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【ネタバレ有り】性的少数者の出会いの場だったことも記録。泣いたよね。映画『沼影市民プール』

  • 2026.9.12

ちょっとした時間があるとき、未見の映画やドラマに手を出したいんだけど、分かんないから好きなのを繰り返し観ちゃう……という方。映画ライターよしひろまさみちが実際に観て偏愛する作品を、ネタバレ上等な私見&本音でおすすめしますよ〜。

よしひろさん、「きのう何観た?」 『沼影市民プール』

story 海のない市にプールを、の理念で1971年から運営されていたさいたま市の沼影市民プール。2021年にプールの解体と小中一貫校の建設が決まり、それに反対する署名やパブリックコメントが集まったが、24年3月に閉鎖。その最後の49日間を記録したドキュメンタリー。
監督・撮影・編集・録音:太田信吾/配給:NAKACHIKA/公開:現在、シアター・イメージフォーラムほか全国順次ロードショー中
© hydroblast

公営施設の存在意義を問う大傑作ドキュメンタリー

試写でも観たんですが、あまりにもすごい解釈と解像度のよさだったので、劇場でおかわりしました『沼影市民プール』。どこのエリアにもありましたでしょ、その地域に密着した公営の娯楽施設。だいたいそういう施設は高度成長期〜安定期に作られたものだけに、昨今どんどんと老朽化。それを理由に閉業して他の箱物ができたりしてるじゃないですか。ぶっちゃけあたしはそういう流れが超嫌い。だって、地元民から愛されていて、利用者もそれなりに多いのに、別のものになってしまうのは理解できないのよ。同じ大工事をするなら改修するとか、古いものなりにレトロを楽しんでいただくような工夫ができるはずじゃないですかー。そんなこんなのモヤモヤを、この映画の中にも見出してしまったのね。

めちゃ立派だったんですよ、沼影市民プール! 見切れてますが、右には超ロングなウォータースライダーも!

この作品は、最後の49日間に密着しつつ、終業が決まったなりゆきやその後の計画にも着目して、すっごくフェアな目線で「市民プールってそもそもどういうところだっけ」ということをつまびらかにしているの。なんせすごいのは、取材の密着度ね。そこに足繁く通っている一般のお客さんはもちろん、長年務めているスタッフなどなど、沼影市民プールを愛してやまない人たちからの聞き取りはもちろん、ある一定の常連さんにも目を向けたこと。
 

それがゲイの皆さん。あたしもおじさんおばさんゲイの端くれだから、このプールが「沼プー」の愛称で、夏場の集合場所になっていたことは存じ上げておりました(行ったことはないんですけどね)。世間的には「ハッテンバ」扱いされてましたけど、そうでもない。あ、その場で何か行動するってのはアウトですよ。もちろん。そこはあたしもアウトだと理解しております。でも、今のようにスマホ片手で誰とでもコネクトできる世の中ではなかった時代のゲイって、めちゃ孤独だったんですよ。それこそ「自分以外にゲイはいない」って思っちゃうくらい(実際あたしもそうでした)。だから、ハッテンバに求めていたことって、シンプルに「出会い」だったの。公の場か、バーなどゲイオンリーの場かの違いは大きいんだけど、誰か同じ気持ちをシェアできる人がいる場所を探すのは当たり前のことだと思うわけです(倫理的にダメな人がお縄になるシーンが一部ありますが、あれはアウトだし、お見事なインサートでした)。
 

長年お勤め&子ども達の安全を守るために働いたスタッフの最後の挨拶は大泣き確実です。

で、太田監督のすごいところは、沼プーが性的少数者の出会いの場だったことを記録として残す取り組みも入れたこと。当然のことながらリアルに通っていた常連さんに協力を求めるのはプライバシー保護上無理だし、そもそも市民プールの役割とはちょっと違うし。そこでうまいことやってくれたんですよ。そのパートだけ創作なの。これがマジすごい。「こういう人がいただろうし、彼らのような出会いがなかったとは言い切れない」っていう絶妙なラインの創作劇が入ってくるのよ。エモい。エモ過ぎた。市民プールの存在意義である「人が健やかに幸せになり、社会は共同体であることを認識する場所」ってことまで、この創作パートでも描いちゃってるんだもの。泣いたよね。
 
そしてさらに素晴らしいのは、ジャッジは絶対にしない姿勢。プールをなくして学校を作るっていう方針に反対も賛成も示さないけど、取材対象との対話はじっくりする。このスタンスが曲がらないから、すでに壊されてしまった沼影市民プールにまつわる「代えがたい思い出」として機能する作品になってるんですよ。いや、マジすごい。

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