれていたのは、別の話でした。

帰りの電車で、店の人に撮ってもらった1枚を眺めていました。ケーキのプレートを両側から支える、私と彼の手。付き合って1年の記念に、これ以上の写真はないと思って、私はそのまま投稿ボタンを押しました。

玄関で鳴った通知

彼は自分のSNSに、数えるほどしか投稿しない人でした。それでも今日の写真だけは載せたくて、店で私が「1枚撮ってもらっていい?」と聞くと、彼は「いいよ」と答えていました。投稿には彼のアカウントも付けました。見てくれたら、きっと嬉しいはずだと思っていました。

自宅の玄関を開けたところで、メッセージの通知が鳴りました。彼からです。

「さっきの投稿、消してもらえない?」

私は靴を脱ぐ前に「なんで?」と返しました。既読はすぐに付いたのに、返事が来たのは数分後でした。

「ちょっと、載るの苦手で」

苦手なら、店で聞いたときに言ってくれればよかったのに。そう思いながら、私は投稿画面を開き直しました。付いていたいいねの数を、意味もなく数えました。

既読のまま止まった画面

私はコートを着たまま、キッチンの床に座って文面を打ちました。

「私と付き合ってるの、誰かに見られたら困るってこと?」

送ってから、言い過ぎたかもしれないと思いました。それでも消しませんでした。既読が付き、入力中の表示が出ては消え、また出ては消えました。今頃、彼は言い訳を探しているのだろうか。私に見られたくない誰かが、彼のフォロワーの中にいるのだろうか。元の恋人か、職場の誰かか。想像は勝手に広がって、冷蔵庫の音を聞きながら、まだ届かない返事を待ちました。

投稿を消せば済む話なのは分かっていました。でも消してしまえば、1年の記念まで、なかったことになる気がしていました。

スクロールしないと読めない文面

入力中の表示が消えてから、しばらく何も動きませんでした。それから届いたのは、彼の本音が書かれた長文でした。

「隠したいんじゃない。前に付き合ってた人と撮った写真が、別れたあともずっと残ってて、友達にネタにされ続けたことがある。写真が残るのが怖くて、でもそれをちゃんと言えなかった。ごめん」

私は2回読みました。私が想像していた誰かは、どこにもいませんでした。あったのは、私に言うのを怖がっていた彼の過去だけでした。

「先に言ってよ」

そう送ってから、私は投稿を開き、削除を選びました。いいねの数も、彼のアカウント名も、一緒に消えました。それから続けて打ちました。

「消した。でも、ケーキだけの写真ならいい?」

今度の返事は、すぐに来ました。

「ケーキだけなら、僕も載せる」

そして...

今、彼のアカウントの最新の投稿は、あの店のケーキです。私の投稿にも同じケーキが並んでいて、どちらにも手は写っていません。2人の手が写った方の写真は、私の端末の中にだけ残っています。あの日の1枚を、誰にも見せずに持っていることが、今は少しも惜しくありません。

(20代女性・事務職)

本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。

(ハウコレ編集部)

元記事で読む
の記事をもっとみる

注目コンテンツ