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「そのお弁当…においがちょっと気になって」駅弁を開けた私。だが、向かいの男性に言われ、箸を止めた瞬間

  • 2026.8.31
「そのお弁当…においがちょっと気になって」駅弁を開けた私。だが、向かいの男性に言われ、箸を止めた瞬間

蓋を開けたところで、向かいから声が飛んできた

久しぶりに休みを取って、一人で旅に出たときのことです。

在来線のボックス席に座り、窓の外を流れていく景色をぼんやり眺めていました。行き先のほかは、ほとんど何も決めていません。

こうして電車に揺られている時間そのものを楽しみたくて出かけたようなものでした。

乗る前に駅で買った弁当を膝に載せ、掛け紙を外しました。

蓋を開けると、甘辛い煮物のにおいがふわっと広がります。

「よし、食べよう」

小さくつぶやいて箸を割り、おかずに手を伸ばそうとした、そのときでした。

「あの、すみません」

向かいに座っていた年配の男性が、こちらを見ています。

「そのお弁当…においがちょっと気になって。できれば、車内では控えてもらえませんか」

怒鳴られたわけではありません。それでも、まさか声をかけられるとは思っていなかったので、私は思わず箸を止めました。

「あ……すみません」

それしか言葉が出てきませんでした。

男性は少し申し訳なさそうに眉を寄せました。

「いや、私がこういうにおいに弱くてね。せっかくのお弁当なのに、悪いんだけど」

そう言われると、こちらも強く言い返す気にはなれません。

においが苦手な人がいるのは分かります。ただ、駅で買った弁当を電車の中で食べることまで迷惑だと思われるとは考えていませんでした。

私は弁当の蓋に手をかけました。

「じゃあ、閉めたほうがいいですかね……」

自分でも少し残念そうな声になっていたと思います。

隣から聞こえた、思いがけない一言

すると、同じボックス席にいた親子の子どもが、私の弁当をちらっと見ました。

「でも、いいにおいするよ」

思いがけない一言に、私は顔を上げました。

親御さんがすぐに、子どもの肩へ手を置きます。

「こら、人のお弁当をじろじろ見ないの」

「だって、おいしそうなんだもん」

子どもは少し口をとがらせました。

私は思わず笑ってしまいました。

「ありがとう。おなかすくよね」

男性も何も言わず、少しだけ窓のほうへ顔を向けました。

気まずい空気が完全になくなったわけではありません。

私も男性の言ったことが間違っているとは思えませんでしたし、だからといって、せっかく買った弁当をそのまましまうのも寂しく感じました。

少し迷ってから、私は男性に聞いてみました。

「なるべく蓋をかぶせながら食べます。それでも気になりますか?」

男性は一瞬こちらを見てから、首を横に振りました。

「そこまでしてもらわなくても……。こっちこそ、ごめんなさいね」

「いえ、大丈夫です」

それ以上の話はしませんでした。

私は蓋を少しずらしたまま、なるべくにおいが広がらないように食べました。

隣の子どもは何度かこちらを見ようとして、そのたびに親御さんから「見ないの」と小声で注意されていました。

しばらくして男性は駅で降りていきました。

降りる直前、こちらを見て軽く頭を下げます。

私も「どうも」と小さく頭を下げました。

どちらが正しかったのかは、今でもよく分かりません。

同じ車内でも、楽しみにしていることも、苦手なものも人によって違います。

ただ、「やめてください」と言われた瞬間は責められたように感じたのに、少し言葉を交わしてみると、男性にも事情があったのだと分かりました。

そして、「いいにおい」と素直に言った子どもの一言に、少しだけ救われたのも事実です。

私は残っていた弁当を食べながら、窓の外をもう一度眺めました。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた30代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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