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「直してでも、この一枚が着たいんです」毎回服のお直しを頼む常連客。お金をかけてでも選んだ服を購入したい理由

  • 2026.9.2

選んだあとには、いつもお直しを頼まれた

婦人服の売り場で働いていたころ、よく来店される女性のお客さまがいました。

決まった曜日の午後にいらっしゃることが多く、入口で私たちに軽く会釈をすると、ゆっくり店内を見て回ります。

その方がよく足を止めるのは、小さいサイズの商品が並んでいる棚でした。

気に入った服が見つかると、鏡の前でしばらく合わせてからレジへ持ってこられます。そして購入するときには、ほとんど毎回、お直しを希望されました。

「これ、丈を少し短くできますか?」

「はい。ほかにも気になるところがあれば、一緒に確認しますね」

丈だけの日もあれば、身幅や袖について相談されることもあります。担当者が採寸し、できる範囲を説明すると、その方はいつも熱心に聞いていました。

お直しが何か所か重なると、当然料金も上がります。

それでも「お願いします」と迷わず答えられるので、私は少し不思議に感じていました。

もっと直しの少ない服を選ぶ方法もあるのに、なぜ毎回ここまで手をかけるのだろう。

そんな疑問が、ずっと心に残っていたのです。

「直してでも、この一枚が着たいんです」

ある日、その方がワンピースを持ってレジにいらっしゃいました。

いつものように採寸をして見積もりを確認すると、お直し代は3000円ほどになりました。

私は念のため、もう一度金額をお伝えしました。

「今回はお直しが何か所かありますので、3000円ほどかかります。それでもよろしいですか?」

すると、その方はワンピースを見ながら笑いました。

「大丈夫です。直してでも、この一枚が着たいんです」

あまりにも迷いのない返事だったので、私は思わず「そんなに気に入ってくださったんですね」と返しました。

「そうなの。せっかく買うなら、自分が好きだと思ったものを着たいでしょう?」

その言葉を聞いて、私はようやく納得しました。

私がお直し代ばかり気にしていた一方で、その方にとって大切なのは、少しでも安く服を買うことではありませんでした。

気に入った一着を選び、自分が着やすいように整えて、長く楽しむ。それがその方なりの買い物だったのです。

仕上がったワンピースを取りに来られた日、その方は鏡の前で袖を通し、「ちょうどいいわ」とうれしそうに笑っていました。

服の選び方は、人によって本当に違います。売り場を離れた今でも、あの方の「直してでも、この一枚が着たい」という言葉を、ときどき思い出します。


※本記事は、GLAMが独自に実施したアンケートで寄せられた60代以上女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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