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「においが強いですね」満員電車で食べ始めた乗客。だが、注意された人が初めて周囲を見た瞬間

  • 2026.9.14
「においが強いですね」満員電車で食べ始めた乗客。だが、注意された人が初めて周囲を見た瞬間

満員の車内で、袋の口が開いた

朝の車内は、つり革に手を伸ばすのも難しいほど混んでいた。私は扉のわきに立ち、鞄を胸の前で抱えていた。窓は白く曇り、外の景色もほとんど見えなかった。

すぐ前に立っていた人が、鞄から紙の袋を取り出した。袋の口を開き、中に入っていたものを少しずつ食べ始める。

そのたびに、ふわっと強いにおいが広がった。

近くにいた人がわずかに顔をそむけた。別の人は鼻のあたりに手を持っていく。身動きできるほどの余裕はないのに、みんな肩の向きを少しずつ変えていた。

私も正直、気になった。

ただ、わざわざ注意するほどなのか迷ってしまい、何も言えなかった。ほかの人たちも同じなのか、誰も声を上げなかった。

隣の男性が、ためらいながら声をかけた

しばらくすると、その人の隣に立っていた男性が少しだけ顔を向けた。

「すみません…ちょっと、においが強いですね」

かなり控えめな声だった。責めるというより、言おうかどうか迷った末に声をかけたように聞こえた。

けれど、袋を持っていた人は自分に言われたと気づかなかったのか、そのままもう一口食べようとした。

男性は少し間を置いて、今度は相手のほうを見ながら言った。

「あの、すみません。においが強いですね。結構、まわりまでしてます」

そこでようやく、袋を持っていた人が顔を上げた。

「えっ…そんなにします?」

本当に驚いたような声だった。

男性は少し困った顔で、

「ええ。混んでるので、ちょっと…」

と答えた。

その人は一度、周囲を見回した。顔をそむけている人がいることにも気づいたようだった。

「あ、すみません。気づいてませんでした」

そう言って、すぐに袋の口を折りたたんだ。

「もうしまいます。すみません」

「いえ」

男性は短く返して、また前を向いた。

怒鳴る人も、さらに責める人もいなかった。袋を持っていた人も、そのあとは黙って鞄を持っていた。

しばらくして次の駅に着くと、その人は降りる前に男性のほうへ小さく頭を下げた。

「すみませんでした」

「大丈夫です」

扉が開き、その人はそのままホームへ降りていった。

列車が再び動き出すころには、車内に残っていたにおいも少しずつ薄れていた。顔をそむけていた人たちも前を向き、いつもの朝の車内に戻っていった。

私は扉のそばに立ったまま、さっきのやり取りを思い返していた。

言いにくいことでも、相手を責めるのではなく、困っていることだけを伝える。あの男性の声のかけ方が、妙に心に残った朝だった。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた40代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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